解説
蚕種検査表の例言集である。まず始めに「養蚕において不備・過ちがおこらないよう養蚕検査の項目を設け、その例を記すことで粗悪な偽物を排除したい」と本書作成の深意を述べ、「養蚕各家がこれをしっかり実践すれば、損失を招くことはない」としている。なぜこのような言葉を記していたのかというと、当時は国内蚕種製造の質が落ちていた時代だったからである。この書が作成された明治初期ごろの欧米では微粒子病という蚕病が流行っており、生糸産業は壊滅的な状態に陥ってしまっていた。そこで無病の蚕種の需要が増え、日本の蚕種は“作れば売れる”状態となり、にわかに蚕種製造を行う者が多くなっていったため繭の質がどんどん低下していたのであった。そのため、各養蚕家のレベルを一定に維持できる検査表のようなものが必要であり、それを実践することが養蚕の質を上げることにつながると考えたのであった。この書は、その役割を担った1冊なのである。内容としては、養蚕を行うのに必要な条件を検査表の項目にしており、実際の表こそないが項目ごとにどのように記していくのかを細かく示しながら分かり易くまとめ上げている。また、当時は租税寮が検査表全般についての取り調べを行っていたが、蚕が卵を産みつけるための紙である種紙の偽製取り締まりも行っていたため、違反者は県庁へ申し立ての上、蚕種製造の差し止めになるということも最後には記されている。
収録されているデータベース
信州デジタルコモンズ 県立長野図書館所蔵資料
長野県の文化機関の所蔵資料のほか、信州の人々が営んできた身近な生活の記録を画像や映像で残し、「知の共有地」として活用するデジタルアーカイブ「信州デジタルコモンズ」で公開している資料のうち県立長野図書館所蔵分です。
最終更新日
2011/02/07