「デジタルアーカイブ活動」のためのガイドライン
ここは、ジャパンサーチの理解促進のため、「デジタルアーカイブ活動」のためのガイドライン(デジタルアーカイブジャパン推進委員会実務者検討委員会,令和5年9月)(外部リンク)をウェブで紹介するためのページです。
目次
【PDF】 「デジタルアーカイブ活動」のためのガイドライン(2.8MB)
※次の資料もあわせてご参照ください
- 概要版 PDF(2MB)
- デジタルアーカイブアセスメントツール ver3.0 EXCEL(31KB)(外部リンク)
- 用語集 ウェブページ PDF(216MB)
- FAQ(よくある質問) ウェブページ PDF(153KB)
- 標準・マニュアル・手引き等 ウェブページ PDF(450KB)
- 事例集 ウェブページ PDF(701KB)
はじめに
本ガイドラインは、デジタルアーカイブに関心をもつ全ての機関や個人が「デジタルアーカイブ活動」への一歩を踏み出し、さらにその活動を前に進めていただく一助となるよう作成したものです。「デジタルアーカイブ活動」とは、デジタルアーカイブに関わるあらゆる活動を指しますが、主にアーカイブ機関(用語集参照)等が行うデジタルアーカイブの構築や連携といった取組にとどまらず、個人が創作活動などでデジタルアーカイブを活用したり、ただ楽しむために閲覧したりする活動も含みます。様々な機関や個人が、「デジタルアーカイブ活動」に日常的に関わることで、教育、学術・研究、観光、地域活性化、防災、ヘルスケア、ビジネスなど様々な分野におけるデジタルアーカイブの活用が進み、それにより社会における知識の生産と活用の循環が期待されます。
本ガイドラインは、第Ⅰ章(「デジタルアーカイブ活動」をデザインする)及び第Ⅱ章(「デジタルアーカイブ活動」を自己診断する)から構成されます。
第Ⅰ章は、デジタルアーカイブとは何か、その意義や役割などを紹介し、デジタルアーカイブに関心をもつ人が自らの活動のイメージをつかんでもらうために必要な情報をまとめています。
第Ⅱ章は、デジタルアーカイブ活動に取り組む機関や個人が、「デジタルアーカイブアセスメントツールver.3.0」で自らの活動の達成度を確認(自己診断)するに当たって、参照するためのものです。ツールが提示する具体的な取組内容や留意点は何かなど、解説しています。第Ⅱ章を参照しつつ、ツールで自己診断を行うことにより、自らの活動における目標達成のための課題が明確となり、デジタルアーカイブ活動を次のステップへと進めていくことが可能となります。
本ガイドラインは、以下の参考資料をもとに、令和2年9月から令和5年4月までに開催したデジタルアーカイブジャパン推進委員会実務者検討委員会での議論を踏まえ、取りまとめたものです。本ガイドラインを参照すれば、デジタルアーカイブ活動の全般が分かるよう、網羅的な内容となっていますが、自らの関心のあるところから読み進めていただいても構いません。どこから読めばよいか分からない場合は、まずは、Ⅰ章「3 「デジタルアーカイブ活動」をデザインする」から読まれることをお勧めします。
参考資料
- ジャパンサーチ戦略方針2021-2025「デジタルアーカイブを日常にする」をキャッチフレーズとした、2025年までのジャパンサーチの戦略方針
- ジャパンサーチ・アクションプラン2021-2025戦略方針に掲げた目標の実現に向けて、2025年までに取り組むべき具体的な行動(アクション)を示す計画
- 「3か年総括報告書 我が国が目指すデジタルアーカイブ社会の実現に向けて」(令和2年8月)デジタルアーカイブジャパン推進委員会・実務者検討委員会が発足後3か年の活動を振り返ってまとめた報告書
- デジタルアーカイブの構築・共有・活用ガイドライン(平成29年4月)本ガイドラインの旧版にあたる。実務者検討委員会の前身の会議体(実務者協議会)が作成した資料
- デジタルアーカイブにおける望ましい二次利用条件表示の在り方について(2019年版)実務者検討委員会が作成した資料で、アーカイブ機関がコンテンツの権利表記を検討するための手引。本ガイドラインに統合。
- デジタルアーカイブのための長期保存ガイドライン(2020年版)実務者検討委員会が作成した資料で、アーカイブ機関がデジタル資料の長期保存に取り組むための手引。本ガイドラインに統合。
Ⅰ 「デジタルアーカイブ活動」をデザインする
【概要】
本章では、デジタルアーカイブに関わるあらゆる活動を「デジタルアーカイブ活動」と定義し、自ら又は自らが所属する組織がどのようなデジタルアーカイブ活動を行っているのか、今後どのような活動の充実を図るべきか、また、これから新たに活動を始める場合に何から行えばよいのかなど、自らのデジタルアーカイブ活動をデザインするために必要な情報を紹介します。
第1節では、デジタルアーカイブが果たす役割は何か、ジャパンサーチを通じて実現を目指す「デジタルアーカイブ社会」とは何かを解説し、デジタルアーカイブ活動を行う機関や個人が、自らの活動を社会の中で位置付けるために必要な情報を提供します。第2節では、次のステップとして、デジタルアーカイブに関わる具体的な活動内容について事例を交えて紹介します。第3節では、自らのデジタルアーカイブ活動をどのように組み立て、進めていくのか、又は既にある活動をどのように発展させていくのか、デジタルアーカイブ活動を進めるためのデザインツールを示します。
【ねらい】
デジタルアーカイブに関わる活動の意義と、具体的な活動内容について理解すること。その上で、自らが目指すデジタルアーカイブ活動について考え、計画すること。
1 デジタルアーカイブの意義を考える
【ねらい】
デジタルアーカイブが果たす役割を理解する。
ここでいうデジタルアーカイブとは、様々なデジタル情報資源を収集・保存・提供する仕組みの総体をいいます。デジタルアーカイブで扱うデジタル情報資源は、デジタルコンテンツだけでなく、「コンテンツ」(アナログ媒体の資料・作品も含む)の内容や所在に関する情報を記述した「メタデータ」、コンテンツの縮小版や部分表示である「サムネイル/プレビュー」も対象としています(図1参照)。
ジャパンサーチの連携コンテンツを例に説明すると、図2の①の部分がメタデータに当たります。メタデータの項目はアーカイブ機関によって異なりますが、コンテンツの作品名、作者、制作年、形質、サイズ、解説等が含まれます。サムネイルは、検索結果等で表示されるコンテンツの縮小画像です(図3参照)。
コンテンツは、それぞれのアーカイブ機関が所蔵するデジタルコンテンツ又はアナログ媒体の資料や作品のことをいいます。コンテンツの形態は、アーカイブ機関によって異なり、図4のようにデジタルコンテンツをウェブサイトでダウンロード可能な状態で公開している例もあれば、デジタルコンテンツを持っているが、館内で限定公開するなどウェブサイトで一般公開していない例やデジタル化しておらずアナログ媒体で所蔵している例もあります。
次に、デジタルアーカイブが、社会においてどういった役割を果たすものなのか見ていきましょう。
(1) デジタルアーカイブの役割とは
デジタルアーカイブは、社会が持つ知や、文化的・歴史的な資源等の記録を未来へ伝える役割を果たすとともに、教育、研究、観光、地域活性化、防災、ヘルスケア、ビジネスなど、様々な分野における有形無形の資源を利活用するための基盤でもあります。特に様々な情報資源がデジタルアーカイブに蓄積され、情報へのアクセスが容易になることで、例えば、これまで見過ごされてきた災害とそれへの対処の歴史的事実を知り、それが防災に役立つこともあるかもしれません。また、これまで各所に散在していた情報資源の写しがデジタル空間上にアーカイブされることで、様々な情報資源の関連付けが容易になり、これまで意識されていなかった異分野の事物の関連性が明らかになること等も期待されます。
「ジャパンサーチ戦略方針2021-2025」(2021年9月)及び「ジャパンサーチ・アクションプラン2021-2025」(2022年4月)では、デジタルアーカイブの大切な役割を踏まえ、「デジタルアーカイブが社会を変える3つの価値」について、次のように紹介しています。
① 記録・記憶の継承と再構築
・ 過去の記録・記憶を広く収集・整理するとともに、現在進行中の様々な活動を併せて記録し、未来へ継承する
・ リアル空間の事物、アナログ媒体の資料を含む、あらゆる記録・記憶の写しをデジタル空間上に作ることで、それらの継承と再構築を促す
・ 入門レベルから専門的情報まで、分野横断的に情報を関連付けて整理する
これまでのデジタルアーカイブは、様々な媒体に記録された過去の作品や資料を広く収集・整理して、それらをデジタルメディアに記録し直すことにより、全体をデジタル情報として利用可能にしてきました。将来、あらゆる記録・記憶の写しがデジタル空間上に作られることにより、それらの継承や再構築、分析が容易になると期待できます。
継承だけでなく再構築を進めることにより、これまで資料種別や所蔵機関が異なるために関係性が不明確だった資料同士も、容易に関連付けられて、新しい知識の発見につながります。また、入門レベルから専門レベルの情報まで、分野横断的に情報を関連付けて整理することも可能になります。
さらに、現在進行中の出来事や情報体験をより多角的に記録して未来へ継承することも重要です。今後、記録すべき情報体験は、それ自体がデジタル情報と実空間を組み合わせた複合現実的な形態に変化したり、複合メディアを使った表現活動になると考えられます。これらを記録する新しい方法論の開発が求められます。
② コミュニティを支える共通知識基盤
・ ひとが学び、考え、議論する時に、コミュニティに共通する知識体系として日常的に利用できる基盤を提供する
・ コンテンツのキュレーション(コンテンツを特定のテーマに沿って収集、選別、整理すること)によって誰もが自分の発見や思想を表現できるなど、時代に適した新しいコミュニケーションツールを生み出す
・ コミュニティが持つ豊かな知識体系を活用して、学びながら遊び、遊びながら学ぶことを可能とし、コミュニティを支えその価値観を次世代に伝える
SNSなどのフィルターバブルで、近しい友人との間でさえ共通の事実認識を仮定できない現在、長い時間をかけて洗練されてきた共通の知識体系はコミュニティの価値であり、あるコミュニティ(文化)の中で、ひとが学び、考え、議論する時には、前提となる知識体系の存在が欠かせません。デジタルアーカイブはそのような知識体系を支える知識基盤であると考えられます。
知識体系に基づく学びや議論によって得られた発見や思想は、前提となる知識体系から切り離されて存在することはできません。新たな発見や思想の多くは、知識体系に新しくリンクを付け加えたり、知識基盤のコンテンツ群を分析して新たにタグを追加したり、これまでになかった切り口や分類を導入する行為だと言ってもよいでしょう。デジタルアーカイブにおいては、編集操作やキュレーションを通じて、自分の発見や思想を表現することが可能です。デジタルアーカイブに誰もが使える柔軟なキュレーションツールを提供することは、発見や思想を伝える新しいコミュニケーションツールを提供することに相当するといえるでしょう。
デジタルアーカイブを整備することで、コミュニティが継承する豊かな知識体系を支える知識基盤と、誰もが使える新しいコミュニケーションツールを活用して、学びながら遊び、遊びながら学ぶことが可能になります。その活動を通じて、コミュニティは生き生きと受け継がれ、その価値観は次世代に受け継がれます。
③ 新たな社会ネットワークの形成
・ 国内外のデジタルアーカイブが相互連携することにより、さらに広範な分野・地域をカバーする知識基盤を構築する
・ 異なる分野・地域のひと同士の結び付きや、コミュニティ間のコンテンツ交流が生まれ、新しいアイデアや価値が創造される
国内外のデジタルアーカイブが相互連携することにより、さらに広範な分野・地域をカバーする知識基盤の構築が実現します。異なる分野・地域のひと同士の結び付きや、コミュニティ間のコンテンツ交流が生まれ、新しいアイデアや価値が創造されます。
特に、異なる専門分野で整備されたデジタルアーカイブのデータ同士が思いがけないつながりをもつことにより、離れた分野の専門家コミュニティの間に対話のきっかけが得られ、新たな総合知の創出につながる議論が生まれるかもしれません。デジタルアーカイブ同士の関連付けにより、それを支える専門家コミュニティの間に新たな社会ネットワークが形成されると期待できます。
では、デジタルアーカイブがその役割を十分に果たしている社会は、どのような姿になるでしょうか。
(2) デジタルアーカイブ社会とは
デジタルアーカイブが日常的に活用され、様々な創作活動を支える社会・学術・文化の基盤となる社会とは、「デジタルアーカイブによって、日々生み出される様々なデータが共有され、誰でも簡単にアクセスができ、さらに日常的に利活用できるように二次利用条件が整備されていることで、誰もが新しいコンテンツを生み出せる社会」のことです。
社会が保持しているデジタル情報資源を様々なプラットフォーム(用語集参照)につなげることで、教育、学術・研究、観光、地域活性化、防災、ヘルスケア、ビジネス等での利用が期待されます(図5参照)。実際に、それぞれの分野でデジタルアーカイブを利用した取組が始まっており、特に教育や学術・研究では、ジャパンサーチやデジタルアーカイブを使った授業等で地域のコンテンツを活かした取組が進んでいます。
また、最近ではAI領域、とりわけ生成AIにおいて、日本語コンテンツ等のデジタルアーカイブ化が重要との指摘があり、良質で管理された学習用データセットとしてのデジタルアーカイブの価値は、今後ますます高まることが想定されます[1]。他方、AI技術の活用においては、メタデータ作成の自動化など、デジタルアーカイブに係る業務を補助するツールとしての開発も期待されます。デジタルアーカイブが活用される領域は今後も拡がりを見せるでしょう。
[1] 「知的財産推進計画2023」(2023年6月9日 知的財産戦略本部)p.80
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizaikeikaku_kouteihyo2023.pdf
(3) ジャパンサーチが目指すこと
ジャパンサーチは、我が国の幅広い分野のデジタルアーカイブと連携して、多様なコンテンツをまとめて検索・閲覧・活用できるプラットフォームです。我が国におけるデジタルアーカイブの取組を推進するため、2017年頃から国としてその構築に取り組んできたもので、2020年8月に正式版が公開されました。2023年8月時点で約3000万件近いメタデータ(コンテンツに関する内容・所在等の情報)が利用できます。
ジャパンサーチでは、図6に示すように、分野・地域ごとの「つなぎ役」(用語集参照)を介して、「アーカイブ機関」とジャパンサーチとの間でメタデータの共有を進め、「活用者」(用語集参照)がジャパンサーチ等からメタデータを介してコンテンツを発見し、様々な用途に利活用するというサイクルの構築を目指しています。
図6における「アーカイブ機関」とは、有形・無形の様々なコンテンツを保有する機関全般を指します。社会・文化・学術情報資源である資料・作品等のコンテンツを収集し、その資源を整理(組織化)し、保存し、提供する機能を持つ機関・団体等であり、例えば、博物館・美術館、図書館、文書館といった文化施設のほか、大学・研究機関、企業、市民団体、官公庁・地方公共団体等も含みます。保有するコンテンツの提供範囲が限定的であり、一般への公開を想定していない機関等も含まれます。
アーカイブ機関の役割としては、メタデータの整備、デジタルコンテンツの拡充、サムネイルの作成、整備したメタデータやサムネイルのオープン化(用語集参照)、デジタルコンテンツの利用条件の設定といった、デジタルアーカイブに関する取組を行うことが想定されます。また、自らのデジタルアーカイブを同じ分野や地域のコミュニティで共有することも考えられます。さらに、デジタルアーカイブの構築・共有を推進するため、分野・地域コミュニティの主体となる「つなぎ役」(後述)の機能・役割を担うことを期待される場合もあります。
令和4年に改正された博物館法[2]では、博物館の事業として博物館資料のデジタルアーカイブ化が追加されたことに加え、他の博物館との連携及び地域の多様な主体との連携・協力による文化観光など地域の活力の向上への寄与が努力義務とされました。こうした法改正の背景には、デジタルアーカイブの取組が単館だけではなく、相互に連携を図りながら協力することで、より一層効果的なデジタルアーカイブの活用につながるといったことがあると考えられます。デジタルアーカイブ化というと、一次資料のデジタル化と捉えられる場合が多いですが、博物館において展覧会等の図録・カタログ・目録・研究者報告等も学芸員が作り出す重要な知的成果物であり、これらの成果物もデジタル化し、他館と共有して利用することが重要です。
[2] 「博物館法の一部を改正する法律(令和4年法律第24号)について」文化庁
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bijutsukan_hakubutsukan/shinko/kankei_horei/93697301.html
