解説
辺り一面に渦巻く雲の中から三連の山の頂が顔を覗かせている。大観のこうした湿潤な山の墨画表現は、早い時期だと大正6年(1917)の《雲去来》(熊本県立美術館蔵)に見ることでき、《生々流転》(東京国立近代美術館蔵)や《秩父霊峯春暁》(宮内庁三の丸尚蔵館蔵)などの代表作にもそれを確認することができる。一連の作品に共通する特徴は、彼が独自に用いていた「片ぼかし」の技法にある。片ぼかしとは、筆全体に薄い墨を浸した後、先端に濃い墨をつけて描画し、片側をぼかす描法で、本作では山の稜線をこうした片ぼかしの技法で一度描いた後に、上からさらに山肌の木々を筆写して柔らかみをもたせている。大観の墨技にひときわ磨きがかかった時期の秀品の一つに数えられよう。
収録されているデータベース
東京富士美術館収蔵品データベース
日本・東洋・西洋の各国、各時代の絵画・版画・写真・彫刻・陶磁・漆工・武具・刀剣・メダルなど様々なジャンルの作品約30,000点の内、約2,000点を掲載。
最終更新日
2026/01/09