法隆寺
世界最古の木造建築物群をもつ聖徳太子ゆかりの寺
奈良県生駒(いこま)郡斑鳩(いかるが)町にある聖徳(しょうとく)宗の総本山。斑鳩寺、法隆学問寺などともいわれた。南都七大寺の一つ。寺の建築物の総称である伽藍(がらん)は、西院伽藍と東院伽藍の二つからなる。
用明天皇の造寺・造仏の遺志を継いだ聖徳太子(用明天皇の子)と推古天皇が、推古天皇15年(607)に薬師如来像を安置したのが起源とされる。ただし開創年代には諸説があり、いまだ確定していない。推古天皇30年に太子が死去し、翌年太子一族らが止利(とり)仏師作の釈迦三尊像を安置して冥福を祈った。前述の薬師如来像と釈迦三尊像は、現在も西院伽藍の金堂に安置されている。『日本書紀』に天智天皇9年(670)4月30日に法隆寺が全焼したとの記事があり、これをめぐって明治20年(1887)頃から法隆寺西院伽藍についての再建・非再建論争が展開された。昭和14年(1939)の若草伽藍跡発掘調査などによって、草創当時の伽藍は若草伽藍跡と呼ばれる地にあったとされ、現在では再建説が定説化している。世界最古の木造建築物群とされる西院伽藍は、金堂・五重塔などを南北に一直線に配置する様式を再建の際に改められ、これらを東西に配置するいわゆる法隆寺式伽藍配置となった。天平19年(747)の『法隆寺伽藍縁起幷流記資財帳(えんぎならびにるきしざいちょう)』によると、和銅4年(711)に五重塔の塑像と中門の仁王像が造られており、これ以前に法隆寺西院伽藍は再建されたのであろう。西院伽藍の東方に隣接する東院伽藍は、斑鳩宮(いかるがのみや、聖徳太子が推古天皇9年に造営)跡にあって上宮王院(じょうぐうおういん)といわれ、天平11年頃に行信(ぎょうしん)が太子の菩提を願って建立した夢殿(ゆめどの)を中心とする建築群である。
西院伽藍の金堂には、外陣の土壁に諸仏の浄土図、外陣・内陣の小壁に菩薩・飛天などを描いた壁画があり、西域との文化交流を示す貴重な絵画資料であったが、昭和24年に一部を残して焼失。この火災は翌年の文化財保護法制定のきっかけとなった。法隆寺は飛鳥時代以来の多くの建築物・仏像・美術工芸品などの宝庫で、前述の薬師如来像・釈迦三尊像のほか、百済(くだら)観音像、夢違(ゆめたがえ)観音像、夢殿の救世(ぐぜ)観音像などの彫刻、玉虫厨子(たまむしのずし)や伝橘夫人持仏及び厨子(以上は国宝)などの工芸品がある。また、称徳天皇の発願によって造られた100万基の木製の小塔「百万塔」のう4万数千基が法隆寺に現存し、このうちの優品100基が中に納められた世界最古の印刷物である陀羅尼経(だらにきょう)とともに重要文化財に指定されている。法隆寺の文化財のうち国宝・重要文化財の指定を受けたものは約200件に及び、一部は東京国立博物館の法隆寺宝物館に「法隆寺献納宝物(けんのうほうもつ)」として保管されている。平成5年(1993)に「法隆寺地域の仏教建造物」が世界文化遺産として登録された。
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法隆寺の国宝
法隆寺のおもな仏像・工芸品
- 止利飛鳥時代の作品。鞍作止利(くらつくりのとり)の作で、釈迦三尊像の名で知られる。
- 飛鳥時代の作品。光背裏面の銘文に法隆寺創建の由来が刻まれている。
- 康勝鎌倉時代の作品。運慶の四男である康勝の作で、阿弥陀三尊像の名で知られる。
- 飛鳥時代の作品。大宝蔵院に安置。江戸時代は虚空蔵菩薩とされていたが、明治時代になって化仏のある透かし彫りの宝冠が発見され、百済観音と呼ばれるようになった。
- 白鳳時代の作品。大宝蔵院に安置。
- 飛鳥時代の作品。大宝蔵院に安置。主尊の安置と荘厳が一体化した信仰の結晶である。図案的構成や、細部の技法などに中国六朝時代の遺品に通じる部分がある。
- 法隆寺に伝来した飛鳥時代~奈良・唐の裂で、東京国立博物館にある法隆寺献納宝物と一群のものである。飛鳥時代の優れた染織技術を示す貴重な資料で、織文、色調も見事であり、保存状態も良い。
- 平安・鎌倉時代の作品。
- 明治11年(1878)法隆寺から皇室に献納された宝物類(「法隆寺献納御物」の名で親しまれ、奈良の正倉院宝物と並び称されている)の中に含まれているものである。柄のついた香炉で、柄裏に「慧慈」と朱書され、縁裏に「上宮」の刻字があるが、上宮は聖徳太子のことであり、また慧慈は太子の師である。おそらく柄香炉として最古の遺品であろう。
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聖徳宗総本山・法隆寺のHP。法隆寺の伽藍およびその内部に収められている仏像・工芸品などが、鮮やかな画像とともに詳細に紹介されている。
仏教美術及び奈良を中心として守り伝えられてきた文化財を取り扱う奈良公園に所在する博物館です。法隆寺に関連する収蔵品があります。
日本と東洋の文化財を守り伝える中心拠点としての役割を担う我が国の総合的な博物館です。敷地内に法隆寺宝物館があります。
画像は東京国立博物館の敷地内にある現在の法隆寺宝物館。
東京国立博物館の「1089ブログ」より。画像は建て替えられる以前の旧法隆寺宝物館。
奈良国立博物館が運営するウェブサイト。法隆寺金堂壁画の写真ガラス原板およびデジタル画像を見ることができる。昭和24年(1949)1月26日、不慮の火災により金堂壁画が焼損したため、金堂壁画の姿を今に伝える貴重な資料で、金堂内における壁画の配置をもリアルに紹介している。
「紡ぐプロジェクト」の一環として2021年に奈良国立博物館と東京国立博物館で開催された特別展の公式サイト。
参考文献
- 石田茂作 著,学生社
- 梅原猛 著,新潮社
- 日本歴史学会 編,吉川弘文館梅原猛説批判の論文、坂本太郎「法隆寺怨霊寺説について」が載っている。
- 上原和 著,朝日新聞社
- 直木孝次郎 著,吉川弘文館
- 高田良信 著,柳原出版
- サンプルページ「法隆寺」の項
- 「法隆寺」の項
- 歴史学研究会 編,岩波書店
- サンプルページ「飛鳥時代」の項
