図屏風
金箔に描かれている図屏風。その魅力や凄さに気づいてもらえると嬉しいです。
こんにちは。この博物館では、日本を代表する図屏風の凄さを紹介したいと思います。
時代順で見る図屏風
- 松図屏風
伝土佐光信筆,Attributed to Tosa Mitsunobu (1469–1523),東京国立博物館,Tokyo National Museum
<p>画面全体に金箔を貼りつめた総金地*そうきんじ*に、地面や背景などを一切描かず、大小2組の松と岩のみを描く。画中には室町時代の絵所預*えどころあずかり*土佐光信*とさみつのぶ*筆との極*きわめ*(鑑定)がある。光信筆とは言い難いものの、その活躍期である16世紀やまと絵絵師の手になるものと思われる。<br /></p><br /><p> 金箔を貼った地に、2本ずつペアになった大小2組の松の樹と岩が描かれた屏風です。輪郭線を描かずに茶色く塗られた松の幹はS字状にくねりながら伸びています。丸みのある形をした緑の葉叢(はむら)は、松葉を線で描かず、周りの縁の部分をぼかしており、やわらかい印象を与えます。2本の大きい松を画面右下に、小さい松を左上に描き分け、遠近の関係を示しているようです。雲や地面なども描かれておらず、フラットな金地の背景です。<br /> 15世紀の文献には、金の地に花木を描いた屏風が多く登場しますが、この作品はそのようなタイプの屏風の数少ない実例としても貴重なものです。<br /> 画面の左下には、室町時代後期の画家、土佐光信(とさみつのぶ)による作品であるとの鑑定が、江戸時代中期の画家、土佐光起(とさみつおき)によって記されています。光信筆と断定はできませんが、その活躍期である16世紀の絵師によるものと思われます。</p>
館長からの一言
金箔の上に石と松が描かれているシンプルな絵ですが、侘び寂びを感じられる室町時代らしい作品です。
- 日月山水図屏風
東京国立博物館,Tokyo National Museum
<p> 6枚のパネルで構成された大きな屏風が、左右で1セットになっています。<br /> 向かって右は桜が咲きほこる春の景色、左は刈田の広がる秋から冬の景色です。しかし、よく見ると左右の印象がだいぶ違います。右の屏風は、桜や柳の木が大きくうねり、勢いよく流れ落ちる水流を描いて、動的なイメージなのに対して、左の屏風は様式化された水の流れを中心に、穏やかな田園風景と雪化粧した丘を遠景で捉えた、たいへん静かなイメージです。<br /> 右の屏風では、雲が金銀の箔(はく)を破ったり、大小さまざまな大きさにきったりしたものを貼り付けて表わされていますが、左の屏風では、大部分が箔押しによるものでたいへんおとなしい印象です。さらに、右では、桜の花弁や橋の欄干に胡粉(ごふん)という白い絵の具を盛り上げた立体的な表現が使われていますが、左にはほとんどありません。こうした、画面の構成や、技法の違い、またふたつの画面がつながらないことから、もとは別々の屏風だったのが、組み合わされたものと思われます。<br /> 面白いのは、太陽と月の表現です。右には太陽、左には月が表わされていますが、それぞれ金と銀でメッキされた金属板が貼り付けられているのです。これは、この時代に流行した技法です。<br /> 室町時代の屏風というと禅宗寺院の水墨画をイメージする方が多いと思いますが、なかにはこうした装飾的で華やかな作品もあるのです。それほど多くの作品が残されているわけではないので、こうしてご覧いただくのはとても貴重な機会といえるでしょう。</p><br /><p>大きく屈曲する桜や柳、うねりながら流れ落ちる水流を描く動的な右隻。穏やかな水面や田園を捉える静的な左隻。画面全体で四季の景色を描きますが、もとは別の屏風が組み合わされたものです。鍍金、鍍銀された金属板の太陽と月の光が印象的です。<br /></p>
館長からの一言
室町時代の屏風図の中でも、華やか。でも、どこか室町時代の侘び寂びを感じられる絵です。
- 唐獅子図屏風
狩野永徳 、狩野常信,〈right scereen〉 Kano Eitoku,〈left scereen〉 Kano Tsunenobu,皇居三の丸尚蔵館,The Museum of the Imperial Collections, Sannomaru Shozokan