図6の「つなぎ役」とは、分野・地域コミュニティにおけるメタデータを集約し、ジャパンサーチと各アーカイブ機関をつなぐ(メタデータ連携)機関を指します。ジャパンサーチとの連携という面では、「ジャパンサーチに提供するメタデータの取りまとめ又はメタデータフォーマットの標準化」と「ジャパンサーチに提供されるデータの取扱いに関する文書取交しの窓口」の少なくとも2点を行うことでつなぎ役の役割を果たすことは可能です。一方で、「デジタルアーカイブ社会」(用語集参照)の実現という面では、つなぎ役の役割として、これらメタデータの集約と連携以外にも、表1のように、分野・地域コミュニティにおけるコンテンツのオープン化の推進、長期アクセス保証、人材育成など、特に知識と人をつなぐことに主眼をおいた様々な役割が想定されます。
一つの機関がつなぎ役に期待される全ての役割を担う必要はありません。行政が中心となって産学官が連携して役割を分担・整備し、つなぎ役として果たすべき機能を構成していくことも考えられます。特に地域においては、地方自治体が「つなぎ役」として、主体的にデジタルアーカイブの構築・連携等に係る取組を推進することが重要であり、社会教育施設や大学の役割と併せて、アーカイブ機関の役割を考えていくことも想定されます。
現時点において、地域におけるつなぎ役となりうるのは、地方自治体のほか、地域における規模の大きな図書館、博物館、大学等のアーカイブ機関が想定されます。さらに、複数の機関によるアライアンスを形成するなど、つなぎ役のすそ野を広げることも考えられます。また、自らコンテンツをもたなくとも、市民やNPO等が中心となり、クラウド・ネットワークを介して、地域のアーカイブ機関等のメタデータを集約し、提供する仕組みを構築していくことも考えられます。
2 「デジタルアーカイブ活動」を考える
【ねらい】
デジタルアーカイブに関わる具体的な活動内容について理解する。
前述のとおり、デジタルアーカイブに関わるあらゆる活動を「デジタルアーカイブ活動」といいますが、デジタルアーカイブ活動には、具体的にどのような活動があるのでしょうか。図7及び図8を参考に、デジタルアーカイブの構築、連携、活用のそれぞれの段階において、どのような活動が想定できるか、見てみましょう。
(1) デジタルアーカイブの構築・連携における活動
(アーカイブ機関の活動イメージ)
デジタルアーカイブの「構築」の段階においては、アナログ媒体の資料をデジタル化したり、写真や動画などのデジタルデータを収集するなどしてデジタルコンテンツを増やしたりといった活動が考えられます。また、作成・収集したデジタルコンテンツをインターネットで公開したり、特定の施設への来館者などに限定した範囲で公開したりすることも考えられます。
作成・収集したデジタルコンテンツを必要とする活用者に届けるためには、そのコンテンツの内容や所在等の情報を整理することが必要となります。そのような情報を一定の形式で記録したものをメタデータといいます。メタデータを作成し、必要に応じて内容を更新することは、デジタルアーカイブ活動において、非常に重要な取組です。活用者は、主にメタデータを用いた検索によってデジタルコンテンツを発見します。自らの組織内だけでなく、外部に開かれたかたちでデジタルコンテンツを発信し、活用者に知ってもらうには、メタデータに触れる接点を増やしていく必要があり、そのためには特に他機関との連携が重要となります。
デジタルアーカイブの「連携」段階では、活用者にとって使いやすいメタデータを整えることが重要となります。同じ分野のデジタルコンテンツについて、同じ意図で作成されたメタデータ項目が同じ方法で作成されていれば、類似のコンテンツを発見することが容易になります。このため、分野ごとに、メタデータの標準として何をどのように記述するかを決めている場合があります。こうした分野で取り決めた標準に沿って、メタデータを作ることを、メタデータの標準化といいます。さらに、ジャパンサーチと連携するに当たっては、分野を横断して共有することが望ましいメタデータ項目があるので、そうした項目を意識してメタデータを作成することが重要です。
デジタルアーカイブ「活用のための基盤整備」においては、自らが公開するデジタルコンテンツをより一層活用しやすくすることが求められます。サムネイルやコンテンツのURLをメタデータの一部に含めたり、デジタルコンテンツの利用条件を整備し、可能な限り、自由に二次利用が可能なオープンな条件を設定したりする取組が考えられます。さらに、海外での活用を想定して、メタデータの一部(タイトル・解説)だけでも英語化に取り組むことが重要です。
以上は、ジャパンサーチの連携機関をイメージしたアーカイブ機関の活動内容を一例として紹介したものです。主体が変われば、活動内容も変わってきます。次は、活用者の場合を考えてみましょう。
(活用者の活動イメージ)
「構築」の段階では、公開されているデジタルコンテンツのメタデータを作成することや、市民協働でメタデータを作成・整備できるクラウド型ツールを開発したりするなどの取組によってアーカイブ機関を支援すること、アーカイブ機関が提供するデジタルコンテンツを使用した新たなデジタルコンテンツを作成してアーカイブ機関に提供することなどが考えられます。
「連携」の段階では、他のアーカイブ機関との間の連携に便利なツールを開発したり、使いやすいAPI(用語集参照)を提供したりすることが考えられます。
「活用」の段階では、ハッカソンやアイデアソンといったイベントへの参加のほか、デジタルコンテンツを教育や観光などの領域で積極的に活用するなどが考えられます。さらに、デジタルコンテンツのメタデータを様々なシステムやアプリケーションで活用できるように、機械可読な形式で記述し、自由に使えるようリンクトオープンデータ化したり、他機関のデータを使って付加価値を高めた情報を追加したりするなど、メタデータが活用されやすい形式に整える取組も、活用者によるデジタルアーカイブ活動の一例として挙げられます。
次項では、デジタルアーカイブの「活用」の具体的イメージをつかむため、活動主体ごとの取組例をみていきましょう。
(2) デジタルアーカイブの活用における様々な活動
デジタルアーカイブの「活用」を活動主体ごとに詳しくみると、いくつかの段階に分けて活動を整理することができます。図8に沿って、見ていきましょう。
まず、活用の第一段階として、デジタルアーカイブのコンテンツを「知ってもらう」ための活動があります。身近な例では、活用者がSNSの発信にデジタルコンテンツを使ってみることが挙げられます。アーカイブ機関では、様々なデジタルアーカイブのコンテンツを組織内で情報共有するといったことも考えられます。
次に、「日常業務で使ってもらう」ための活動があります。活用者の例を挙げると、教職員による授業での実践、図書館員によるレファレンスでの利用、学芸員による展示企画、クリエイターによる素材探し、出版関係者による調査や出版物への掲載用素材の使用などが想定されます。アーカイブ機関の観点からは、上で挙げた活用を促進するための働きかけを行うといった活動が考えられるでしょう。
さらに、活用の輪を広げ、同じ分野・地域の「コミュニティで使ってもらう」ための活動があります。自らがデジタルアーカイブを日常業務で活用した事例を同じコミュニティ内で発信したり、ノウハウを共有できるようワークショップを開催したりといった取組が考えられます。
また、「コミュニティを超えた交流」のための活動もあります。同じ分野・地域のコミュニティにとどまらず、分野や地域を超えた人たちと一緒にデジタルコンテンツを使った電子展覧会等を作成したり、新たな活用コミュニティを構築したりするといったことが考えられます。
(3) デジタルアーカイブを取り巻く著作権法の改正状況
デジタルアーカイブの活動に取り組むに当たっては、著作権法に関する動きをおさえておくことが必要です。
例えば、著作権法第31条に規定される「図書館等」に該当する博物館・美術館、図書館は、所蔵資料・収蔵品のデジタル化に関し、現行著作権法上、保存のための複製を行うことが可能です。平成26年度の第41回文化審議会著作権分科会[3]において、著作権法第31条第1項第2号に基づき、「図書館等」が保存のために「絶版等の理由により一般に入手することが困難な貴重な所蔵資料」をデジタル化することができるとの解釈が示されました。さらに、平成27年6月には、デジタル化できる主体の「図書館等」の範囲が拡大され 、博物館法の登録博物館及び博物館相当施設であって営利を目的としない法人により設置されたものが含まれることとなりました。
次の大きな動きとしては、平成30年の著作権法改正において、デジタル・ネットワーク技術の進展により、新たに生まれる様々な著作物の利用ニーズに的確に対応するため、著作権者の許諾を受ける必要がある行為の範囲を見直し、情報関連産業、教育、障害者、美術館等におけるアーカイブの利活用に係る著作物の利用をより円滑に行えるようにするため、権利制限規定等が整備されました[4]。
このうち、デジタルアーカイブに深く関わるものは、次のとおりです。
[3] http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/bunkakai/41/index.html
[4] 文化庁「著作権法の一部を改正する法律(平成30年法律第30号)について」を参照のこと。
http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/h30_hokaisei
○ デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した「柔軟な権利制限規定」[5]の整備(第30条の4、第47条の4、第47条の5等関係)
著作物の市場に悪影響を及ぼさないビッグデータを活用したサービス等のために著作物の利用を許諾なく行うことが可能となりました。つまり、所在検索サービス[6]や情報解析サービス[7]として、検索サービスやデジタルアーカイブなどにおいてデータを権利処理せずに活用できる範囲が広がりました。例えば、書籍の検索の場合に、書籍のタイトル、著作者名等とともに、書籍の本文(著作物)の一部を表示させることや、大量の学習用データを人工知能(AI)に入力して分析させ、人間のサポートなしにそれらの情報が何であるか等を判断できるようにすることなどが考えられます。
○ アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等(第47条、第67条等関係)
従来から、美術館等に展示されている作品(著作物)を解説・紹介するために作品の写真を小冊子に掲載することが認められていたところ、今回の著作権法改正により、展示作品の解説・紹介用資料をデジタル化して、施設内においてタブレット端末等で閲覧可能にすること、また、展示作品に関する情報を一般公衆に提供するため、展示作品のサムネイル画像のインターネット公開を許諾なく行うことができるようになりました。
また、裁定制度[8]の見直しにおいては、国及び地方公共団体等が裁定制度を利用する際に、補償金の供託が不要となりました。これにより、公的機関が著作者不明著作物のデジタルコンテンツを公開するに当たって、裁定制度の利用申請の際、引き続き著作者確認のための調査が必要であるものの、事前に供託金を用意する必要はなくなりました。
[5] 法改正に伴い、従来の権利制限規定が、権利者の利益を通常害さない行為類型(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用(第30条の4)、電子計算機における著作物の利用に付随する利用等(第47条の4))や、権利者に及ぶ不利益が軽微な行為類型(新たな知見・情報を創出する電子計算機による情報処理の結果提供に付随する軽微利用等(第47条の5))といった「柔軟な権利制限規定」に整理された。
[6] 広く公衆がアクセス可能な情報の所在を検索可能にするとともに、その一部を検索結果と併せて表示するサービス。
[7] 広く公衆がアクセス可能な情報を収集して解析し、求めに応じて解析結果を提供するサービス。
[8] 他人の著作物について、利用者側で許諾を得ようとしても、著作権者不明等の理由で許諾を得ることができない場合に、文化庁長官の裁定を受け文化庁長官が定める額の補償金を供託させることにより、適法に著作物を利用することができる制度である。
3 「デジタルアーカイブ活動」をデザインする
【ねらい】
自らが、デジタルアーカイブに関する活動にどのように取り組むのかを具体的に考える。
これまで見てきたように、デジタルアーカイブ活動には、「構築」「連携」「活用」といった各段階において様々な取組が考えられます。ここでは、自分たちで取り組むデジタルアーカイブ活動のデザインを考える参考情報として、「構築」「連携」「活用」のそれぞれの段階において具体的にどのような活動の形態があるのか、事例を交えて紹介します。詳細は、付属の事例集をご参照ください。
(構 築)
デジタルアーカイブは、様々な主体によって構築されます。博物館・美術館、文書館、図書館といったアーカイブ機関が所蔵コレクションをデジタル化し、デジタルアーカイブを構築するのが典型的な例です。例えば、国の機関では、国立文化財機構所蔵品統合検索システム(ColBase)、国立公文書館デジタルアーカイブ、国立国会図書館デジタルコレクション等を挙げることができます。アーカイブ機関は、博物館・美術館等だけではありません。行政を担う地方自治体が自治体史編纂などで収集した資料をデジタルアーカイブとして公開する例(青森県史デジタルアーカイブス等)や地域の住民と協働で収集した記録をデジタル化してデジタルアーカイブを構築する例(なんじょうデジタルアーカイブ、上田市マルチメディア情報センター等)もあります。また、大学、研究機関、財団等が特定の分野や地域ネットワークの核となって資料や記録を収集し、それらをデジタルアーカイブとして公開する例(にいがた地域映像アーカイブデータベース、写真原板データベース)もあります。
(連 携)
複数のデジタルアーカイブが連携し、共有の場ができることで、デジタルアーカイブ活用の効果は広範囲に及び、より一層大きくなります。
連携の形態は様々ですが、関連する複数のアーカイブがもつデータを集約し、一元的に閲覧や検索を可能にすることが基本となります。例えば、図9のように、①同じ分野・地域内のアーカイブ機関のデータベースが国や地域を代表する機関に取りまとめられ、ポータルが構築されている例(文化遺産オンライン、サイエンスミュージアムネット、北海道デジタルミュージアム等)、②同じ組織内の複数機関のデータが集約され、一元的なデータベースが構築されている例(ColBase、国立美術館所蔵作品総合目録等)、③同じ分野や地域の様々な機関や個人が保有するデータが一元的なデータベースに集約されている例(にいがた地域映像アーカイブデータベース、ARC浮世絵ポータルデータベース等)、④データを持たない機関を窓口として、データベースがデジタルアーカイブのプラットフォームに連携している例(全国美術館会議)などがあります。扱っているコンテンツの内容やアーカイブ機関がどれだけ多様か又は一様なのかによって、様々な連携の態様がありえるので、各アーカイブ機関のアーカイブ作成の目的や置かれた状況を踏まえ、効果的かつ効率的な連携の在り方を選択するとよいでしょう。
(活 用)
デジタルアーカイブは構築や連携自体が最終的な目標ではありません。デジタルアーカイブを構築し、他のデジタルアーカイブと連携した後は、それをどのような用途で活用していくかが重要です。
主な活用方法の一つは、アーカイブ機関自らが提供するサービスで活用することです。調べもの案内(レファレンス)サービス、電子展覧会、イベント等で活用したり、自らが保有する公式SNS等の広報メディアを通じて、デジタルコンテンツを使った情報発信をしたりすることなどが考えられます。こうした取組は、組織内での研修等を通じて、活用方法及び活用事例に関する情報共有を図るとより一層効果的で、アーカイブ機関のサービス向上に寄与することが期待できます。
デジタルアーカイブは、対外的なサービスの向上だけでなく、業務の効率化にも寄与します。例えば、それまで部署単位で管理していたデータがデジタルアーカイブの構築によって一元的に管理されることで、職員間の情報共有が進み、それが業務の効率化につながるとの報告も寄せられています(愛知県美術館、東京富士美術館など)。
アーカイブ機関自らのサービス向上のほか、コミュニティや人的ネットワークの形成につながる活用方法もあります。他機関と協力してワークショップを開催したり、電子展覧会を作成したりすることで、デジタルコンテンツを介したコミュニティ形成や人とのつながりを創出することができます。様々な分野の機関や個人が集まるデジタルアーカイブ活用のワークショップとして、例えば「S×UKILAM(スキラム)連携: 多様な資料の教材化ワークショップ」が挙げられます。
