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解説

7歳の愛娘を描く。北方ルネサンスの画家デューラーの影響を受けて、克明写実な人物画に執着した劉生だが、そこには「内なる美」を求めたキリスト教信者としての宗教観を見ることができる。時代に逆行した個性的な画風ではあるが、確固たる存在感がある。


 これは油絵の技法で描かれた少女の半身像です。鮮やかな色どりの肩掛けの下から覗く着物や赤い帯、おかっぱのヘアスタイルは、いかにもある時期の、日本の少女のいでたちです。しかし、長い眉と切れ長の目でほほえむ少女の表情は、何かしら意味ありげにも見えます。頭に対してアンバランスに小さい手や、緻密に描きこまれた肩掛けなどともあいまって、画面全体に神秘的な雰囲気が漂っています。
 作者の岸田劉生は、本格的な西洋絵画の技法を学び作品をあらわした洋画家です。明治24年、1891年東京に生まれ、昭和4年、1929年に38歳という若さで世を去りました。日本近代洋画のパイオニアであった黒田清輝に師事した岸田劉生は、短い生涯の間にも、洋画の表現と技法を貪欲に取り込み、みずからのものとして消化し、数多くの話題作を発表します。15世紀から16世紀のヨーロッパ・フランドル絵画に感化され描いた、硬質で緻密な描写と表現の作品は、高い評価を受けました。
 この少女のモデルとなったのは、娘の麗子で、当時満7歳でした。劉生は生涯にわたり、油彩、水彩、素描などで愛娘(まなむすめ)の姿を描き続けました。彼じしんの作風の変化や、娘の成長にともなって、麗子の表し方も作品により様々です。中でもこの「麗子微笑」は、数ある麗子像の代表作として知られ、特徴的な表情や神秘的な雰囲気から、かのレオナルド・ダ・ヴィンチの名作「モナ・リザ」を参考にしているとの指摘もあります。また劉生がのこした日記によれば、それまでのフランドル絵画ふうの硬質な印象ではなく、より柔らかみやあでやかさを加えており、モチーフの一部は、17世紀から18世紀のスペインの画家、ゴヤの絵画を参考にしたとのことです。

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2026/04/13