<p>右隻は,狩野探幽による極書によって,桃山画壇の巨匠・狩野永徳(1543~90)の数少ない確証的な作品として名高い。岩間を闊歩する雌雄の堂々たる獅子の姿は,実に力強い筆法で描かれ,単純な図様ながら,その迫力,勇壮さには,本屏風が永徳自身の作品であることを疑う必要はない。左隻は,後に狩野常信(1636~1713)が右隻の図様にあわせて制作したもので,今日は一双として伝わる。明治21年に毛利元徳より献上。(『新版 雅・美・巧(上)』H15)</p>
館長からの一言
狩野永徳の代表作です。金箔が迫力のある2頭の獅子をさらに際立たせているゴージャスな作品です。
- 十二ヶ月花鳥図屏風
狩野永敬筆,By Kanō Eikei (1662–1702),東京国立博物館,Tokyo National Museum
<p>藤原定家「詠(えい)花鳥和歌各十二首」(花12首・鳥12首)に詠(よ)まれた12か月の花と鳥を月順に右から左へ各扇に配し、連続風景として絵画化。同和歌は貴族や大名の必須教養でした。筆者永敬は、山楽を祖とする京都の狩野派の第4代で有力公家の庇護(ひご)を得ていました。<br /></p><br /><p> 6枚のパネルをひとつながりにした屏風が、2枚でセットになっています。計12枚のパネルには、さまざまな花や鳥が描かれていますね。よく見ると、桜や藤、菊など、異なる季節に咲く花がつぎつぎに登場しています。<br /> この屏風は江戸時代(17世紀)に描かれたものですが、内容は鎌倉時代前期(12~13世紀)の歌人、藤原定家(ふじわらのていか)が正月から12月までのそれぞれの月を代表する花と鳥を一首ずつ詠んだ計24首の和歌、「詠花鳥和歌各十二首」をもとにしています。定家の詠んだこれらの和歌は、当時の貴族や大名にとっては必須の教養で、しばしば絵画や工芸作品のテーマになりました。屏風の絵が、和歌の内容を視覚化しているのです。<br /> 1月は柳と鶯、2月は桜と雉、というように、各月の花と鳥を、順番に12枚のパネルに右から左へと配置し、連続する風景として絵にしています。12か月のモチーフを取り上げる趣向の屏風は他にもありますが、12枚がそれぞれ独立した絵に分かれているものが多い中、ひとつながりの景色として描いている点も特徴的です。めぐる一年の花鳥を月と太陽と共に画面に盛り込み、まるでこの作品の中に世界が凝縮されているような完全性を、破たんなくひとつの景色として仕上げる作者、狩野永敬(かのうえいけい)の構成力が光ります。</p>
館長からの一言
季節ごとに違う花が描かれています。それを一つの絵に凝縮したのにも関わらず、全くの違和感を感じずに見させることができる高度な技です。
- 源氏物語図屏風(絵合・胡蝶)
狩野〈晴川院〉養信筆,By Kanō Osanobu (1796–1846),東京国立博物館,Tokyo National Museum
<p>『源氏物語』の名場面から。右隻は女御たちが冷泉帝@れいぜいのみかど@の御前で絵を批評しあう「絵合」、左隻は秋好中宮@あきこのむちゅうぐう@が春の仏事を行なう「胡蝶」。鮮やかな色彩、桜花の輝く白が華やかな画面を生んでいる。作者が法眼位にあった文政2年から天保5年(1819~1834)の作。<br />(山下善也氏執筆)<br /></p><br /><p>ふたつの屏風がセットになっています。それぞれ、『源氏物語』の一場面を金地に緑や青、赤などの濃い色彩で鮮やかに描いています。<br />向かって右側の屏風は、「絵合(えあわせ)」の帖の場面です。左右にわかれ、一組ずつ絵を提出し、勝負を判定する「絵合」という遊びの様子が描かれています。広い空間に向かい合わせに置かれている二つの箱の中に、絵が入っているのでしょう。左側の屏風には、不思議な扮装をした踊り手がいます。これは「胡蝶(こちょう)」の帖の一場面。春の仏事に、蝶の羽をつけた4人の子どもが山吹の枝を手に舞っています。物語の上では2つの場面に関連はありませんが、この作品では白く輝く桜の花が左右の屏風をつないでいます。明るく華やかな画面が春らしい作品です。<br />作者の狩野晴川院(かのう せいせんいん)は、江戸城の障壁画の総指揮監督を務めるなど、幕末期の狩野派の重要人物でした。</p>
館長からの一言
ギャラリーに飾ってある中で、最も新しい作品です。そのため、鮮やかな色彩を用いた絵が特徴です。
.jpg)