さて、デジタルアーカイブ活動の大まかな輪郭を把握した後は、自分がどのような活動に取り組みたいか、次のデザインツールを使って、具体的なイメージをつかんでみましょう。図10はデジタルアーカイブの構築や連携に関する取組、図11はデジタルアーカイブの活用に関する取組のデザインツールです。まず、図の左端の「活動イメージ」を基に自分の活動目標を設定した後、「活動の具体例」と「参照先」からどのような取組ができるかを考えてみましょう。
Ⅱ 「デジタルアーカイブ活動」を自己診断する
【概要】
自らのミッションや目標を踏まえ、デジタルアーカイブ活動の達成度を確認(自己診断)するツールに「デジタルアーカイブアセスメントツール(ver.3.0)」があります。本章では、個人や機関が行っているデジタルアーカイブ活動を自己診断するに当たって、ツールが提示する具体的な取組内容は何か、取組に改善の余地がある場合、具体的にどのような取組を行えばよいのか解説しています。各節では、組織的な取組から、メタデータの整備やデジタルアーカイブの活用まで、デジタルアーカイブ活動における様々な取組を取り上げていますので、アーカイブ機関は、バランスよく自己診断することができます。また、デジタルアーカイブの活用者は、自らの目標に沿って、必要な取組に焦点を合わせて参照することもできます。
【ねらい】
「デジタルアーカイブアセスメントツール(ver.3.0)」で自己診断を行うに当たって、ツールが求めている具体的なデジタルアーカイブ活動の取組内容を理解すること。
1 デジタルアーカイブに組織的に取り組む
【ねらい】
「デジタルアーカイブ活動」の一環として、具体的に何をどのように取り組むのか、そのリソースの確保なども含め、自らの活動の方針等を確認します。
【対象】
アーカイブ機関・つなぎ役 ★★★
活用者・拡げ役 ★☆☆
【基本的な考え方】
〇組織的に取り組む必要性
デジタルアーカイブは、過去の記録と記憶を未来に継承する社会的基盤であり、同時にコミュニティや個人の様々な活動を支える共通の知識基盤となります。そのため、デジタルアーカイブが利用可能な状態で長く維持されるよう、デジタルアーカイブ機関は安定的に管理・運用できる体制を構築し、組織的に取組を進めていくことが重要です。
デジタルアーカイブ活動は、デジタルアーカイブの構築、保存、共有、連携、活用など複数の領域にまたがる取組です。全ての領域に係る取組を単独で行う必要はありません。各機関が持っている知見・データやノウハウを共有し、情報共有の基盤を形成していきましょう。まずは機関の中で個人が持っている暗黙知をデータ化し、アーカイブ機関を運営するための知識を組織内で蓄積し、可能な範囲でそれを外部に共有して次世代につないでいく必要があります。
アーカイブ機関は、デジタルアーカイブに関する取組を進めるに当たって、構築から活用までのプロセス全体の中で自らの取組を位置付け、計画的に実行に移していくことが望まれます。そのためには、自館の特長や持てるリソースを勘案しつつ、デジタルアーカイブ活動をデザインすることがアーカイブ機関にとっての最初の一歩となるでしょう。これにより、たとえ小さな取組であっても、その意義が明確になり、長期的な見通しに立った活動が可能となります。
【望ましい状態】
デジタルアーカイブに関するビジョン又は戦略計画を持ち、コンテンツの拡充、公開の継続、メタデータ連携、データマネジメントに必要な予算、人材の確保、情報セキュリティ、デジタルアーカイブ利活用のための広報に関する方針・文書を整備していること。
【留意点】
アーカイブ機関の活動内容によって、必要な人的・財政的リソースが異なります。また、単独で取り組むだけでなく、同じ分野・地域コミュニティの「つなぎ役」と協力して取り組む場合もあります。この場合、「つなぎ役」となる機関が、予算、人材、デジタルアーカイブの運用における方針・文書の整備等において、各機関を支援する体制を確保することが期待されます。また、自らが「つなぎ役」機関であったとしても、同様に、行政や関係機関等の協力を得て役割分担して、デジタルアーカイブ活動を進めることも考えられます。
【関連事項】
「2 メタデータを整備し、公開する」から「7 デジタルアーカイブを日常的に活用し、活動を拡げる」までの全ての活動と関連する。
(1) 方針・計画
(方針・計画を策定する)
- 基本方針を策定する
デジタルアーカイブを構築するに当たって、最初にその目的、目標、提供方法、利用対象者など、デジタルアーカイブに係る基本方針を明確にしておくことが重要です。
- 実施計画を策定する
デジタルアーカイブは構築が最終目的ではなく、継続して利用できる状態を維持していくことが重要です。そのため、基本方針に基づく数年単位の実施計画を立てることが望まれます。実施計画は、構築に係る想定コストや構築後の運営コストを勘案しつつ作成した上で、定期的にレビューできるサイクルの確立が望ましいです。また、デジタルアーカイブを維持していくためには、業務の中で資料のデジタル化や収集したデジタルアーカイブのメタデータの作成・更新を行うなど、デジタルアーカイブの対象になるデータを日常的に作成する仕組みを作り、維持することが重要です。
- 方針・計画策定の考え方
デジタルアーカイブを利用可能な状態で維持していくため、所蔵する資料全体の保存方針・計画の中で、デジタルデータの適切な保存、管理及び利用に向けて、組織として方針及び計画を策定することが重要です。方針及び計画は、デジタル技術の最新動向を踏まえ、定期的に見直しを行うことが望まれます。
- はじめの一歩として
アーカイブ機関によっては、上に挙げた基本方針(及びその実施計画)の策定に直ちに取り組むのが難しい場合もあるでしょう。その場合は、デジタルアーカイブに関する取組を年度活動計画に記載するところから始めてみるのも良いでしょう。
(方針に盛り込む基本事項)
方針の策定においては、長期に管理しマスターとするデジタルデータの範囲を決定し、デジタルコンテンツに関してはその品質、ファイルフォーマット、メタデータ(形式・スキーマ)等の要件、公開・非公開、利用条件、保存期間、データを削除する際の判断基準等を示すことが望まれます。
デジタルコンテンツの長期保存を適切に行えるよう、メタデータの整備について方針に盛り込みます。また、方針には、デジタルデータ管理におけるリスク、例えば使用する保存媒体の寿命、時間経過による権利管理への影響等を把握できる内容を盛り込むほか、デジタルアーカイブを万一閉鎖する場合のデジタルデータの移管やデータの返却といった対応についても、方針で示しておく必要があります。
(計画に盛り込む基本事項)
計画の策定においては、方針に基づき、保存媒体に関すること、保存媒体の寿命に応じたマイグレーション(用語集参照)方法等の具体的な保存対策、メタデータの整備方法、デジタルデータを管理するシステムのリプレース(4、5 年単位)時の対応等を盛り込みます。
(方針・計画のための検討事項)
保存対象とするデジタルデータの特徴を踏まえた、利用可能な状態を確保できるデータ保全の方法を検討し、方針・計画に盛り込みます。例えば、物理的な保存メディアの定期検査の方法、デジタルデータの利用可能性の確認方法(メタデータにファイルサイズやハッシュ値等を記録しデータ整合性チェックに利用する等)、マイグレーション又はエミュレーション(用語集参照)といったデジタルコンテンツの利用可能性を確保するための保存方法等を検討することが考えられます。
デジタルデータの破損や紛失に備えたバックアップ方法も検討し、方針・計画に盛り込んでおくとよいでしょう。その際、バックアップの実行頻度、保持方式(フルか差分か増分か)、バックアップ及びリカバリの手順等について確認するとともに、バックアップデータの保管及びデータのリストアを実施するためのデータバックアップシステムの確保についても検討します。バックアップシステムとは、いわゆるサーバストレージや保存媒体を用いたバックアップの仕組みのほか、組織内又は組織間でのデジタルデータ保存のための仕組み全体をいいます。
災害等に備え、保存対象とするデジタルデータの複製物を複数の遠隔地で分散配置すること、又は信頼できるクラウドストレージを用いる等の対応を方針・計画に盛り込むことも大切です。
(つなぎ役の役割)
つなぎ役に相当するアーカイブ機関の場合は、コミュニティ全体のためのデジタルデータ管理や長期保存に関する方針・文書等を用意すること、また情報共有の仕組みを用意することが期待されます。さらに、デジタルデータのオープン化推進のための方針・文書等の用意も考えられます。
(2) 予算
(組織の予算と維持)[9]
デジタルアーカイブを長期に渡り維持するため、担当者の異動や予算配分の停止によってデジタルアーカイブの運用が停止しないよう、中長期的な予算措置が求められます。また、デジタルアーカイブの性質上、増え続けていくデータを保持するための予算確保などが検討課題となります。
(コストの検討)[9]
前項で検討したデジタルアーカイブ構築の全体方針から、利用対象者などを考え、実際に使える予算と構築にかかる想定予算を比較検討して、自館で構築できるデジタルアーカイブの仕様を整理しておきましょう。
(組織と予算の維持)[9]
予算を確保するためには、複数の機関が連携して対処することが有用です。地域の共同事業に参加することを通じて必要な予算を確保するなど、いわゆる地域のコミュニティ形成につながるも重要な取組といえます。
[9] 本節は、総務省『デジタルアーカイブの構築・連携のためのガイドライン』(2012年3月26日)p.33等から引用・参照した。https://www.soumu.go.jp/main_content/000153595.pdf
(3) 人材の確保
(人材に求められる能力)
デジタルアーカイブの利活用を進めるためには、自館の所蔵コンテンツに付加価値を見出し、それらを外部に発信するキュレーターや、地域の事情を理解した上でデジタルアーカイブを構築し、メタデータの項目等を国際標準とすり合わせていくことのできる人材の育成が必要不可欠です。
(人的基盤の整備)
上で挙げたような人材には、デジタルアーカイブの構築に関する知識はもちろんのこと、調整や企画、マネジメントに関する能力、著作権法や個人情報保護法、さらには、人権やプライバシーの権利等に対する理解も求められており、一朝一夕で養成できるものではありません。地域のアーカイブ機関においては、都道府県レベルの機関であっても、そのような人材を確保することは難しく、市町村の組織になると更に深刻な状況です。これまでのデジタルアーカイブの構築事例を見ても、推進役となる人の存在が大きく、一部の人に負担が偏ることが課題と考えられます。
こうした課題を解決するためには、アーカイブ機関の外部にいる第三者の専門人材を活用する仕組みや、経験を積んだスタッフを一定程度広域的に活用する仕組み等も含め、多様な方策を検討する必要があります。また、地域のアーカイブにおいては、アーカイブ機関だけでなく、大学、企業、NPO 等が連携してその地域の課題に協力して取り組んでいくことも考えられます。こうした取組と AI 等の新技術を活用することによって、限られた人的リソースを適切な業務に振り向けることが可能となり、現場の負担軽減にも役立つと考えられます。
(管理者の配置)
デジタルアーカイブに関する基礎的な知識を持つ担当者が確保されていることが必要です。また、業務の継続性に配慮し、デジタルアーカイブの管理の担当者は、複数人配置することが望まれます。
(データの管理者)
可能なら、データマネジメントができるデータの管理部署又は管理者を配置することが望まれますが、配置が難しい場合は、デジタルアーカイブに含まれる各種データの状態を把握できる担当者を配置することも考えられます。例えば、1年に1度サンプル抽出したデータを確認するなど、定期的に状態を確認できる体制を整備することが重要です。
(4) 人材の育成
(職場内での知識の共有)
基礎的な知識を有する担当者がいる場合は、その担当者が講師となって研修を行うなど、同じ組織内で知識を共有していくことによって、人材を育てる方法が考えられます。また、組織内でデジタルアーカイブに関する勉強会や研究会を定期的に開催するなど、担当者以外にもデジタルアーカイブに関する知識を得る機会が確保されていることは重要です。こうした取組は、組織におけるデジタルアーカイブの人的基盤を強化する上で有意義な取組といえるでしょう。
(外部研修等の活用)
資料のデジタル化や長期保存に関する基礎的な研修は、国立公文書館、国立国会図書館[10]等の国の機関のほか、都道府県の単位で行われる研修や勉強会などもあります。外部研修も組織内の研修計画に組み込むなど、継続的に職員が学べる仕組みを作ることが重要です。
また、同じ分野・地域のアーカイブ機関が集まり、定期的に情報交換を行うこともデジタルアーカイブに係る知識や経験を共有していく上で有益です。
[10] 「遠隔研修のページ」(国立国会図書館)https://www.ndl.go.jp/jp/library/training/remote/index.html
(5) 情報セキュリティ
(セキュリティ対策)
データを管理するサーバや情報システムへの不正アクセスが生じると、重要情報の漏洩や改ざん、消失等が発生することがあります。ソフトウェアを最新の状態に保ち、システムの脆弱性を放置しないことが重要です。パスワードや個人情報を盗むことを目的とした標的型攻撃について、メールによるウィルス付き添付ファイルの送信といった攻撃の手口をよく知り、対策を取ります。
外部のクラウドストレージを利用する場合は、利用規約において、組織のデータの位置付けやセキュリティポリシーに照らして、デジタルデータの保持に関する保証内容に問題がないことを確認する必要があります。また、ISO 等の認証を得ているかどうかも確認することが望まれます。
(6) 広報
(意識啓発)
多くのアーカイブ機関では、施設への来館者数や所蔵資料の貸出し件数を業績評価における重要な成果指標としていますが、所蔵品の高精細な写真や動画といったデジタルコンテンツをインターネット上に公開すると、来館者数が減るのではないかという懸念が示されることもあります。しかし、デジタル時代においては、むしろ、優れたコンテンツを発信することにより、文化的資産が多くの情報の中に埋没することなく継承・保存・活用されることが期待できます。さらに、デジタルコンテンツをデジタルアーカイブ化し、それをジャパンサーチのようなプラットフォームと連携させることで、所蔵コレクションと他機関が所蔵する資料との横断的な検索が可能となります。また、他機関所蔵の資料と並べて表示させることで、所蔵コレクションに新たな意味付けや価値が生み出されるなど、活用の可能性を拡げることが期待できます。したがって、アーカイブ機関においては、所蔵品やアナログ情報を適切に保存するだけではなく、デジタル情報を保存、発信し、知的財産として活用していく重要性について認識を共有することが必要です。
また、文化的資産をデジタルアーカイブ化して幅広く利活用することは、その文化的資産の価値を更に高め、フィジカル(用語集参照)な文化的資産そのものの保存につながると同時に、新たなデジタルコンテンツの生成にもつながることを、アーカイブ構築側、利活用側の双方が共有することが重要です。
(異なる分野・地域コミュニティでの活用へ)
新たな活用を生み出すには、自分たちのコミュニティにとどまらず、他のコミュニティへの積極的な働きかけを行うことが望まれます。アーカイブ機関が保有する広報メディアによる情報発信に加え、活用者に届く流通経路に情報を載せたり、異なる分野の参加者が集まるワークショップ等に参加し、情報を発信したりするなどの工夫が求められます。異なる分野の機関や関係者と共通のテーマでイベントを共催することも新たなコミュニティにリーチする上で効果的な方法と言えるでしょう。さらに、プレスリリース等を通じて報道機関などのメディア関係者にデジタルアーカイブに関する取組について情報提供を行ったり、ビジュアルを意識した情報発信をすることで、様々な領域のクリエイターにデジタルアーカイブの魅力を発信したりすることも考えられます。
(国際的にデータを共有するための多言語化対応)
データの活用を最大限有効なものとし、国際的な流通を促進するには、インタフェースの多言語化、特に英語版の提供が求められます。インタフェースの英語化が難しい場合は、ヘルプページなどを優先して英語化することも考えられます。また、自らのデジタルアーカイブに関する取組を英語ページで発信する方法も考えられます。
(7) 利用分析
(統計データ取得と分析の仕組みづくり)
デジタルアーカイブが一層活用されるために、利用統計の取得やアンケートの実施等を通じて、ユーザからフィードバックを受け、さらにそれをサービスの向上に活かす体制と仕組みを構築することが重要です。
システムを構築する際は、構想段階からどのような統計を採取するかを検討しておく必要があります。また、アクセスに関するデータの場合は、無料のWebアクセス解析ツールを使うことも考えられます。ただし、プライバシー権等に配慮し、プライバシーポリシーで使用しているツールを説明した上であらかじめユーザの同意を得ておく仕組みが望まれます。
2 メタデータを整備し、公開する
【ねらい】
資料・コンテンツの内容・所在情報(メタデータ)の作成、整理及び提供方法を紹介します。
【対象】
アーカイブ機関・つなぎ役 ★★★
活用者・拡げ役 ★★☆
【基本的な考え方】
〇メタデータとは?
