解説
ここで描かれているのは山間から顔を出したばかりの朝日であろうか。太陽を示す黄色の円からは光芒が差すように一筋の光が下へ伸びている。また画面中ほどを区切るように横たわる水色と黄色の線は水面を思わせ、反射した太陽を映し出しているようだ。線の下部は水中、最下部は水中のさらに深部を示しているようにも見える。いずれにしても全体の構図を直線や曲線を用いて幾何学的に処理しており、1950年代以降のエルンスト作品にしばしば見られる傾向を示している。エルンストはグラッタージュ(画布の下に凹凸のある物を置き、画面を研磨し質感を出す技法)、デカルコマニー(画面上の絵具にガラス板などを押し当ててできた染みを使った技法)など、多くの絵画技法を取り入れてきたが、本作では1950年代後半以降に見られる、パレットナイフを使って切り子面状のマチエールを描き出す手法を用いている。真ん中に掲げられた太陽やその周囲にも無数のパレットナイフの跡が確認でき、そこには淡い色斑のような独特の質感が見られる。本作の支持体に板が使われているのもこの技法自体の効果を高めるためかもしれない。とはいえ、小気味よく落ち着いたトーンでまとめられた画面を見渡すと、晩年期に入った作家の最大の関心は、太陽の光による大気のゆらめきの描写に置かれているように見受けられる。
収録されているデータベース
東京富士美術館収蔵品データベース
日本・東洋・西洋の各国、各時代の絵画・版画・写真・彫刻・陶磁・漆工・武具・刀剣・メダルなど様々なジャンルの作品約30,000点の内、約2,000点を掲載。
最終更新日
2026/01/09