解説
懸仏は御正体(みしょうたい)ともいい、鏡板と呼ばれる円形板に立体的につくった神仏像を取り付け、懸けられるようにしたもの。鎌倉時代の懸仏では丸彫り像に近い尊像を据えることが多くなるが、本作はその中でも早い頃の作例で、この時代を代表する懸仏の優品である。
径45センチの円盤に立体的な仏像を取り付け、上部の2か所に吊り下げるための金具を取り付けた「懸仏」です。全体は銅を主な材質とし、表面を鍍金(ときん)していますが、円盤は木製で、表面を銅の薄い板で覆っています。仏像は蓮華をかたどった台座の上に坐しており、右手と左手の配置や格好から、さまざまに変化する観音菩薩の一種である「聖観音」(しょうかんのん)と判断できます。裏面には建治元年(けんじがんねん)、西暦1275年という墨書があり、およその制作年代がわかります。洗練され整った仏像や金具の造形は、13世紀後半という時代性をよく示しています。こうした懸仏は、寺院や神社の建物の軒先や内部にかけられ、礼拝されました。
このように立体的な像を円盤に表す前段階として、銅製の鏡の鏡面に、仏や神の像を線刻で表した「鏡像」(きょうぞう)がありました。鏡像は10世紀ころから登場します。なぜ銅製の鏡面に像を表すようになったかについては諸説があり、その一つに、日本における神と仏の信仰の融合があります。日本では、インドに由来する信仰である仏教とは別に、神に対する古くからの信仰があり、銅鏡はその神が宿る「依り代」(よりしろ)とされました。仏教が伝来して以降、ある特定の神に特定の仏を対応させる考え方が広がり、依り代である鏡に仏教の像を表すようになったのです。12世紀以降は像がしだいに立体的となり、鏡を模した板に立体的な像を取り付けた「懸仏」が主流となりました。
収録されているデータベース
ColBase
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最終更新日
2026/07/20