「メタデータ」という用語は、データに関するデータのことであり、ここでいうメタデータとは、サムネイル/プレビュー、さらには用語を統制するための語彙等も含むものとして広く定義されることもありますが、ここでは、図1に示すように、コンテンツの内容や所在等の情報を記述したデータを「メタデータ」と呼んでいます。また、メタデータは、デジタルコンテンツだけでなく、原資料(アナログ)のメタデータも整備・公開の対象となります。コンテンツは、社会・文化・学術等の情報資源であり、デジタルコンテンツとアナログ媒体の資料・作品等を含みます。
〇メタデータの整備とは?
資料・コンテンツに関する内容や所在等の情報について、まず、資料・コンテンツに一元的に管理できる識別子を付与した上で、資料・コンテンツに関する情報を整理し、追加することを指します。また、必要に応じて、作成したメタデータの内容を更新することも含みます。
ここでいうメタデータの対象には、アーカイブ機関が所蔵する資料・コンテンツだけでなく、デジタルアーカイブのデータを使って活用者が新たに作成したコンテンツも含みます。
〇メタデータの公開とは?
データベース形式での公開に限りません。テキストデータや画像データ等のファイルをそのままウェブに掲載する方法で、メタデータを公開することも考えられます。さらに、組織内での利用にとどまらず、分野・地域のコミュニティネットワーク内での共有やジャパンサーチ等の分野横断プラットフォームでの利用を想定する場合は、機械可読性を確保し、サーバ間でデータのやりとりが可能となるよう、データベースにコンピュータ向けインタフェース(アプリケーション・プログラミング・インタフェース、API)を設けて公開する方法も考えられます。
【望ましい状態】
所蔵する又は作成したコンテンツのメタデータを分野標準に対応した形式で電子的に作成・管理し、利便性の高い方法でウェブ上に公開していること。
【留意点】
メタデータの整備・公開はアーカイブ機関だけが行うわけではありません。自前のコンテンツを保有しない活用者や地域コミュニティが、他機関等からメタデータを収集した上で、付加価値を加えて流通させるような場合も考えられます。
【関連事項】
○ 識別子の付与について
「5 持続可能性を担保した方法でデータを管理する」(6)識別子の付与
○ メタデータの来歴情報について
「5 持続可能性を担保した方法でデータを管理する」(2)データ管理(メタデータ整備)
○ メタデータのオープン化について
「4 データの二次利用条件を明示し、可能な限りオープン化する」(2)メタデータのオープン化
○メタデータの公開・連携方法について
「6 相互運用性を確保した方法でデータを提供する」(3)ダウンロードによる提供、(4)APIの提供
○ メタデータの標準化について
「5 持続可能性を担保した方法でデータを管理する」(2)データ管理(メタデータ整備)
「6 相互運用性を確保した方法でデータを提供する」(6)URIの提供、(7)Linked Dataへの対応
(1) メタデータの作成・更新
(メタデータの整備方法)
メタデータの整備においては、次の5つの項目は共有や再利用のために特に重要であり、判明している場合には、必須の情報として記述することが求められます。
・管理番号(重複しない恒久的な識別子)
・タイトル(ラベル)
・作者(人物)
・日付(時代)
・場所
作者、日付及び場所については、分野によって、これらが意味する情報が異なる場合があります。例えば、書籍であれば著者、出版年、出版地になりますが、美術作品であれば作者、作成時代、所蔵場所といった情報が考えられます。このように分野によって対象や記述の仕方が異なるものもありますが、特に共有・公開を目的とするメタデータは、基本的には複雑にせずシンプルで一貫した記述が良いでしょう。
識別子の付与方法については、「5 持続可能性を担保した方法でデータを管理する」(6)識別子の付与を参照してください。
(メタデータの整備に当たっての留意点)
アーカイブ機関は、可能な限り、時間の経過によって変化しないものをメタデータの必須項目として選びつつ、継続的に管理(メンテナンス)することが求められます。
分野で標準とされている又は分野内で広く用いられているメタデータ形式によるメタデータの管理を行うことが望まれます。
コンテンツの管理・活用のために必要とされる情報として、コンテンツの来歴情報や権利関係の情報も重要です。資料ごとに、デジタルデータ作成者、作成日、更新日、原資料の権利状態、デジタルデータの権利状態(著作権保護期間中かどうか、保護期間満了の時期、権利者、利用条件等のライセンスなど)の情報をメタデータとして管理することが求められます。本項目については、「5 持続可能性を担保した方法でデータを管理する」(2)データ管理(メタデータ整備)も併せて参照してください。
(2) メタデータの公開
(公開範囲の考え方)
アーカイブ機関は、自らが作成・保有するデジタル情報資源について、それぞれ種類ごとに公開範囲を決めるとともに、第三者が二次利用する場合の条件についても決めることができ、また、決める必要があります。 例えば、メタデータ、サムネイル/プレビュー、デジタルコンテンツなどの種別に応じて、それぞれ異なる公開範囲を決めてもよいし、さらにデータが持つテーマや品質などによって公開範囲を分けても構いません。
メタデータの公開範囲については、どこにどのようなコンテンツがあるのか所在情報等を共有することは、コンテンツの活用を促進するために重要であり、できる限り、組織内やコミュニティ内だけでなく、一般に公開し、かつ、オープンに(自由な二次利用が可能な条件で)流通させることが望まれます。メタデータの利用条件については、「4 データの二次利用条件を明示し、可能な限りオープン化する」(2)メタデータのオープン化 を参照してください。
(公開方法)
アーカイブ機関がメタデータを他機関と共有したり、広く発信したりする場合、データをそのままエクセル等の形式でウェブに掲載する方法もありますが、一般的にはユーザが手軽に検索できるデータベースの形式で提供することが考えられます。さらに、組織内にとどまらず、分野・地域のコミュニティネットワーク内での共有や、様々な領域での活用を視野に入れる場合は、機械可読性を確保し、サーバ間でデータのやりとりが可能となるよう、データベースにコンピュータ向けインタフェース(アプリケーション・プログラミング・インタフェース、API)を設けることが望ましい場合もあります。API等による提供方法を用意することで、地図上にメタデータをプロットしたり、タイムラインで年代順に並べたりする形式で公開できるようになります。
公開に当たっては、公開するメタデータを最新の内容に保つ仕組みを用意することが望まれます。具体的な公開方法については、「6 相互運用性を確保した方法でデータを提供する」(3)ダウンロードによる提供 及び(4)APIの提供を参照してください。
また、メタデータをファイルで提供する場合は、「6 相互運用性を確保した方法でデータを提供する」(3)ダウンロードによる提供 の中の「表5 活用しやすい表形式のデータとは?」を参照してください。
(3) メタデータの連携状況
(連携の意義)
デジタルアーカイブの活用を促進するため、メタデータを他機関や様々なサービスと連携させることは有用です。連携にはいくつかの選択肢があります。例えば、①同一組織内での連携、②同じ分野・地域コミュニティネットワーク内での連携、③ジャパンサーチなどを通じた他の分野・地域との連携などが考えられます。これら連携の取組を進めることで、組織内での業務効率化やサービスの改善、コミュニティにおけるデジタルコンテンツの利活用促進、所蔵コレクションの発見可能性の向上などの効果が期待できます。
なお、メタデータの連携方法については、「6 相互運用性を確保した方法でデータを提供する」(3)ダウンロードによる提供 及び(4)APIの提供 を参照してください。
(4) メタデータの標準化
(メタデータの形式・項目の考え方)
コンテンツの連携や活用を促進するため、相互運用性の観点から(後述の「6 相互運用性を確保した方法でデータを提供する」参照)、分野で標準とされている、又は分野内で広く用いられているメタデータ形式によるメタデータの管理を行うことが求められます。扱うデータに応じた標準的なメタデータ項目のセットやメタデータの構造(スキーマ)を探し、なるべく独自の項目・構造を作らないようにしましょう(同じ分野でメタデータの標準的な記述方法やガイドラインの情報については、「資料1-4 確認すべき標準・ガイドライン等」を参照)。
その上で、可能な限り、時間の経過によって変化しないものをメタデータの必須項目として選びつつ、継続的にメンテナンスしていく必要があります。ジャパンサーチで、分野で共通して持つことが望まれる項目(表2)も参考にしましょう。
(用語の管理)
情報の交換・共有をより有効なものとするためには、メタデータの記述方法等を分野の標準にそろえることに加えて、辞書・典拠・シソーラスといった用語の管理を行うことが求められます。例えば、日本美術の作家に関する人名の表記について、複数の表記方法をまとめるといった作業が考えられます(「6 相互運用性を確保した方法でデータを提供する」(5)共通用語の整備 を参照)。
(つなぎ役の役割)
つなぎ役は、同じ分野・地域コミュニティ内で広く用いられているメタデータ形式を、標準として決めたり推奨したりすることが求められます。また、分野のコミュニティ内でよく用いられる標準的な用語を統制するための作業も、分野や地域のコミュニティにおいて、つなぎ役が中心となって、分野横断的なメタデータ要素と各分野固有のメタデータ要素を整理し、連携するために共有するべき要素を明確化することが望まれます。こうしたメタデータの標準化や用語の管理は、活用するために必要なだけでなく、それぞれのアーカイブ機関のメタデータ整備に役立ち、業務の効率化につながるものでもあると考えます。
(利用のためのメタデータの検討)
メタデータをより利用しやすくするため、効果的な情報の関連付けができるよう、分野のコミュニティ内で当該分野に特化した専門的な人名・地名を示す情報を集約させてURIを付与し、Wikidata、DBpediaなどに識別リンクを提供するなどしてURIを増やして、活用者や拡げ役がより活用しやすい環境に整えていくことが考えられます(「6 相互運用性を確保した方法でデータを提供する」(6)URIの提供 及び(7)Linked Dataへの対応 を参照)。
(5) メタデータの多言語対応
(国際的にデータを共有するための多言語化対応)
国際的な共有を考えた場合に、メタデータの整備段階で海外の活用者や日本国内の外国人のための多言語化(特に英語・ローマ字表記)に留意することが望まれます。少なくとも資料・作品の「タイトル」等の識別に重要な項目だけでも、英語又はローマ字表記を用意することが望まれます。
3 デジタルコンテンツを作成し、公開する
【ねらい】
資料等のデジタル化によりデジタルコンテンツを作成する方法と、その公開方法を紹介します。
【対象】
アーカイブ機関・つなぎ役 ★★★
活用者・拡げ役 ★★☆
【基本的な考え方】
〇デジタルコンテンツとは?
