解説
鰐口とは仏堂に吊り下げ、撞き鳴らされる梵音具の一つ。本品は長野県松本市宮渕町より出土したもので、長保三年に極楽寺へ納められたもの。紀年銘のある鰐口としては現存最古で、同時に出土した蝶形磬と併せて梵音具の基準作である。
お寺を訪れ、本堂の仏像を礼拝する際には、ぜひ軒先に注意をしてみてください。高いところに丸い円盤のようなものが掛かっていることがあります。円盤の前には綱(つな)が下がり、その端はあなたの目の前まで下がっています。綱の端を握って振り、上手く円盤にあてることができたなら、「コーン」という音がするはずです。この円盤が「鰐口」です。今も日本の多くの仏教寺院では、鰐口が使用されています。音を鳴らして、仏に「今やって来ましたよ。」と告げるための合図なのです。
鰐口とは「動物のワニの口」という意味です。現在の日本語でいうところのワニではなく、昔はサメのことをさしました。ではその形をみてみましょう。平たい皿を2つ合わせたようで、中は空洞です。側面の下のほうには大きな隙間が空いており、ワニの口のようであることから、このように呼ばれてきました。隙間を空けたのは、音の響きをよくするためです。
全体は青銅の鋳造で作られています。青銅を使うのも、音の響きがいいからです。縁には唐草文様、中心には7つの円を組み合わせた文様が表されています。中央と縁との間の区画には銘文があります。長保(ちょうほう)3年、1001年という年記とともに、極楽寺(ごくらくじ)という寺院の名と、この鰐口の製作を企てた人物の名が記されています。1001年という年記は、現存する日本の鰐口に記されたものとしては最も古く、貴重な作品です。およそ1000年も前から鰐口が製作され、現在もその形式がほとんど変わっていないことに驚かされます。
収録されているデータベース
ColBase
ColBase: 国立文化財機構所蔵品統合検索システムは、国立文化財機構の4つの国立博物館(東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、九州国立博物館)と一つの研究所(奈良文化財研究所)の所蔵品を、横断的に検索できるサービスです。
最終更新日
2026/07/20