解説
私は、長野県小県郡秋和村(上田市)の出で、明治15(1882)年より21年まで当武州西多摩郡(東京都)で、蚕種商に従事しております中島蔵太郎です。蚕飼の話に入ります。繭は清涼で、空気の流通のよい部屋を選んで吊るし、華氏60度以上5,6度に至ると、蚕が発生しますので、収蚕します。美濃紙を4枚続き合わせ、その中央に種をおき、左右から表へ折り、又上下に折り、午後2時ごろ包み紙を開きます。種の上に糠7、8匁を散布し、其の上に巾3厘、長さ3歩位に刻んだ桑を、蚕の出具合を見計らい5~10匁位与えて、又元の如く包んで置きます。5分を経て包み紙を開き、種をひっくり返して箒の柄にて叩き落し、はき集め量を改める。蚕は、尺坪・二坪に広げて飼育します。飼育は、67~68度で養うのがよい。さて、蚕は少しずつ大きくなりますので、給桑の量を増してゆきます。平均で申しますと、1昼夜に8回位といわれています。日によって寒暖の差がありますので給桑の回数も差が出ます。また、給桑は蚕の成長度に応じても違います。蚕は1齢から5齢までありますからそれに応じて給桑を考えます。因みに、1齢とは、蚕の発生から第1回の脱皮が終わって飼食をなす前までをいいます。1齢間に1分6厘から1分8厘2毛位大きくなります。蚕が繭をかける間は、空気の流通を能くする。結繭中とはいえ、成長のときと同じく、温度の調節が必要となります。純良な繭を求めるには70度位を保属する必要があります。また、繭を結ぶ間は、その室を乾燥しないと、繭の光沢と解舒を妨げます。最終的には、五齢に至るまでは当初の繭は3割位減じ、さらに上簇までに百分2,3は減じ、成繭は8,000~8,700位にはなります。なお、養蚕には、一家が油断なく協業することが肝要であります。 (摂氏と華氏の換算は、F(華氏)=(9÷5)C(摂氏)+32)
収録されているデータベース
信州デジタルコモンズ 県立長野図書館所蔵資料
長野県の文化機関の所蔵資料のほか、信州の人々が営んできた身近な生活の記録を画像や映像で残し、「知の共有地」として活用するデジタルアーカイブ「信州デジタルコモンズ」で公開している資料のうち県立長野図書館所蔵分です。
最終更新日
2010/03/10