アナログ媒体の資料・作品等をデジタル化したデジタルコンテンツ又はボーンデジタルの作品(デジタルカメラの写真、電子書籍等)のデジタルコンテンツ自体を指します。アーカイブ機関自らが作成・保有するデジタル情報資源だけでなく、活用者がデジタルアーカイブのデータを使って作成した新たなデジタルコンテンツも含まれます。
○デジタルコンテンツの公開とは?
コンテンツに応じて公開範囲と利用条件を設定した上でデジタルコンテンツを公開します。公開範囲については、コンテンツに応じて、ウェブ公開、施設内での公開、関係者内での公開のように設定します。利用条件については、オープンな利用条件で公開したり、教育目的に限定した利用条件を設定したりすることなどが想定されます。
【望ましい状態】
高品質なデジタルコンテンツが、利便性を担保した活用されやすいかたちで公開されていること。
【留意点】
デジタルコンテンツの作成、収集及び公開について、全てを自らの組織だけで実施する必要はありません。同じ分野・地域コミュニティとのつなぎ役を介して、作成や公開に取り組むことも考えられます。
【関連事項】
「2 メタデータを整備し、公開する」
「4 データの二次利用条件を明示し、可能な限りオープン化する」
(1) デジタルコンテンツの作成・収集
(デジタルコンテンツ作成時の留意点)
デジタルコンテンツの作成時には、サムネイルやプレビューも併せて作成することが望まれます。なお、デジタル化をする際の品質については、次項((2)デジタルコンテンツの品質)を参照してください。
(デジタルコンテンツの作成時の契約や権利について)
デジタル化作業を外部に委託する際は、デジタル化成果物が自らの所有物となること、また、自ら自由に使えることに加え、第三者の活用も可能となるよう著作権の状態について、契約内容の確認が必要です。展示会図録、報告書、レプリカ等の作成など、デジタルコンテンツの作成が主目的でない場合においても、その過程で様々なデジタルデータが作成されます。市販の図録等の作成時に、元のコンテンツの著作権の権利処理を行っている場合は、デジタルアーカイブでの利用(データの公開や二次利用等)も併せて権利処理を行っておいた方が良いでしょう。
(デジタルコンテンツの蓄積と品質向上)
過去に作成したデジタルコンテンツについて、モノクロや低解像度の画像など品質がやや劣るものであったとしても、活用に向けてそれらをデジタルコンテンツとして整備し、保存することが望まれます。一方で、最新の技術動向を踏まえつつ、適宜必要な技術を用いながらデータの品質をリフレッシュしていくことが求められます。
(デジタルコンテンツ収集時の留意点)
近年のスマートフォンの普及などにより、個人の所有するデジタル機器で簡単に高品質の写真、動画等を撮ることが可能となっています。例えば、地域のデジタルアーカイブにおいて、個人が撮影した祭り等の動画の記録を収集して自らのデジタルコンテンツとして増やしていくことも考えられます。こうした、個人が所有する写真・動画等の記録を収集する際、自らのサービスでの活用に加え第三者の活用も可能となるよう、包括的利用許諾を結ぶなど、権利関係の整備をしておくと良いでしょう。
(2) デジタルコンテンツの品質
(デジタルコンテンツの作成時及び収集時の考え方)
デジタルコンテンツの品質については、閲覧デバイス等の将来の高度化に備え、元のコンテンツの代替となるよう、コストとのバランスを考慮しつつ、可能な限り高品質なものを作成することが望まれます。また、デジタルリマスター等の技術も活用することでより品質の良いデジタルコンテンツの作成も可能となってきていることから、そのような最新デジタル技術の活用も検討すると良いでしょう。
また、高品質なものだけでなく、利用や提供のしやすさを優先して情報量を抑えたものや、コンテンツの発見を助けるためのもの(サムネイル/プレビュー)も併せて作成することが望まれます。サムネイル/プレビューの品質に関しては、利用する側が無理なく判別できるレベルのものが必要です。
なお、画像データ作成の際は、電子的に生まれるノイズや撮影時のピントによるボケ、天地等の確認を行う必要があります。また、色の管理については、印刷物による色校正ではなく、カラーチャートを入れることで撮影時の色の状態を残しておきましょう。
(3) デジタルコンテンツの公開状況
(公開ポリシー設定の考え方)
アーカイブ機関は、自らが作成・保有するデジタル情報資源について、ウェブ公開か、関係者のみ公開か、施設内公開かといった公開範囲を決めるとともに、第三者が二次利用する場合の条件についても決めることができるし、決める必要があります。その際、メタデータ、サムネイル/プレビュー、デジタルコンテンツなどの種類に応じてそれぞれ異なる公開範囲や利用条件を決めてもよいし、デジタルコンテンツが持つテーマや品質などによって公開範囲や利用条件を区別することも考えられます。
また、デジタルアーカイブのデータを使ってコンテンツを作成した活用者も、同様に、公開範囲や利用条件を決める必要があります。
公開範囲としては、次の選択肢が考えられます。
① 自らの業務用限り
② 自らの施設内でのサービス利用
③ 自らのウェブサイトでの発信
④ 同じ分野・地域のコミュニティネットワーク内での共有
⑤ ジャパンサーチ等の異なる分野・地域ネットワーク上の検索結果の表示
なお、利用条件については、第三者に二次利用を可能とする場合(自ら発信する③に限らず④や⑤を経由して公開する場合も含む。)があります(「4 データの二次利用条件を明示し、可能な限りオープン化する」参照)。
①は、コンテンツ管理のための対応です。②では、来館利用者への案内、展示会での解説、デジタルデバイスを用いた施設内での体験学習など、自らのサービスの充実に活用できます。
③では、遠隔地にいる非来館者に対して、自らの存在を確認してもらうことができる上、デジタルコンテンツを提供する場合は、所蔵コレクションの魅力を示すことで存在価値を高めることができます。 ④では、同じ分野・地域のネットワーク内で、データを共有することで、充実したサービスの展開が期待できます。例えば、同じテーマの展示会やイベントを複数の施設で同時に開催するなどの取組が考えられます。⑤は、③又は④による提供方法の拡充につながるもので、ジャパンサーチ等での異なる分野・地域のネットワーク上で横断検索を可能とし、コンテンツへのアクセスや表示を行うことを指します。
公開に当たっては、二次利用条件についても併せて検討することが重要です(「4 データの二次利用条件を明示し、可能な限りオープン化する」参照)。
(4) デジタルコンテンツの公開方法
(サムネイル/プレビュー)
サムネイル/プレビューについては、コンテンツの理解を助けるために検索結果で提供される仕組みを備えていることが求められます。コンテンツへの有効なナビゲーションとなるだけでなく、高精細画像をメタデータとともに大量にリアルタイムで提供する必要がなくなるため、システム面でのコスト負担が軽減されます。
サムネイル/プレビューからは、デジタルコンテンツへのリンクがあるとなおよいでしょう。サムネイル/プレビューの共有・発信は、デジタルアーカイブを利用する側にとってもメリットが大きいと考えます。検索結果での表示のほか、サムネイル/プレビューがメタデータとセットで自由な二次利用が可能になると、活用の幅が一層広がることが期待されます。そのためには、サムネイル/プレビューのURLがメタデータ項目の一部として自動的に提供される機能があるシステムの導入が望まれます。
(デジタルコンテンツ)
個別のデジタルコンテンツごとに詳細表示ページを作成し、メタデータとともに公開することが望まれます。また、詳細表示ページは、永続的な固定URLを付与するなど、長期的なアクセスが保証されていることが重要です。デジタルデータへの長期アクセス保証については、「5 持続可能性を担保した方法でデータを管理する」(7)アクセス保証を参照してください。
デジタルコンテンツの公開に当たっては、コンテンツの一層の活用促進のため、広く標準的に使われているフォーマットに対応した形式で提供することが望ましいです。詳細は、「6 相互運用性を確保した方法でデータを提供する」(1)デジタルコンテンツの公開フォーマットを参照してください。
このほか、デジタルコンテンツの活用のためには、SNSに簡単に投稿できる仕組みがあるとよいでしょう。具体的には、画像添付ボタンや、投稿用の容量の少ない画像の提供機能などが考えられます。また、デジタルコンテンツの利活用促進に当たっては、二次利用条件を整備しコンテンツとともに公開すること、また、その利用条件はできる限りオープンな条件であることが望まれます。オープン化の取組については「4 データの二次利用条件を明示し、可能な限りオープン化する」(4)デジタルコンテンツのオープン化・二次利用条件の整備 で詳しくまとめています。
4 データの二次利用条件を明示し、可能な限りオープン化する
【ねらい】
メタデータ、サムネイル/プレビュー及びデジタルコンテンツの二次利用条件の種類と、活用に望ましいオープンな利用条件の設定を紹介します。
【対象】
アーカイブ機関・つなぎ役 ★★★
活用者・拡げ役 ★★★
【基本的な考え方】
○二次利用条件の設定とは?
デジタルアーカイブに含まれるデータについて、第三者がどのように利用できるかを示す条件を、二次利用条件といいます。二次利用条件の設定は、メタデータ、サムネイル/プレビュー及びデジタルコンテンツといったデジタルアーカイブの流通単位ごとに決めることを想定しています。アーカイブ機関が作成するデジタルコンテンツだけでなく、活用者がデジタルアーカイブのデータを使って作成するコンテンツも二次利用条件を設定することが望まれます。
〇オープン化とは?
営利・非営利を問わず、著作権のクレジット(原作者の氏名、タイトルなど)を表示するだけで改変、公開等を自由に行えるなど、誰でも自由な利用ができる権利表記が設定されている状態をいいます。具体的には、CC0、PDM、CC BY、CC BY-SA(表4参照)の利用条件をオープンな権利表記ということができます。これらを二次利用条件に設定することで、デジタルアーカイブの活用が進むことにつながります。
【望ましい状態】
メタデータ、サムネイル/プレビュー及びデジタルコンテンツがウェブ上に公開され、誰でも自由に利用できること。また、自由に利用できない場合であっても、利用条件がウェブ上で明示されていること。また、日本語だけでなく英語での利用条件に関する表示があること。
【留意点】
二次利用条件の設定に当たっては、著作権の権利のほか、肖像権やプライバシー権等、著作権以外の権利の扱いに留意する必要があります。
CCOやPDMといった権利表記を選択した場合であっても、活用者に対して、出典等の情報の記載をお願いすることは可能ですので、できる限りコンテンツの活用促進のため、オープンな権利表記を設定することが望まれます。
【関連事項】
「3 デジタルコンテンツの作成・公開」(4)デジタルコンテンツの公開方法
(1) 利用条件の表示
(デジタルコンテンツの二次利用条件の設定に当たって)
二次利用条件付与の検討においては、まず当該データの権利の状態を確認する必要があります。アーカイブ機関が所蔵作品等をデジタル化した場合は、元の作品・原資料の著作権に加えて、撮影者やデータ作成者の著作権も発生しうる可能性があります。元の作品・原資料の著作権の保護期間が満了しており、データ作成者がアーカイブ機関自身であるなど、アーカイブ機関のみが権利を有するデータの場合は、アーカイブ機関がその二次利用条件を設定することができます。第三者が権利を部分的にせよ有し、かつ包括的な許諾などがなされていない場合は、どのような条件の利用とするかについては、当該第三者と協議し、合意と許諾を得る必要があります。また、2次元の作品・原資料を正面から撮影した場合や、3 次元の作品・原資料であっても三面図的に記録した場合は、新たな創作的表現がないとして、撮影者やデータ作成者の著作権が認められない場合も多いと考えられます。ただし、特定の角度、照明等により撮影者の芸術表現として撮影された写真等、撮影者の創作的表現が認められる場合には、その創作的表現により、撮影者の著作権が発生する場合があることに注意が必要です。
活用者の場合は、活用したデジタルアーカイブのデータの二次利用条件を確認した上で、自らが編集するなどして創作に関与した部分について、利用条件を決定する必要があります。
(二次利用条件の表示方法)
二次利用条件の表示においては、ウェブページに利用条件のマークを示して目で見て分かるようにするだけでなく、機械可読形式でも提供できるようにする必要があります。特に、コンテンツの二次利用条件の表示においては、コンテンツのデータファイル自体に記述するだけでなく、メタデータの項目にも二次利用条件の情報を保持することが望まれます。このため、メタデータに、コンテンツごとの二次利用条件を追加する必要があります。各コンテンツに二次利用条件を追加するのが困難な場合は、一括して処理できるよう、権利等の状態が同じコンテンツのメタデータをまとめて管理しておく方法も考えられます。
コンテンツのページには、二次利用条件や権利の内容に関する情報を提供するページへのリンクがあるとよいでしょう。また、コンテンツを紹介するページにおける説明は、日本語のみでなく、多言語(英語等)で用意されていることが望まれます。
(参考:3D データの取扱いについて)
3D スキャナ等で作成した 3D データについては、元の作品・原資料の著作権の有無に注意する必要があります。
著作権がある作品・原資料を元に作成した 3D データについては、3D データの CAD ソフトや 3D プリンターを介して情報を物に置き換えられる(元の作品・原資料を再生することができる)という特性を踏まえると、当該 3D データには元となる作品・原資料に含まれる著作物の著作権が及ぶことになると考えられます。例えば、立体の著作物を元に作成した 3Dデータは、当該著作物の複製物に該当すると考えられます。また、絵画などの平面の著作物を立体化させて作成した 3D データは、当該著作物の表現上の本質的な特徴が直接感得できるのであれば、当該著作物の二次的著作物に該当すると考えられます。
著作権がない作品・原資料の 3D データについては、事実情報を測定したものに過ぎず新たな著作権保護の対象となりませんが、例えば、3D データ作成の際等に創作的表現を加えた場合には、その創作的表現により、当該 3D データ自体が著作物として保護されることが考えられます。
また、3D データの作成に当たっては、元の作品・原資料の保有者や 3D データ作成者等の関係者間で 3D データの利用に関する契約が締結されている可能性もあるため、二次利用条件の設定に当たっては、そのような契約の有無や条件の詳細についても注意することが必要です。
(2) メタデータのオープン化
(メタデータの望ましい利用条件)
単なる事実や数値を記述しただけのデータであれば、著作物性が認められる余地はきわめて少ないため、著作権保護の対象にはならないと考えられます。また、編集著作物やデータベースの著作物と認められる場合であっても、素材となるデータに著作物性がない場合は、データそのものを抽出的に利用することは著作権法の観点からは制限されないことに留意する必要があります。一方で、著作物性の有無について活用者が逐一厳密に判断することは困難であり、また、著作物性の判断基準は国によっても異なります。誰もがグローバルに確実に自由な利用が可能であることを担保し、国際的なメタデータの流通・活用を進めるために、メタデータに関しては CC0 を採用することが望ましいと考えます。
(3) サムネイル/プレビューのオープン化
(サムネイル/プレビューの望ましい利用条件)
オープンデータ(オープンガバメント)やオープンサイエンスに係る関係府省の施策との一貫性の観点も踏まえ、公的機関のものや公的助成を受けて作成されたサムネイル/プレビューについては、第三者が保有する著作権等の権利が問題とならない限りは、原則として CC0 又は(政府標準利用規約と互換性のある)CC BY を適用することが求められます。第三者の著作権等を根拠に CC0 又は CC BY が設定できない場合には、公的機関は、その制限される理由及び利用条件を明示することが必要と考えます。
