解説
オーギュスト・ロダンによるこのブロンズ彫刻は、ダンテの叙事詩『神曲』を主題とした《地獄の門》を装飾する主要モチーフのひとつとして構想されたものである。しかしながら、男女の甘美な幸福の表現が地獄の悲劇的なテーマと相いれないと判断したのか、ロダンは最終的に本作を《地獄の門》の構成から外し、のちに単独の彫刻として発表した。本作は、『神曲』地獄篇に登場するパオロとフランチェスカの悲恋物語を主題とする。13世紀、ラヴェンナ領主は政略結婚のために、娘フランチェスカをリミニ領主の長男ジャンチョットに嫁がせようとする。ジャンチョットは容姿に難があったため、娘が嫌がるのを恐れたラヴェンナ領主は、ジャンチョットの弟で美男のパオロを見合いの席に寄越させる。パオロを見たフランチェスカは彼に一目惚れし、パオロもまた彼女に恋をした。しかし、両家の婚約がなされて嫁いでみると、結婚相手は長男ジャンチョットのほうであった。今さら破談にもできず、彼女は悲嘆に暮れつつもジャンチョットとの生活を始めるが、結婚後も二人の想いは募る一方であった。結婚から10年後、ジャンチョットが仕事でしばらく町を離れた間に、二人の仲は急速に縮まる。ある日二人は部屋で『アーサー王物語』を読み合っていた。騎士ランスロットと王妃の不義の恋の部分に差し掛かったとき、二人はお互いへの愛を自覚し、パオロはついにフランチェスカを抱き寄せ、接吻を交わした。しかし、二人の関係を怪しみ、密かに戻っていたジャンチョットにその場を見られてしまい、激怒した彼によって、二人とも刺し殺されてしまう。この話には誇張もあるが、当時実際に起こった事件で、ダンテはこの二人を『神曲』のなかで、「愛ゆえに身を滅ぼし、風に運ばれて永遠にさまよう魂」として描いたのである。
収録されているデータベース
東京富士美術館収蔵品データベース
日本・東洋・西洋の各国、各時代の絵画・版画・写真・彫刻・陶磁・漆工・武具・刀剣・メダルなど様々なジャンルの作品約30,000点の内、約2,000点を掲載。
最終更新日
2026/04/29