解説
古様を示す形式をもつ希少な鞍の1つ。金粉を密に蒔いた沃懸地(いかけじ)に厚い夜光貝(やこうがい)による螺鈿で、さまざまな姿態の獅子を表わしています。獅子は豊かな表情で巧みに描き分けられ、金を背景に強い存在感を放っています。平安~鎌倉時代にかけて盛行した沃懸地螺鈿の典型を示す作品です。
鞍は馬の背中に人を乗せるための道具です。日本の鞍は、馬に乗る人物が腰を乗せる居木(いぎ)、その前に立てる前輪(まえわ)、後ろに立てる後輪(しずわ)の三つのパーツからできています。
この鞍は木製で、ぶ厚くどっしりとした後輪、幅の広い居木は、鞍としての古い様式を示しています。表面には黒漆を塗り、前輪と後輪の外側の部分には、さまざまなポーズをとる3頭の獅子を螺鈿で表し、地には金粉を密に蒔いています。「螺鈿」は貝がらの内側を平らに加工して文様の形にカットし貼り付ける工芸技法のひとつです。真珠のように七色に輝くその文様表現は、日本の漆工で広く用いられています。漆地に金粉を散らす蒔絵も、日本の伝統的な漆工技法ですが、この作品では細かな粉(ふん)が、漆地の見えないほど密に蒔かれ、金色が面的な輝きを放っています。こうした緻密な蒔絵の地に、螺鈿で文様をあらわした漆工品は、平安時代後期から鎌倉時代、12世紀から14世紀にかけて盛んに作られました。その初期に属する貴重な作品です。獅子は豊かな表情で巧みに描き分けられ、金を背景に強い存在感を放っています。
収録されているデータベース
ColBase
ColBase: 国立文化財機構所蔵品統合検索システムは、国立文化財機構の4つの国立博物館(東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、九州国立博物館)と一つの研究所(奈良文化財研究所)の所蔵品を、横断的に検索できるサービスです。
最終更新日
2026/07/20