著作権保護期間が満了しているなど著作権による制限がないものは、パブリック・ドメイン・マーク(PDM)(用語集参照)などを利用してそのことを明示することが望まれます。元のコンテンツの権利がパブリック・ドメインのサムネイル/プレビューは、著作権の状態を確認しつつ、可能な限り、パブリック・ドメイン・マーク(PDM)などを表示し、自由に利用可能であることを明示することが望まれます。
サムネイル/プレビューの元のコンテンツが著作権保護期間内の資料・作品である場合は、権利の問題が発生します。デジタルアーカイブの検索結果としてサムネイル画像等をインターネット送信することは、現行の著作権法では、著作権者の許諾が必要です。許諾を得るに当たっては、所蔵館での利用に限った内容とせず、連携先のデジタルアーカイブや外部のポータルサイトでの検索結果としても表示できるよう、さらには、活用者がダウンロードして利用できるよう、CC0又はCC BY等のオープンな条件での提供を可能とする内容の許諾を得るようにすることが望まれます。
なお、著作権法の権利制限規定により、美術館等に展示されている作品(著作物)を解説・紹介するために作品の写真を小冊子に掲載すること、展示作品の解説・紹介用資料をデジタル化して、施設内においてタブレット端末等で閲覧可能にすること、また、展示作品に関する情報を一般公衆に提供するため、展示作品のサムネイル画像のインターネット公開を許諾なく行うことは可能となっています(Ⅰの「2「デジタルアーカイブ活動」を考える」(3)「デジタルアーカイブを取り巻く著作権法の改正状況」参照)。
(4) デジタルコンテンツのオープン化・二次利用条件の整備
(著作権保護対象のコンテンツの取扱いについて)
デジタルアーカイブの活用促進のためにはオリジナルの作品・資料等及びデジタルコンテンツの権利の状態を確認した上で(「(1)利用条件の表示」参照)、著作権者の許諾の下、可能な場合には、オープンな利用条件の設定をすることが望まれます。
(著作権保護対象外コンテンツの取扱いについて)
著作権の保護期間が満了しているコンテンツを撮影したもので、かつ写真撮影者にも著作権が発生しない画像データや、創作的表現のないメタデータなど、著作権法による保護対象とならないデータについては、原則として権利の問題は発生せず、営利・非営利を問わず誰でも自由に利用可能とされています。ただし、著作権法第60条が定める著作者の死後の人格的利益等への配慮が必要な場合があることにも留意が必要です。このように、第三者が保有する著作権等の権利が問題とならないデータであり、かつ、公的機関のものや公的助成を受けて作成されたデータについては、原則としてCC0又は政府標準利用規約(用語集参照)と互換性のあるCC BYを適用することが求められます(表3を参照)。
著作権法による保護の対象とならないデータであっても、そのデータの活用に当たっては、作品や作者への配慮や敬意を示すことが大切です。アーカイブ機関は、データ提供元であるアーカイブ機関やデータ作成者等の貢献について社会的に広く認知してもらうため、利用したデータに関する望ましい表記方法や留意すべき事項等をウェブ上に分かりやすく掲載することが求められます。例えば、活用者に対して、二次利用に際し出典や所蔵館等の表記を正確なかたちで行ってもらうよう、さらには、民族・宗教等に対する文化的配慮に留意してもらうよう促すことでデータの信頼を担保することにつながります。なお、そのような掲載を行う場合は、当該お願いが法的拘束力を持たないものであることを明記することが望まれます。
(PDMとCC0の違いについて)
パブリック・ドメイン(PD)ツールのうち、パブリック・ドメインマーク(PDM)は、著作物の保護期間満了や創作性の不存在などの理由により、当該作品を誰もが自由に利用できることをアーカイブ機関等の第三者が示すツールであり、それ自体に法的な効力はありません。一方でCC0は、当該データに関して適用者が有する権利(商標権・特許権等を除く)を明示的に放棄するツール(ライセンスではない)であり、法的な効力を有します。これは、著作権に基づいて訴訟を起こす権利、逸失利益等が出て損害賠償を求める不法行為に基づき訴訟を起こす権利等も含めて放棄し、著作者人格権など放棄できない権利については行使しないことを約束するといったことなどが含まれます。
特に3次元作品を撮影した写真等の場合、写真撮影者(データ作成者)の創作的表現の有無については、活用者が厳密に判断することは困難であるため、2次元作品の忠実な複製など、データ作成者の創作的表現が存在しないことが相当程度確実である場合等を除いて、CC0によりデータ作成者自身の権利を明確に放棄することが、二次利用促進の観点からは望ましいと考えます。
また、海外のデジタルアーカイブでは、創作性の有無に疑いの生じうるパブリック・ドメインのデジタル複製物に関しては、CC0 が推奨されており、実際、多くのアーカイブ機関では非常に大規模に CC0 の表示を採用する例が増加しています(メトロポリタン美術館、アムステルダム国立美術館、シカゴ美術館など)。
なお、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(用語集参照)や CC0 等を著作権保護期間が満了している所蔵作品等のデジタル化データに適用するに際しては、アーカイブ機関自身が、デジタルアーカイブの対象となる元の作品・原資料の権利者であるなどの誤解を招くことがないよう、あくまでライセンスや権利放棄の対象となる権利は、当該デジタルコンテンツに関して、アーカイブ機関自身が有しうる著作権等の権利(例えば、作品を創作的に撮影した場合に生じうる著作権等)であることを分かりやすく示すことが望まれます。
(コミュニティへの働きかけ)
自らが所属する地域・分野のコミュニティにおいて、デジタルコンテンツのオープン化を推進することは非常に重要な取組といえます。例えば、地域のデジタルアーカイブを構築し、域内のデジタルコンテンツを集約する際に、利用条件が付与されていないコンテンツに利用条件を設定したり、著作権の保護期間が満了したものをCC0やPDMで提供したりするなどの取組が考えられます。
また、市民協働でデジタルアーカイブを構築する際には、コンテンツの募集段階であらかじめ利用に係る許諾を取っておくことも重要です。
(5) 著作権以外の諸権利への配慮
(肖像権等への配慮)
アーカイブ機関で二次利用条件を検討するに当たっては、肖像権、パブリシティ権、プライバシー権等の諸権利にも留意が必要です。肖像権は、法律上明文化された権利ではなく、判例で認められた権利であるため、明確な基準を見出すことが困難です。実際の判例でも6つの要素を総合考慮し、社会生活上受忍の限度をこえるものかどうかで適法性を判断しています。デジタルアーカイブ機関の関係者や利活用者が、その都度、総合考慮を行うことは困難と考えられるところ、デジタルアーカイブ学会において、自主的判断を行なう上での拠り所となるガイドライン(資料1-4標準・ガイドライン集参照)が作成されていますので、参考にするとよいでしょう。
著作権が消滅していたり、関係者が生存しない年代の資料のデジタルアーカイブは、肖像権やプライバシーが問題になることは少ないですが、震災等の写真アーカイブや書籍・雑誌・新聞等のアーカイブ等、比較的新しい資料のデジタルアーカイブを取り扱う場合は、肖像権やプライバシーとの調和を図る必要があると考えます。
なお、肖像権のほかにも、パブリシティ権、資料に含まれる名簿等の情報の取扱いをはじめとする個人情報保護法制への対応等の課題も想定されますので、必要に応じて自らの組織での扱いを検討することが望まれます。
5 持続可能性を担保した方法でデータを管理する
【ねらい】
メタデータやデジタルコンテンツなどのデジタルアーカイブのデータの管理について、長期的な保存とアクセスを可能とする方法を紹介します。
【対象】
アーカイブ機関・つなぎ役 ★★★
活用者・拡げ役 ★★☆
【基本的な考え方】
○デジタルデータとは?
デジタルアーカイブに含まれるデジタルで表現されるもの全てのデータのことであり、アナログ媒体の原資料をデジタル化したデータ及び収集したボーンデジタルのデータといったデジタルコンテンツのほか、コンテンツに関するメタデータも含みます。
〇デジタルデータの管理とは?
アーカイブ機関等において、必要なときにデジタルコンテンツにアクセスできるよう、また、デジタルコンテンツの長期的な保存とアクセスを可能とするために、メタデータの整備も含め、デジタルデータを適切な方法と形式で管理する必要があります。
〇デジタルデータの長期保存とは?
ここでいう長期保存とは、アーカイブ機関がそれぞれの利用目的に応じた方法で、長期にわたって利用可能性を保つことをいいます。つまり、メタデータの整備も含め、デジタルデータが適切に管理されており、必要なときにデジタルコンテンツにアクセスでき、そのデジタルコンテンツが利用可能な状態をいいます。長期とは、デジタルデータが必要とされる限りできるだけ長い期間を意味します。その具体的な期間は組織の使命によって異なりますが、次世代に責任をもってコンテンツを伝えるために、最低でも30年以上を想定することがよいでしょう。
【望ましい状態】
デジタルコンテンツの来歴情報等が整備されているほか、デジタルコンテンツが必要に応じて簡便に抽出できるメタデータが整備されていること。また、広く普及した形式でデータを保持し、マスターデータの保存において冗長性を確保していること。デジタルコンテンツに一意の識別子を付与し、それらを長期的なアクセス保証を意識した形式でウェブに公開していること。
【留意点】
デジタルデータの長期的な保存とアクセスの保証の取組においては、必ずしも自らの組織だけで実施する必要はありません。同じ分野・地域コミュニティとのつなぎ役を介して、取り組むことも考えられます。
【関連事項】
「2 メタデータを整備し、公開する」
「3 デジタルコンテンツを作成し、公開する」
(1) データ管理(コンテンツ管理)
(データ管理のための取組)
あらかじめ立てたデータの管理計画に基づき、データの管理を行うほか、適切なマイグレーションとバックアップ等のデジタルデータの長期保存のための作業を定期的に行うことも必要かつ重要な取組です。
また、公開用の提供データと保存用データが異なる場合、その対応関係が把握できるように管理する必要があります。その際、どの保存メディアにどのデータがあるかについても留意する必要があります。公開用データの作成過程で生成された中間生成物についても、データ管理計画の中で取扱いを定めておくとよいでしょう。
また、デジタルデータの管理作業においては、特定の権限を持つものだけが作業できるようにすることも必要です。
(関連情報の整理)
デジタルコンテンツが作成された来歴情報・権利情報等(内容、時期、目的、作成者、担当者、権利者、利用条件等)について、その受入れ又は作成時に十分な記録を行い、その記録をデジタルコンテンツとともに残しておくことが必要です。特に、デジタルコンテンツ作成時の仕様書等のドキュメントを保管しておくとよいでしょう。デジタルコンテンツの受入れ及び作成に係る記録に加え、必要に応じて、画像の他機関への提供など、デジタルコンテンツの提供に係る記録も残しておきましょう。
また、画像・映像ファイル自体が持つ撮影時に自動的に記録された撮影日時・機器・解像度などの情報を削除しないよう注意しましょう。削除する場合は、メタデータの一部として情報を保存する必要があります。これらのデータは、画像・映像データの表示のために再生機器を調整する際にも必要な情報です。
(2) データ管理(メタデータ整備)
(メタデータの管理)
あらかじめ立てたデータの管理計画に基づき、データ管理の作業を行うに当たっては、デジタルコンテンツを管理者の必要に応じて簡便に更新・抽出できるようにメタデータを整備しておくことが必要です。個別の資料ごとにメタデータを整備することが難しい場合は、同様の資料をまとめていくつかのデータセットとし、そのセットごとにデジタルデータの来歴が分かる情報として、作成内容、目的、時期、作成者、作成日/更新日、デジタルコンテンツのマスターデータを改変・差替え等を行った場合はその履歴情報等を管理する方法が考えられます。
また、メタデータ項目については、それぞれの項目の意味が後から見ても把握できるようドキュメントを整備し、維持することが重要です。
(デジタルコンテンツのためのメタデータ整備)
デジタルコンテンツを発見するためのメタデータ整備においては、コンテンツの内容等のメタデータと一緒にサムネイル画像の URL やデジタルコンテンツの URL の抽出も可能としておくことが望まれます。また、デジタルコンテンツを改変した場合は、その改変内容を把握できるようメタデータの情報を更新する必要があります。
(管理用識別子の付与)
長期にわたり安定的にデータを保存・管理するため、個別のコンテンツを判別し認識できる識別子(重複しない一意の管理番号)を付与すること。(識別子の付与方法に関しては、(6)識別子の付与 参照)
(3) データ保存(メタデータ)
(マスターデータの保存対策)
マスターとして長期に保存するべきデジタルデータ(マスターデータ)に対しては、災害や大規模なシステム障害等への対応のため、データの複製、データ保存場所の分散等により万が一に備えた保存の体制を整える必要があります。マスターデータの複製物の保存場所は、分散化し、災害発生リスクの異なる複数の遠隔地への配置を考慮するとよいでしょう。
(4) 保存用データ形式
(マスターデータのデータ形式)
マスターデータについて、長期的な利用可能性を考慮し、特定製品等に依存せず、仕様等が公開され、かつ広く普及している(国際標準等で定められた)データ形式(フォーマット)を採用することが考えられます。
マスターデータについて、上記に基づくデータ形式を採用するに当たっては、同じ組織内では種類を制限し、できる限り同じデータ形式を用いるようにすることが望ましいですが、画像、動画、音声などコンテンツの種類によってそれぞれに対応したデータ形式を採用することが考えられます。
マスターデータのデータ形式は、オリジナルのデジタルコンテンツをより正確に再現しやすくするため、可逆圧縮方式の採用や、カラープロファイルの埋め込みが可能な形式の採用を検討することが望まれます。
(メディアに応じた保存対策)
光ディスク、LTO(Linear Tape-Open:長期保存用の大容量の磁気テープ) 、HDD などの保存するメディアの特性に応じて、メディアの寿命や記録・再生装置の互換性等も踏まえ、定期的に新しいメディアへの移行を適切に行う必要があります。特に HDD の場合は、複数台の複製物を用意し、4~5年置きに移行することが必要です。
(アーカイブシステムにおける保存対策)
デジタルアーカイブは、デジタルデータの管理、検索、閲覧等を可能とするシステム(以下「アーカイブシステム」という。)によって運用されています。アーカイブシステムの運用・管理と、デジタルデータの長期保存とは区別して対策を講じ、システムにあるデジタルデータはいつでも抽出できるようにし、システムから切り離しても再現できる状態を担保できるようにしておきます。
長期的な保存を考えたアーカイブの仕組みに関する国際標準であり、欧米で各種ガイドライン等が整備されている OAIS 参照モデル(用語集参照)に留意した取組を行うことが望まれます。
(5) システム安定性
(サービスレベルに応じた運用)
アーカイブ機関ごとに自らのデジタルアーカイブのサービス内容及び品質(サービスレベル)を検討し、サービスレベルに応じた機密性、可用性及び安全性の確保に留意し、デジタルデータの公開及び管理システムを確保・運用することが必要です。
管理システムでは、長期間のシステム運用性の視点から、デジタルデータの保存領域の拡張性及び移行可能性を確保することは重要な取組です。また、組織のセキュリティポリシーを遵守することも必要です。
