針木雪渓(「日本アルプス十二題」より) Climbing Snowy Valley at Harinoki, from the Series "Twelve Scenes in the Japan Alps"はりのきせっけい にほんあるぷすじゅうにだい より
解説
大正14年(1925)、三度目の外遊から帰国した吉田博は、自身の監修による木版画の制作を開始した。その翌年大正15年(1926)には早くも、博の代表作となる「日本アルプス十二題」「瀬戸内海集」シリーズを含む、実に41点もの作品を意欲的に発表した。本作に描かれている「針ノ木雪渓」は、飛騨山脈の後立山連峰に属する標高2,821メートルの「針ノ木岳」の東面に位置し、白馬、剱沢とともに日本三大雪渓のひとつに数えられている。「登山と絵とは切り離せないもの」と語った博は、毎年夏の時期は一ヶ月から三ヶ月、山に籠るのが年中行事で、30日あまりかけて日本アルプスを縦走するほどであった。その際には登山の案内人とともに登るのが常で、この絵の左から2番目に描かれた人物も、「山に対しては、一種不思議な、動物のように鋭い感覚を持っていた」と、博が全幅の信頼をおいていた小林喜作といわれている。小林は、博がこの「日本アルプス十二題」シリーズを発表する三年前の大正12年(1923)に雪崩に遭い亡くなっている。博は彼との懐かしい記憶をここに刻んだのかもしれない。
収録されているデータベース
東京富士美術館収蔵品データベース
日本・東洋・西洋の各国、各時代の絵画・版画・写真・彫刻・陶磁・漆工・武具・刀剣・メダルなど様々なジャンルの作品約30,000点の内、約2,000点を掲載。
最終更新日
2026/01/09