解説
春草が挑戦した革新的な描法である「朦朧体」は、色面のぼかしを多用するという特質から光の拡散や湿潤な空気といったものを表現するには適していたため、朝夕の情景や水辺の情景が好んで取り上げられた。しかしその一方で、例えば大きな岩の立体感や実在感を表現するには必ずしも適していなかった。彼はその弱点克服のための一つの工夫として、点描風の筆触を用いることを試みるようになった。この作品はその代表的な作例といえるもので、滝壷の波立つ水面の様は朦朧体の特徴であるぼかしを用いて表現し、滝が落ちる大きな岩肌は細かな筆触と墨の濃淡を巧みに重ねて、岩壁の立体感や実在感を表現している。そこに紅葉した樹を入念に描いて、確かな秋の風景を描き出すことに成功している。春草が完成させた絵画表現の一端を示す重要な作例である。
収録されているデータベース
愛知県美術館コレクション
当館のコレクションで特に充実しているのは、国内外の20世紀美術です。世紀前半にヨーロッパで活躍したグスタフ・クリムト、パブロ・ピカソ、ピエール・ボナール、マックス・エルンストなど、戦後アメリカで活躍したモーリス・ルイス、そして欧米の美術の影響を独自に咀嚼した日本近代の画家たちから、現代の日本を代表する作家たちの作品まで、さまざまな美術動向を辿るにふさわしい優品を収集しています。 これらの作品に加え...
最終更新日
2020/07/13