つなぎ役に相当するアーカイブ機関の場合は、コミュニティに属するアーカイブ機関が自らデータの整備・公開ができるよう、安定的な統合プラットフォームを構築・運用することも望まれます。
(持続可能とする運用コストの確保)
デジタルアーカイブシステムを施設内に設置して維持する場合、ストレージ装置や各種デバイス、システム自体は数年ごとのリプレースが必須です。そのための経費、さらにメンテナンスに従事する人員の確保も含め、運用面のコストをデジタルアーカイブ構築時に見込んでおくことが求められます。
(ベンダーロックインの防止)
特定の業者によるシステムに依存する、「ベンダーロックイン」にならないよう留意する必要があります。システムを担当する業者を変更できずコストが上がり、業者がシステム提供を終えたことでデジタルアーカイブが維持できなくなるなどの弊害があるからです。
(外部サービスの利用時の留意点)
長期保存に係る外部サービスを利用する場合は、利用規約を精査し、組織のセキュリティポリシー及びデジタルデータの権利状態に抵触しないことを確認する必要があります。
外部のクラウドストレージを利用する場合は、利用規約において、組織のデータの位置付けやセキュリティポリシーに照らして、デジタルデータの保持に関する保証内容に問題がないことを確認する必要があります。また、ISO 等の認証を得ているかどうかも確認しましょう。
(6) 識別子の付与
(識別子の付与方法)
識別子の付与には、①組織内で決めたルールに基づき手作業で一意となる(重複しない)管理番号を付与する方法、②機械的に管理番号を付与する方法があります。手作業で管理番号を付与する場合は、管理番号が重複しないように運用することが求められます。識別子(管理番号)は数字でもそれ以外でもよいですが、国際的な流通を意識する場合、漢字等は使わない方がよいでしょう。
表形式により手作業でメタデータを整備している場合は、第一列目に、同一ファイル内で重複しない管理番号をつけるなどするとよいでしょう。ファイル内で一意であれば、「ファイル名」+「管理番号」を機関における識別子として利用できます。複数のファイルを複数のフォルダごとに管理している場合には、それらを「/(スラッシュ)」でつないで「フォルダ名/ファイル名/管理番号」などとすることが考えられます。
機械的に管理番号を付与する場合は、一意に特定するための管理番号を付与するルールとなるよう、プログラムなどを調節する必要があります。データベースシステムを用いてメタデータ等を整備している場合は、一意の管理番号が自動で付与されるように設定するとよいでしょう。
手動にせよ機械的な付与にせよ、一度付与した識別子(管理番号)は、原則として変更しないことが求められます。同じ番号を別のデータに付与するような使い回しをしてはならないし、機械的な付与においては、削除した場合に自動で新たな番号が振り直されることのないよう気をつける必要があります。
なお、メタデータを新規に整備する場合、自館の所蔵品目録や展示会図録等から全作品の一括付与を仮に行う方法なども考えられます。その識別子を用いて自ら保有する作品情報や解説等のデータを整備・公開するなどの活用が可能になると考えます。
(識別子の種類)
識別子の付与は、データを共有する際の相互運用性の担保においても重要な取組です。URI(Uniform Resource Identifier)のほか、デジタルコンテンツの識別子として、国際標準規格である DOI(Digital Object Identifier)(用語集参照)があります。アーカイブ機関が個別のコンテンツごとに URL を指定してアクセス可能なウェブページを提供している場合は、国際的な流通促進を考慮して、DOI を付与することが考えられます。DOI は永続的な識別子であるため、DOIと紐づくURLの維持・管理が必要ですが、URL が変更されても長期アクセスが保証される点にメリットがあります。DOI の付与には、我が国で唯一の DOI 付与機関であるジャパンリンクセンター(JaLC)(用語集参照)の会員になる必要があります。
機関を特定するための識別子としては、国際標準規格である ISIL(Internationalstandard identifier for libraries and related organizations)(用語集参照)があり、我が国では、国立国会図書館が付与・管理を行っています。つなぎ役は、機関コードの管理を行う場合にISIL の活用が考えられます。
(7) アクセスの保証
(固定URLの提供)
ウェブで公開しているデジタルデータへの長期アクセスを保証する取組として、公開しているデジタルコンテンツやメタデータを紹介する詳細表示ページを用意し、永続的な固定URLでアクセスできるようにすることが必要です。また、詳細表示ページに加え、公開しているサムネイル/プレビュー又はデジタルコンテンツのそれぞれについても、永続的な固定URLでアクセスできることが必要です。システムのリプレースやリニューアルにおいても、URLを変更せず固定することが重要で、万一URLを変更する場合はリダイレクト対応が必須となります。
これらの取組は、自らの組織で実現できなくとも、つなぎ役等のポータルを通じて提供することで実現することも考えられます。
なお、ドメインドロップキャッチの被害を避けるため、組織のサブドメインを使うことが望まれます。独自ドメインを使わざるを得ない場合は、定期的にリンク切れの確認を行い、維持に努めるとよいでしょう。
(アクセスを保証するための永続的識別子の付与)
公開データの詳細表示ページ又はデジタルコンテンツに対し、DOI等の永続的識別子を付与するなどして長期アクセス保証を意識して公開することが望まれます。
つなぎ役の場合は、所属するコミュニティに対し、DOI 等のコンテンツへの永続的識別子の付与・普及に努めることも望まれます。
(8) データ移行性の担保
(データ形式の移行性確保)
システム更新や組織の統廃合によってデータが失われないよう、データ移行性を確保するためには、全てのデジタルデータの抽出を容易に可能としておくことが必要です。
また、メタデータも含め、全てのデジタルデータの管理において、データ形式は特定製品等に依存せず、仕様等が公開され、かつ広く普及している(国際標準等で定められた)形式とすることが望まれます。
(包括的な権利処理)
デジタルアーカイブで提供しているデータについて、組織統廃合時のデータ移行や他機関へのデータ譲渡に対応できるよう、包括的な権利処理を行っておくとよいでしょう。例えば、デジタルデータの受入れ時に、著作権の譲渡契約の締結すること、オープンなライセンスを付与しておくこと(これにより権利処理を要せず移行可能性を担保できる)、デジタルアーカイブを運営する組織が、アーカイブの運営が困難になった場合に組織が認めた第三者に対してその組織と同じ条件で利用できることを契約に盛り込むこと等が考えられます。
6 相互運用性を確保した方法でデータを提供する
【ねらい】
メタデータやデジタルコンテンツなどのデジタルアーカイブのデータについて、活用しやすい方法で提供する方法を紹介します。
【対象】
アーカイブ機関・つなぎ役 ★★★
活用者・拡げ役 ★☆☆
【基本的な考え方】
○相互運用性の確保とは?
アーカイブ機関は、自ら作成・保有するデジタルデータを公開するに当たって、様々な機関やシステムにおいて利用しやすい形式で提供することが求められます。例えば、国際標準を意識した共通用語を整備することや、デジタルコンテンツを標準的なデータ形式で提供すること、メタデータの項目を標準的なセットにすること等が考えられます。相互運用性を意識してデータを公開・管理することによって、自らのデジタルデータが様々な用途に広く活用されるようになります。
【望ましい状態】
メタデータ及びコンテンツをダウンロード及び機械的な利用が可能な形式で提供していること。使用する用語の標準化に取り組み、メタデータ及び共通用語を識別可能なかたちで提供していること。また、デジタルコンテンツを標準的なデータ形式と汎用性の高い閲覧環境で提供していること。
【留意点】
APIの提供など独力で対応が困難な取組については、ジャパンサーチなどのプラットフォームや同じ分野・地域の統合ポータル等のつなぎ役との連携・協力によって対応することも考えられます。また活用者にお願いして、LODに対応したAPIを提供してもらうことも考えられます。
【関連事項】
「2 メタデータを整備し、公開する」
「3 デジタルコンテンツを作成し、公開する」
(1) デジタルコンテンツの公開フォーマット
(デジタルコンテンツの公開形式)
相互運用性の確保し、様々な機関での利活用を促進するため、サムネイル/プレビューも含め、デジタルコンテンツを公開する際は、広く標準的に使われており、特定の製品に依存しないフォーマットに対応していることが望まれます。また、システムを導入する際には、その点に留意しておく必要があります。
(2) デジタルコンテンツの閲覧環境
(デジタルコンテンツの提供方法)
異なるデジタルアーカイブ間において、デジタルコンテンツ同士を一緒に利用できるようにする仕組みが用意されていると、コンテンツの活用がより一層促進されます。例えば、画像データの共有の仕組みの一つに、海外の主要なアーカイブ機関が採用している国際的な標準IIIF(International Image Interoperability Framework)(用語集参照)があります。IIIFは、利用する側だけでなく、提供する側にとっても、データへのアクセスを確認できるため、活用状況の把握という点においてメリットが大きいと考えます。パッケージソフトウェア等を選択する際には、IIIF等に対応したものであるかどうか考慮することが望まれます。
(3) ダウンロードによる提供
(メタデータ等のダウンロードによる提供方法)
パッケージソフトウェアの導入や、プラットフォームへの参加が困難な場合、次項((4)APIの提供)に示すような機能を独自に整備することは、一定の費用と、技術的な知識を必要とするため、各アーカイブ機関で対応することは難しい面があります。より簡単にできる方法としては、表形式のデータ(CSV、TSV 等)や画像等のデジタルコンテンツそのものをウェブサイトで公開し、提供することも有用な連携手段になりうると考えます。また、メタデータの場合は、APIを実装せずとも、データをファイルとしてウェブ上の安定した場所に置き、データ取得を可能としておく方法も考えられます。
ただし、こうした形式でのデータの活用や連携においては、分野・地域のコミュニティのつなぎ役や活用者など、データ取得を行う側の機関やサービスで人的・費用的コストがかかるため、取得する相手の状況に留意する必要があります。
なお、連携先で有用となる表形式データとするために最低限求められる条件は、表5「活用できる表形式のデータとは?」を参照してください。
(4) APIの提供
(各種API)
横断検索を実現するための API として、SRU、SRW、OpenSearch、OpenURLなどの仕組みがあります。これらの API は、可能であれば、以下に示すOAI-PMHやLinkedData(用語集参照)に加えて、いくつか用意されているとなおよいでしょう。デジタルアーカイブを利活用する側が様々な方法でメタデータを活用できるよう、複数のメタデータ連携の仕組みが備わっているソフトウェアやプラットフォームを選択することも考えられます。
(OAI-PMH)
OAI-PMH は、機械的にシステム間でメタデータを収集・差分更新する API を実現するために普及している標準です。パッケージソフトウェアを選択したり、システムの導入を行う際には、OAI-PMH に対応したものを採用したり、導入要件として仕様書に記載することで、多くの機関やサービスとの連携が期待できる面があります。
OAI-PMH は、メタデータを収集するためのプロトコルを使用して複数のアーカイブからメタデータを収集し、更に収集した側で加工処理してサービスを提供するものです。条件を細かく設定して一括して大量のデータを取得できること、差分収集ができることがメリットとして挙げられます。一方で、導入にはコストがかかり、技術に関する専門知識も求められることから対応するにはハードルが高い面があります。分野・地域のコミュニティの「つなぎ役」がデータ連携方法として OAI-PMH 方式の APIを採用し、メタデータを収集(ハーベスト)している場合は、参加するアーカイブ機関側の使用するシステムについても、同じ方式に対応していることが望まれる場合があります。
(Linked DataのAPI)
Linked Data(後述「(7)Linked Dataへの対応」を参照)に対応する技術として、SPARQL Endpoint を使った検索ができるAPI の機能を備えていることが望まれます。SPARQL は、RDF(Resource Description Framework)(用語集参照)化して蓄積したデータを検索するもので、検索結果として表又はRDF データが返戻されるものです。デジタルアーカイブの活用者は、構造化されたデータをまとめて検索結果として扱うことができるため、Linked Data での提供に加えて、より活用の幅が広がることになります。
(つなぎ役を通じたAPI提供)
ジャパンサーチなどのプラットフォームや同じ分野・地域の統合ポータル等のつなぎ役との連携・協力によって、結果的に、自らのデータをAPIで提供することができる場合があります。
(5) 共通用語の整備
(辞書・典拠・シソーラスの管理)
情報の交換・共有をより有効なものとするためには、分野のコミュニティ内でよく用いられる標準的な用語を統制するため、辞書・典拠・シソーラスといった管理を行う取組が必要です。例えば、日本美術の作家に関する人名の表記について、複数の表記方法をまとめるといった作業があります。
また、用語の統制に加えて、同じ分野でのメタデータフォーマットの標準化が行われることも求められます。これらの作業は、分野や地域のコミュニティにおいて、つなぎ役が中心となって、分野横断的なメタデータ要素と各分野固有のメタデータ要素を整理し、連携するために共有するべき要素を明確化することが望まれます。こうしたメタデータの標準化や用語の管理は、活用するために必要なだけでなく、それぞれのアーカイブ機関のメタデータ整備に役立ち、業務の効率化につながるものでもあります。
(6) URIの提供
(メタデータ等のURIによる提供)
アクセスを保証しデータの相互運用性を担保するため、URI(Uniform Resource Identifier)(用語集参照)を公開用識別子としてメタデータに付与し、提供することが望まれます。URIの付与においては、既存の管理番号などを用いて一括生成するのが合理的な場合が多いと考えます。特に 「6 相互運用性を確保した方法でデータを提供する」で記載したメタデータの管理用識別子がURIに含まれるようなかたちで設定すると、URIと管理用識別子の対応関係が容易に判別できます。
メタデータをファイルで提供する場合のファイル形式は、CSV、TSV、JSON、XML等機械可読性の高いフォーマットを採用することが必要です。また、CSVやTSV等、表形式テキストの場合は、機械可読性を担保するため、表5を参照して作業を行いましょう。
より効果的な情報の関連付けのためには、分野のコミュニティ内で当該分野に特化した専門的な人名・地名を示す情報を集約させてURI を付与し、Wikidata、DBpediaなどに識別リンクを提供するなどしてURIを増やして活用しやすい環境を整備することも考えられます。
(7) Linked Dataへの対応
(Linked Data)
Linked Dataは、ウェブ上で多様な種類のデータを結び付けて共有するための技術です。アーカイブ機関が連携するためのパッケージソフトウェアを選択したり、仕様書を書いたりする際には、自らのデータをより活用してもらうため、Linked Dataに対応したものを選択することが望まれます。今後、国や分野・地域コミュニティごとのプラットフォームを整備する際にも、Linked Dataへの対応は重要な位置を占めるものとなるでしょう。
