解説
上部がアーチ状の特殊な形状をしたカンヴァスに描かれた本作は、発注主が飾ろうとした建物の壁面の形を物語っている。《夏》とのタイトルから、本作が四季を描いた連作のうちの1点ということが容易に想像されるが、他の作品の存在は明らかでない。描かれた人物のうち三人の女性は、そのうちの一人が大きな花籠を持っていることから三美神(タレイア、エウプロシュネ、アグライアとされ、それぞれ「花」「喜び」「優美」を表している)であると想像される。また右側の男性は先端に松かさがつけられた特殊な杖テュルソスを手にしていることから、バッカスの従者のサテュロスとみられる。三美神、サテュロスともに自然の豊穣な実りの化身である。また、三美神のうちの右側の女神の足元に置かれた小麦の穂束、中央の女神が手にする籠からあふれ出るように描かれた林檎や葡萄、西瓜などの果物や野菜が、収穫期である夏の季節を象徴している。ウィトはこのような寓意的な主題の神話画を数多く手がけた画家であり、本作はその典型例ともいえよう。眉間をやや広めにとった顔立ちも彼の女性描写の特徴を端的に示している。中央の女神の足元に「D.WIT.J 1728」との署名と年記も見られる。
収録されているデータベース
東京富士美術館収蔵品データベース
日本・東洋・西洋の各国、各時代の絵画・版画・写真・彫刻・陶磁・漆工・武具・刀剣・メダルなど様々なジャンルの作品約30,000点の内、約2,000点を掲載。
最終更新日
2026/01/09