解説
青いマントからのぞく聖母の優美な顔立ち。伏せた目と頬をつたう涙、そして控えめに袖口からみせた親指が視線をとらえます。透明感のある滑らかな肌や光沢のあるマントの生地などの質感がみごとに表現されています。
この聖母像は、キリスト教禁制下に来日したイタリア人宣教師シドッチが携えていたものです。「親指のマリア」の名で知られるこの作品は、イタリア・フィレンツェで活躍した宗教画家カルロ・ドルチ(1616~86)の作風によく似ています。シドッチは宝永5年(1708年)に屋久島で捕えられ、その後江戸の切支丹屋敷の地下牢で亡くなりました。この作品は、長崎奉行所に没収され、そのまま長い間日の目を見なかったことで、ここまでの状態で残っていたのでしょう。この作品は銅板に描かれた油絵ですが、その小さなサイズから、個人の礼拝用に作られたものと考えられます。シドッチがどのような気持ちでこの絵を遠い日本まで携え、祈りを捧げてきたのかに思いを馳せると、また違って見えてくるのではないでしょうか。
新井白石が書き残したイタリア人宣教師のシドッチの携行品の記録に表われる聖母マリアの絵画。マントの青色は中世においてキリストの死を嘆く聖母の悲しみの色とされました。17世紀のフィレンツェで活躍した宗教画家カルロ・ドルチ(1616~87)の作風に似ています。
収録されているデータベース
ColBase
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最終更新日
2026/06/15