Linked Dataは、対象の識別子として与えた一つのURIをリンク先として要求すると、その対象についてのメタデータを返戻してくれる仕組みです。例えば、あるアーカイブ機関の所蔵作品に URIが付与され、そこからメタデータを取得できれば、そのメタデータの中から作者の情報を抽出し、別の機関が提供する当該作者に関するデータをリンクさせることで、より詳細なデータを取り込んで活用したり、当該作者と知人関係にある人物のリストを作成したり、さらには、所蔵作品に関する複数の言語で出版されている翻訳物のリストや関連テーマの作品リストを作成できます。メタデータのフォーマットやデータ構造の異同にかかわらず、自らが発信するデータと他機関の関連するデータとを結び付けることで様々な活用が可能になるメリットがあります。
Linked Dataに対応するためには、アーカイブ機関は、前述のURIによる識別だけでなくメタデータを機械的に取得できるようにする必要があります。このため、URIを簡便に付与できる機能に加え、そのURIに対して何らかのアクセス機能があるパッケージを選択するか、又は仕様書にこれらの機能の対応を記載することが望まれます。
7 デジタルアーカイブを日常的に活用し、活動を拡げる
【ねらい】
デジタルアーカイブを活用する人や、活用を支援・推進する人にとっての活動のヒントや留意すべき点を紹介します。
【対象】
アーカイブ機関・つなぎ役 ★★☆
活用者・拡げ役 ★★★
【基本的な考え方】
○ 活用に当たっての原則
アーカイブのデータを利活用するに当たっては、その分野のコンテンツへの理解に努め、できる限り、コンテンツの価値を更に高め、コンテンツの提供者にとってもメリットにつながるかたちで活用することが求められます。
〇日常的な活用
デジタルアーカイブの日常的な活用は、新たな知の創造や発見の第一歩といえます。デジタルアーカイブを使って、身近にある何かを調べたり、創作活動のヒントを探したりするなど、気軽にデジタルアーカイブの楽しさや魅力を体験できる機会の創出を図ります。
○キュレーション活動とは
コンテンツを使ったキュレーション活動とは、コンテンツを特定のテーマに沿って収集、選別、整理することによって、そのコンテンツをより広くかつ深く理解してもらうために行う活動を指します。
キュレーション活動によって、誰もが分野横断的に複数の情報を結び付け、自分の発見や考えを表現することができます。さらに、キュレーション活動は、異なる分野・地域のコンテンツを結び付けるなど、新たなコミュニケーションを生み出す共通知識基盤と地域・分野を越えた人的ネットワークの形成に寄与するものと期待されます。また、キュレーション活動を通じて形成された共通知識基盤や人的ネットワークの下で、コンテンツを長期にわたって適切に保存・管理していくことにもつながります。
【望ましい状態】
提供されているデジタルアーカイブの特徴を理解し、二次利用条件等を確認した上で、日々の業務の中で、コンテンツを使ったキュレーション活動・創作活動・学びや遊びを実施していること。また、提供されているメタデータに付加情報をつけるなど、よりメタデータを豊かにして価値を高めたかたちでその流通を促進させていること。こうしたデジタルアーカイブの活用を通じて、新たなコミュニティが形成されていくこと。
【留意点】
活用に当たっては、著作権を含む諸権利に十分に留意する必要があることに加え、データ提供機関への配慮も必要です。二次利用条件等により自由な利用が可能である場合にも、出典や所蔵館などの情報を明示することが望まれます。
【関連事項】
提供されているデジタルアーカイブを活用して新たに作成したコンテンツ等のデータを提供するに当たっては、活用者も「アーカイブ機関」と同様、これまで述べてきた、「2 メタデータを整備し、公開する」から「6 相互運用性を確保した方法でデータを提供する」までの各活動を自己点検することが求められます。
(1) 活用に当たっての確認事項
アーカイブ機関が広く提供しているデータに関し、活用者は、そのデータ提供者が示す二次利用の条件等を踏まえた適切な活用が求められます。
(ライセンス等における留意点)
著作権の保護対象であるデジタルアーカイブのデータ活用に当たっては、適用されているライセンスや利用条件をよく確認し、順守しなければなりません。主要なライセンスについては、表4「二次利用条件表示一覧」を参照してください。
PDMなど著作権保護期間が満了していることが明示されているデータや、完全に権利が放棄されたデータであることを示すCC0が適用されたデータであったとしても、著作者人格権やプライバシー権等への配慮に加え、データ提供者や作成者等の貢献を社会的に認知してもらうことへの配慮、データの信頼性の担保といったことにも留意することが必要です。具体的には、可能な限り、作者名等の出典に加え、提供元であるデータ提供者等のクレジットや、元データのURIを示すことが望まれます。
また、ライセンスによって自由利用が明示的に認められている場合であっても、作品の中に写り込んだ第三者の肖像権やプライバシー権等については、別途確認が必要な場合があることに留意する必要があります。
(データ提供者への還元のために)
活用者の成果は、データの提供者であるアーカイブ機関やその分野・地域のコミュニティのつなぎ役を経由するなどして情報がフィードバックされるよう、意識して活用に取り組む必要があります。これにより、充実したデータがより適切なかたちで流通することになります。
活用者は、データをオープンに提供している機関のため、どのような活用がなされたか把握できるよう、著作権保護期間が満了しているデータや、著作権の保護対象にならないデータ又はCC0が適用されているデータを利用する場合であっても、可能な範囲で出典や所蔵館などの情報を明示する、リンクを貼るといった対応が望まれます。
また、データ提供機関に対して、どのように活用したかをフィードバックすることも重要な活動です。これにより、データ提供機関がオープンな利用条件による提供を促進させることが期待されます。
なお、利用したデータの著作権保護期間が満了している場合は、それを利用して提供するデータについても、PDMなどのマークをつけてそれが分かるように明示することが望まれます(「4 データの二次利用条件を明示し、可能な限りオープン化する」参照)。
(2) デジタルアーカイブの身近な利用
(学校や職場での利用)
デジタルアーカイブは、ひとが遊び、学び、考え、議論する時に、日常的に利用できる共通の知識基盤でもあります。
例えば、私たちが身近にあるものを調べるとき、学校や職場で発表・報告資料を作成するとき、創作活動などで素材やヒントを探したいとき、何かをデザインするときに参照するなど、様々な場面でデジタルアーカイブを利用することが考えられます。
(創作支援)
アニメーション、漫画、小説、映画といった作品を創作する際に、デジタルアーカイブを活用して、舞台や人物の設定や時代背景等の参考にすることが考えられます。デジタルアーカイブのコンテンツやメタデータを参考にしてもらうことで、確かな情報源に基づく創作活動が容易になります。また、創作を通じて、コンテンツの所蔵元の広報にもつながるなど、アーカイブ機関と活用者・市民との間での利活用の好循環と活性化にもつながります。
(ビジネス利用)
デジタルアーカイブは、商品企画や商品デザイン、地域観光の振興、メタバース空間の制作等、ビジネスにつながる様々な用途で活用が進められています。こうした取組から新たに作成されたコンテンツがアーカイブに加わることで、利用と創作の好循環が生み出されます。
(3) コンテンツを使ったキュレーション活動
(コンテンツを使った広報活動)
デジタルコンテンツのキュレーション(コンテンツを特定のテーマに沿って収集、選別、整理すること)には、様々な活動が含まれます。例えば、デジタルコンテンツを使った電子展覧会がイメージしやすいかもしれません。しかし、そういった手間のかかる取組でなくても、まずは、自らのウェブサイトやSNS等で、積極的にデジタルコンテンツを使った発信を行っていくなどの取組が考えられます。
広報活動における素材として使用し、それを通じて報道機関や出版業界などのメディアが情報発信の素材として活用することにつながれば、一層、そのコンテンツは広く知られることになります。
また、デジタルコンテンツを広報に活用するに当たっては、自らのデジタルアーカイブだけでなく、他機関、さらには異なる分野・地域のコンテンツと結び付けて案内することで、よりコンテンツの面白さを理解してもらうことが可能になるでしょう。
(電子展覧会の企画・公開)
デジタルコンテンツを使った電子展覧会に関しては、フィジカルな展示とバーチャルな展示の融合、又はバーチャルな展示におけるフィジカルな展示の再利用など、博物館・美術館、文書館、図書館等のキュレーション活動で新たな取組を実践することが考えられます。なお、ジャパンサーチには、連携コンテンツを使った電子展覧会を作成できる機能として、マイギャラリー機能があり、誰でも登録なしで利用できます。また、連携機関であれば、キュレーション機能として画像をIIIF変換する機能もあり、加えて、作成したギャラリーをジャパンサーチで公開することができます。
(学校教育、生涯教育・社会教育等での活動)
学校の授業やカルチャースクールなど学びの場で、デジタルアーカイブを活用して、生徒・学生、参加者にコンテンツのキュレーション活動を体験してもらうことで、様々なコンテンツの楽しさや魅力を味わうことが可能となります。また、発表等により、各自の成果を共有することで、より深い体験につながります。
(4) イベント等への貢献
(イベント等への参加)
自らイベントを企画・実施することが難しい状況であったとしても、まずは、デジタルコンテンツのキュレーション活動を体験できるイベント等があった場合に、それに積極的に参加することだけでも、活用者として貢献することになります。また、参加することで、実際に自らがイベントを実施する立場になった場合の参考になることもあるでしょう。
(イベント等の企画・実施)
提供されている様々なデジタルコンテンツの活用のために、メタデータやAPIの活用を促進するようなイベントや、コンテンツのキュレーション活動を体験するような活動など、様々な活動があります。
また、こうしたアウトリーチプログラムやハッカソン・アイデアソン等のイベントを通じて、遊びながら、学びながら情報リテラシーが向上するような、デジタルアーカイブの活用法を提案することも考えられます。また、おはなし会や文化祭など、これまでフィジカルな取組が中心だったイベント等でデジタルアーカイブとのコラボレーションを実践することなども考えられます。
こうした活用者の活動を支援するため、つなぎ役やアーカイブ機関は、提供するメタデータに関する解説や、応用の際のヒントになる情報など、データの活用につながる情報を積極的に発信することが求められます。
(5) 付加価値情報の追加、Linked Dataの利用
(新たな情報の追加)
活用者は、デジタルアーカイブで提供されている様々なデータに対して、付加価値となる情報を追加して利用することが求められます。これにより、個々のデジタルアーカイブのデータが充実したものとなるため、活用者による情報の追加は、データ提供者にとってもコンテンツに対する新たな価値付けによるメリットが生まれ、オープンに発信するインセンティブにもつながります。
付加する情報には、活用者自らが知っている情報を追加することもあれば、海外発信の強化を助けるための、多言語化(英語等)やローマ字表記の追加といったことも考えられます。また、APIと自動翻訳を用いた、多言語による検索サービスの提供なども考えられます。
さらに、Linked Dataによって活用領域にあるウェブ上の様々なデータをつなぐことで、異なる機関が提供するデータを関連付けることも考えられます。例えば、南極に関する映画や出版物、その出版物を所蔵している図書館といったデータをつなぐことで、南極をキーとして様々な情報を追加していくことができます。データを提供するアーカイブ機関がURIを付与していない場合でも、安定したURLさえ提供できていれば、活用者がウェブ上にあるデータを使ってLinked Data化を進めることが可能です。
ポータルやアプリの作成においては、活用者が自ら知っている情報や既に活用領域にあるデータをつなげることだけでなく、そのポータルやアプリを利用する人々が、知っている情報を自由に追加できるような、利用者参加型の仕組みをサイト等に用意する方法も考えられます。
なお、活用者が新たな情報を追加した際には、元のデータに何の情報を追加したか分かるようなかたちで、活用したデータを提供することが求められます。また、追加したデータについても、オープンな(自由な二次利用が可能な)条件で公開することで、さらなる情報の追加が連鎖していくことが期待されます。
(情報をつなげるために必要な作業)
活用者は、多種多様なデータの中から、関連する情報をつなげてメタデータをより豊かにしていくことが望まれます。その際、オープンな利用が可能なメタデータについて、活用者は、
・地理情報
・時間情報
・人物情報
などの分野を横断して共通する情報を用いて、異なるアーカイブ機関が提供するメタデータを関連付けていくことが考えられます。これにより、機関・分野を超えたコンテンツ間の関係性を創りだすことができ、地理情報や時間情報は、地図や年表などに活用できます。例えば、地図上に文化財のデジタルコンテンツや関連するデジタル化資料を示すことによって、観光客に役立つアプリや、小説や漫画に出てくるスポットの名称と作品名を示すアプリも作成できます。また、時間順に作成された美術作品を並べてそれぞれの所蔵館を示すといった仕組みも考えられます。
データを関連付ける際、アーカイブ機関が提供するメタデータの中に、他から提供されている人物や場所を示したURI(「6相互運用性を確保した方法でデータを提供する(6)URIの提供)のリンクを追加したり、Linked Data(「6相互運用性を確保した方法でデータを提供する」(7)Linked Dataへの対応参照)として複数のアーカイブ機関から提供されているデータセットを組み合わせて新しいデータセットを作ったりといった取組が考えられます。例えば、人物や地名の情報を追加する場合、国立国会図書館のWeb NDL Authorities[11]のURIを用いることが考えられます。
(6) コミュニティ形成
(活用コミュニティの形成)
分野・地域のコミュニティのつなぎ役は、活用を進めるための新たなコミュニティ形成にも寄与することが期待されます。デジタルアーカイブは構築して終わりではなく、活用を促す取組は継続して行われる必要があるため、個々のアーカイブ機関の努力も必要ですが、つなぎ役がデータをつなぐことに加えて、人と人のつながりを生み出すことも求められます。
そうした取組の一つとして、データの活用者自らがどのように利用し活用したのかを伝える事例共有の場を設定することなどが考えられます。また、機関と共同でデジタルコンテンツのキュレーション活動を行い、ギャラリー作成やイベント等を行うことで、新しいコミュニティが生み出されることも考えられます。
さらに、活用コミュニティを活性化するための取組として、アーカイブ機関と活用者との交流、異なる分野・地域コミュニティ間の交流促進を目的としたイベント等を開催することが考えられます。例えば、文化財の土器の 3D データを使ってクリエイターがインテリアやアクセサリーのデザインに取り込むといった活用を想定した場合、全く業種の異なる人たちが集まるイベントでデジタルアーカイブを紹介することも考えられますし、データを使って生み出されるものに表彰するといった仕組みの用意も考えられます。
また、学びの場での利用、学術・研究利用、ツーリズム利用など、目的ごとの活用コミュニティ創出を支援し、教育関係者、行政、大学、企業等の様々な立場のひとを対象にした情報交換の機会を設定することも考えられます。

















