解説
平安時代の初めに日本に紹介された新しい仏教・密教では、超人的な姿の仏が存在します。今回ご紹介する作品は密教で信仰されている仏の内の一つで、十八本の手を持った姿で表現されています。これは、過去に数えきれない多くの仏を生み出した母とも考えられている准胝仏母(じゅんでいぶつも)です。この仏画は安産や子宝を願う儀式である修法(しゅうほう)の際にお堂の中にかけられました。
中央に描かれた准胝仏母の表情は穏やかで、体は肉付きよく表現されています。色使いも柔らかく、全体的にゆったりとした印象です。一方、衣服や蓮の花のかたちをした台座には細い金色の線が見えます。これを截金(きりかね)といいます。截金とは、金をたたいて極薄のシート状にのばした金箔を、細く切って貼り付けたもののことです。繊細かつきらびやかな輝きを生み出す手法です。
これらは平安時代後期の仏画に特徴的な表現で、大らかな中にもおごそかさと繊細さが感じられます。
細部には、体から伸びる腕の滑らかな動きや手の返し方など、インド風の表現が見られます。また台座の下の周囲にはふんわりとしたボリュームのある牡丹のような花と葉があしらわれています。日本の仏画ではこのような台座の描き方は珍しく、中国などの影響を受けていることも考えられます。さらに台座の背景は線を使わずに点の集まりで描く点描(てんびょう)という手法を用いて、丸を重ねた模様が使われています。これは中国・南宋時代の仏画によく見られる表現です。
平安時代に作られた仏画特有の優美な表現の中にも、異国の要素が感じられる作品です。
除災@じょさい@や求児@きゅうじ@、安産@あんざん@を願う目的で行われた密教修法、准胝法の本尊です。真言宗では六観音@ろくかんのん@の一つとして信仰される一方、天台宗では仏母信仰に基づきます。三目十八臂@さんもくじゅうはっぴ@の姿で表されます。着衣にみられる繊細な截金や優美な彩色表現に、平安時代の仏画の美しさが表れています。
収録されているデータベース
ColBase
ColBase: 国立文化財機構所蔵品統合検索システムは、国立文化財機構の4つの国立博物館(東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、九州国立博物館)と一つの研究所(奈良文化財研究所)の所蔵品を、横断的に検索できるサービスです。
最終更新日
2026/10/12