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室町時代後期の連歌師である宗祇(そうぎ、1421~1502)による長享三年の源氏物語講釈をもととして、同じく室町時代後期の連歌師・牡丹花肖柏(ぼたんかしょうはく、1443~1527)の『源氏聞書』も借りながら、連歌師・藤原正存(ふじわらまさあり、生没年不詳)が著した源氏物語注釈書。書名「一葉」の由来については何も記されていない。はじめに肖柏の『源氏聞書』の料簡をさらに詳細にした内容が付され、以下巻別の注釈が展開する。注釈内容は宗祇・肖柏の説が基本となっているものと考えられており、〈草子地〉*説のような宗祇の源氏学を反映していることは、『一葉抄』の注釈書としての特色である。

広島大学図書館蔵本(ト53)写本18冊。夢浮橋巻末の奥書には、諸本と同様に「右十五冊藤正存以二師説并諸抄等之/儀一ヲ編之云々/明應乙卯孟春仲乙 肖柏」とあり、本来は15冊仕立てだったと思われる。諸本は広大本のほかに神宮文庫本・天理図書館本・刈谷図書館本などあわせて十数種が知られており、現存本の多くは10冊となっている。


*草子地(そうしじ)とは…帚木巻の注釈書『雨夜談抄』において、宗祇は作者介入の詞として〈草子の地〉という用語を初めて用いた。これは一条兼良によって深められた読みの方法をさらに発展させたものであり、宗祇は〈紫式部が詞〉と〈草子の地〉を使い分け、物語の語りの性格を持つ構造を分析していこうとした。この文体論研究はその後三条西家に継承され、術語は三条西実隆にいたって〈草子地〉に統一された。


【参考】

稲賀敬二・福島律子校『源氏物語一葉抄(広島大学蔵本)』「翻刻平安文学資料稿」第5巻第1分冊(1970年、広島平安文学研究会)

位藤邦生・藤河家利昭校『源氏物語一葉抄(広島大学蔵本)』「翻刻平安文学資料稿」第5巻第2分冊(1971年、広島平安文学研究会)

藤河家利昭・稲賀敬二校『源氏物語一葉抄(広島大学蔵本)』「翻刻平安文学資料稿」第5巻第3分冊(1971年、広島平安文学研究会)

小川幸三・松原一義校『源氏物語一葉抄(広島大学蔵本)』「翻刻平安文学資料稿」第5巻第4分冊(1972年、広島平安文学研究会)

山崎誠・小沢サト子・金本節子校『源氏物語一葉抄(広島大学蔵本)』「翻刻平安文学資料稿」第5巻第5分冊(1972年、広島平安文学研究会)

小川幸三校『源氏物語一葉抄(広島大学蔵本)』「翻刻平安文学資料稿」第5巻第6分冊(1973年、広島平安文学研究会)

白石一美・小林美和子校『源氏物語一葉抄(広島大学蔵本)』「翻刻平安文学資料稿」第5巻第7分冊(1973年、広島平安文学研究会)

山崎誠校『源氏物語一葉抄(広島大学蔵本)』「翻刻平安文学資料稿」第5巻第8分冊(1974年、広島平安文学研究会)

河北靖・余田充校『源氏物語一葉抄(広島大学蔵本)』「翻刻平安文学資料稿」第5巻第9分冊(1974年、広島平安文学研究会)

『日本古典文学大辞典』第一巻(1983年、岩波書店):「一葉抄」

伊井春樹編『源氏物語注釈書・享受史事典』(2001年、東京堂出版):「雨夜談抄」「一葉抄」

『和歌文学大辞典』(2014年、古典ライブラリー):廣木一人「宗祇」、鶴崎裕雄「肖柏」