解説
本作「アフロディーテ」の著者のピエール・ルイスは、ベルギー生まれのフランス象徴主義の詩人、小説家で、古代ギリシアに関する豊富な知識をもとに官能的な文体でヘレニズム世界を描いたことで知られており、本作が彼の出世作となった。音楽家のドビュッシーとも親交があった。ピエールの曽祖父のルイス男爵は第一帝政と王政復古期に財務を担当していた。彼の曽祖母はナポレオンに従軍したアブランテス公ジュノーの親族であった。挿絵を担当したラファエル・コランは、本作の他に2点の書物の挿絵を手がけている。古代ギリシアの作家ロンゴスによる「ダフニスとクロエ」、そして本作の著者であるピエール・ルイスによる「ビリティスの歌」である。本作「アフロディーテ」は、エジプト文明とギリシア文化が融合した大都市である、紀元前1世紀のアレクサンドリアを舞台としている。彫刻家デメトリオスが高級娼婦クリュシスに心を奪われ、結ばれる条件として彼女から唆されたことで罪を犯すものの、夢の中でクリュシスと結ばれ快楽に耽ることができたデメトリオスは現実のクリュシスを拒み、彼女を死に導き、その身体を彫刻にすることで永遠の理想美を創造したという物語である。コランによる43枚の挿絵では、物語の露骨な暴力的な描写や欲望の解放といった表現が抑制されており、その画面は穏やかな光に包まれた古代ギリシアの光景を想起させる。挿絵の構図は新古典主義的な静謐さを持って描かれており、人物の配置の仕方にもそれが顕著に表れている。一方、色彩においてはナビ派を彷彿とさせる鮮やかな色が用いられているものもあり、コランは自身の芸術の方向性を確認し、それを刷新するかのように、挿絵である本作においても古典美術と新たな美術様式との折衷を試みている。
収録されているデータベース
東京富士美術館収蔵品データベース
日本・東洋・西洋の各国、各時代の絵画・版画・写真・彫刻・陶磁・漆工・武具・刀剣・メダルなど様々なジャンルの作品約30,000点の内、約2,000点を掲載。
最終更新日
2026/01/09