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解説

 徳川家康の最晩年の書状です。一番左の宛名は「ちょぼ」、孫娘である千姫の侍女の名ですが、内容は千姫に宛てた手紙です。千姫は、夫・豊臣秀頼を大坂夏の陣で失いましたが、それは祖父である徳川家康に攻め滅ぼされたからでした。千姫の、家康に対する気持ちはどのようなものだったでしょうか。ここで家康は千姫に、どうしているか、くわしく様子を教えてくれ、案じていると繰り返し、夫を失い、悲しみ傷ついた孫娘を気遣っています。
 右から4行目、高い位置で始まる行が手紙の出だしです。1文字目は黒々として、墨がたっぷりと筆にたくわえられています。そこからだんだんと線がかすれていき、この行の後半でまた墨の色が濃くなっているので、ここで墨を筆に再びふくませたことが分かります。書き進めるにつれ、この墨継ぎの回数が減っていくことが分かるでしょうか。墨継ぎの手間も惜しいほど、あふれる気持ちを紙に乗せているのです。ほとんど墨継ぎをせずにたどり着いた本文最後の行は、弱々しくかすれた線が紙の中にとけていくように見えます。うまく書こう、よく見せようなどという気持ちとは無縁の、書き手の心がにじみ出た書状です。
 権力者としては大成功をおさめた家康ですが、ひきかえに、愛する身内に悲しみと喪失を与え、大きな苦しみも味わったことでしょう。筆跡はその時の心理状況も、時を超えて生々しく私たちに伝えます。


江戸幕府初代将軍徳川家康の書状です。宛所のちょぼは千姫の侍女で、実質は孫である千姫に宛てた書状です。大坂夏の陣後の千姫の傷心を気遣う内容で、行末にむかうほどに行間は狭く詰まりそこに千姫の心身を案じる文言が切々と連なります。その後、千姫の心は癒えたことが別の書状から知られます。

メタデータ

教育

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ColBase: 国立文化財機構所蔵品統合検索システムは、国立文化財機構の4つの国立博物館(東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、九州国立博物館)と一つの研究所(奈良文化財研究所)の所蔵品を、横断的に検索できるサービスです。

2026/07/20