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砧蒔絵硯箱 Writing Box with Figures Fulling Clothきぬたまきえすずりばこ

解説

蓋表から蓋裏にかけて、秋の野に置かれた枕、板葺きの家の中で砧を打つ男女の姿などを描く。秋草や家屋、人物は、描割【かきわり】を駆使して精細に描き込まれている。画中の「しられ」「ぬる」の文字と合わせて、『千載和歌集』巻5の俊盛法師の歌「衣うつ音をきくにぞ知られぬる 里遠からぬ草枕とは」を表わしている。


 筆記に用いる硯や筆などの道具を納めるための箱が「硯箱」です。この硯箱は木製で、表面に漆を塗り、金粉を蒔き付ける「蒔絵」の技法でデザインが表されています。蓋を開けると、身の内側には薄い容器が敷かれ、その上に硯(すずり)と水滴(すいてき)が置かれています。硯の上下に渡してある材は、筆や小刀を置くための台です。
 蓋の表をみてみましょう。右上には月と雲を配し、左下には薄(すすき)・桔梗(ききょう)・女郎花(おみなえし)・藤袴(ふじばかま)など、日本で伝統的に好まれてきた秋の草花の中に、獅子をあらわした枕を置いています。これに対して蓋の裏側には、秋草に囲まれた家屋、その中で砧(きぬた)を打つ男女の姿があらわされます。砧は布をたたく道具で、たたくことによって柔らかくしたり、皺(しわ)をのばすために使われました。かつては秋の夜になると、家々から砧の音がしたといい、秋の夜を象徴するモチーフともなりました。
 蒔絵は、部分に応じて、金粉を高く低く蒔き、あるいは線を描くなど、多彩な技法が駆使されています。ところどころに、実際の金銀の金属片を貼り付ける技法も効果的です。洗練された蒔絵の技法とスマートな硯箱の形が印象的な作品です。
 蓋の表には秋草に紛れこませるように、「しられぬる」の文字が銀蒔絵で記されています。これは、平安時代12世紀の貴族、藤原俊盛(ふじわらのとしもり)が読んだ和歌「衣打つ音を聞くにぞ知られぬる里遠からぬ草枕とは ころもうつ おとをきくにぞ しられぬる さととおからぬ くさまくらとは」の一節です。蒔絵のデザインは、この和歌にもとづくものであることがわかります。このように、物語や和歌などの古典文学を題材としてデザイン化し、また文字自体をデザインの一部として取り込むやり方は、日本美術によくみられる特色です。それを理解するための教養が必要とされたことは、いうまでもありません。

メタデータ

教育

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ColBase: 国立文化財機構所蔵品統合検索システムは、国立文化財機構の4つの国立博物館(東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、九州国立博物館)と一つの研究所(奈良文化財研究所)の所蔵品を、横断的に検索できるサービスです。

2026/07/20