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探幽/梅竹ニ鶯図 /

「ホーホケキョ」の鳴き声で知られる小鳥。「梅に鶯」の取り合わせは、詩歌や絵画によく見られる

スズメ目ウグイス科ウグイス属の小鳥。早春、梅の花が咲く頃に「ホーホケキョ」と鳴き始めることから、「春告鳥(はるつげどり)」とも呼ばれる。東アジアに分布し、日本では全国各地で見られる。夏は山地の低木林で繁殖し、冬は平地に降りて越冬する漂鳥(ひょうちょう)。雄は全長約16㎝、雌は少し小形。背中は緑褐色、腹部が白く、淡色の眉斑(びはん)がある。花見鳥・歌詠み鳥・経読み鳥・匂い鳥・人来鳥(ひとくどり)・百千鳥(ももちどり)・愛宕鳥(あたごどり)など、異名は多い。

『万葉集』には51首が詠まれ、夏のほととぎす、秋の雁に次いで3番目に多い。春の訪れを告げる鳥として、迎春の喜びを詠む歌が定着し、「春告げ鳥」の異名を生んだ。天平2年(730)正月の大伴旅人邸で開かれた梅花の宴では、梅の花を詠んだ32首のうち、「うぐひすの音聞くなへに梅の花我家(わぎへ)の園に咲きて散る見ゆ」(万葉集・巻五・八四一)など、梅と鶯を詠んだ歌が7首ある。この「梅に鶯」の取り合わせは後世に定着し、日本の伝統的な詩歌や絵画に数多く描かれるようになり、物事の組合せが適切なことのたとえにも使われるようになった。

鶯の飼養は中世から行われ、鶯を飼育・行商する者を鶯飼(うぐいすかい)といった。江戸時代に入ると、鶯の糞を美容に利用したり、鳴き声を楽しんだりするために飼育が盛んになり、さえずりの始まる時期を早めて正月に鳴かせるために、夜間も灯火や餌を与える夜飼(よがい)なども行われた。

なお、鶯の鳴き声を「ホーホケキョ(法、法華経)」と記すのは近世に入ってからで、俳諧書「毛吹草(けふきぐさ)」に、「鶯の声にや誰もほれげ経」とある。蓮如上人(れんにょしょうにん)が最期の時に「このうぐひすは法ほききよとなく也」(「空善聞書(くうぜんききがき)」)と話したという説もある。


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歌や文学作品に描かれた鶯

『万葉集』は奈良末期に成立したとされる日本最古の和歌集。鶯は51首が詠まれ、夏のほととぎす、秋の雁に次いで3番目に多い。春の訪れを告げる鳥として、迎春の喜びを詠む歌が定着し、「春告げ鳥」の異名を生んだ。

平安時代初期に成立した最初の勅撰和歌集。歌数は1100首。『古今和歌集』は季節を体系化し、日本人の「季節感」を醸成したといわれるが、「梅に鶯」はそのような日本的美意識の型のひとつといえる。

『源氏物語』第23帖「初音」巻。初音とは、鶯がその年初めて鳴く声のこと。明石の御方が娘の明石の姫君に送った歌「年月を松にひかれて経る人に今日鴬の初音聞かせよ」が巻名の由来。掲出の頁はその歌のくだり。

平安中期の随筆『枕草子』では「鶯は、文などにもめでたきものに作り、声よりはじめて、さまかたちも、さばかりあてにうつくしきほどよりは、九重のうちに鳴かぬぞいとわろき」(「鳥は」)と描かれる。

鎌倉初期に成立した8番目の勅撰和歌集。『古今和歌集』と同様、春歌上に鶯を詠んだ歌が見られる。

後奈良天皇(一四九六~一五五七)が「初鶯」の題で詠んだ「山さむみ」と「けふに明て」の二首の歌のうち、最初の「山さむみ」に点をつけられている。点者はこちらの歌をよしとしたわけであるが、ただ、そこにも「うくひすも」を「うくひすの」にするなど、三カ所にわたって添削が施されている。点者の厳しい指導の程がうかがわれる。
 後奈良天皇は戦乱で窮乏生活を強いられるなか、諸芸の研鑽に励み伝統的な公家文化を後世に伝えた天皇として知られる。また、疫病に悩む黎民のために自ら「般若心経」を書写するなど、真摯な祈りを捧げ続けたことでも有名。

江戸前期の俳諧論書。松江重頼著。7巻5冊、正保2年(1645)刊。鶯の鳴き声が「法華経」という聞きなしにつながったと考えられ、「鶯の声にや誰もほれげ経」(毛吹草・五・鶯)の例は、「妙法蓮華経」に「惚れ」を掛けたもの。鶯には「経読み鳥」という異名もある。

江戸前期の俳人・松尾芭蕉(1644−1694)の俳句にも「鶯」を詠んだ歌が多数ある。「鶯や柳のうしろ藪のまへ」「鶯や餅に糞(ふん)する縁の先」など。

明治時代、俳句革新運動を興した俳人・正岡子規(1867~1902)の句集。「鶯や朝寝を起す人もなし」「鶯の覚束なくも初音哉」「鶯や籔の隅には去年の雪」など。

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梅に鶯図
作品は、江戸後期の四条派の画家・松村景文(1779−1843)の「梅に鶯図」。「梅に鶯」とは、春を告げる鳥の鶯と早春に咲く梅との取り合わせがひとつの<型>として定着し、組合せがよいことの喩えとなった。絵画のモチーフとして、多くの作品が残されているが、実際の鶯は藪の中に隠れており、美しい鳴き声は聞こえるものの、裸の梅の枝に姿を見せることは滅多にないという。梅の枝にとまる鳥は、現在の「ウグイス色」に近い羽色をしたメジロといわれる。

梅に鶯の絵画

梅に鶯の意匠

その他の取り合わせ

鶯の標本・写真

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  • 東京都豊島区目白にある緑地。園内では様々な鳥が見られ、ウグイスも飛来する。

  • 所在地は東京都台東区。1882(明治15)年に農商務省所管の博物館付属施設として開園した、日本で最初の動物園。鶯を見ることができる。

ジャパンサーチの外で調べる

  • SUNTORYが運営する鳥の百科事典。フリーワードや特徴、鳴き声で検索できる。イラストや写真も豊富。

  • 全国の博物館・美術館等から提供された作品や国宝・重要文化財などを掲載。「梅に鶯」で検索すると、梅と鶯をモチーフに描かれた、さまざまな絵画や木版画等を閲覧できる。

  • 日本野鳥の会が運営するサイト。野鳥に関する様々な情報を知ることができる。膨大な数の投稿写真は、検索しやすいように分類されている。

参考文献

  1. 鈴木宏子 著,NHK出版
  2. 集英社
  3. 細川博昭,株式会社秀和システム
  4. 小学館
  5. 鳥居正博 編著,聖文社
  6. 佐佐木幸綱 [ほか]編,大修館書店