解説
フランドル人の血を父方から継いでパリに生まれ、正規の美術教育を受けずに絵を描き始めたヴラマンクは、1901年頃、シャトゥーでドランと共同アトリエを営み、制作活動をはじめた。ゴッホに刺激されたフォーヴィスムの画家を代表する一人として、チューブからひねり出したままの絵具による溢れるばかりの色彩を駆使し、強い原色と奔放な筆触、スピード感のあるすばやいタッチで、ダイナミックな風景世界を描いた。その傾向は生涯を通じて変わらないものであったが、更に後期には彼独特の表現主義的な描写へと画風を発展させていく。こうした画風の展開の中で、1908年頃から1914年にかけての数年間だけ、セザンヌの影響を受けて、より堅固な構成と空間の把握を求め、構成的な画風に転じた時代があった。本作は、まさにこの「セザニスム」の特徴を良く示す作品である。形態のヴォリュームを強調し、空間の奥行きを勘案し、よく構成された構図を追求していたことが分かる。色調は、赤い屋根、白い建物、緑の樹木のアンサンブルに還元され、程よい音楽的な響きを醸し出している。この色彩は、モチーフの固有の色を離れ、緊張感をもった絵画空間をつくるために赤と緑の原色による補色関係で配置されている。建物や木々の細部は省略され、説明的な描写を残しながらも、対象はより単純な形の連続によって造形されている。セザンヌの洗礼を受けることは、20世紀初頭の多くの前衛画家に共通した現象であったが、ヴラマンクはわずか数年でセザンヌの主知主義と訣別し、このあと、彼の後期の特徴ある表現主義的風景画へと突き進んでゆくことになるのである。
収録されているデータベース
東京富士美術館収蔵品データベース
日本・東洋・西洋の各国、各時代の絵画・版画・写真・彫刻・陶磁・漆工・武具・刀剣・メダルなど様々なジャンルの作品約30,000点の内、約2,000点を掲載。
最終更新日
2026/01/09