解説
盤とは丸くて大きな皿のことです。この盤は直径が46センチと大型で、平たい皿というよりは、浅い鉢のような形をしています。銅を叩いて打ち延ばしながら形を整え、表面には連続して展開する花と蔓の文様を線刻し、全体に金メッキをしています。いっけん牡丹にも見えるこの花は、宝相華(ほうそうげ)といい、仏教美術の装飾文様に頻繁に登場する架空の花です。さて、この盤には、いったい何が入れられていたのでしょうか?
その大きさと形、仏教に関係のふかい文様などから、この盤の中心には仏像が据えられ、その周りを水や茶などの液体が満たしていたと考えられています。おそらくその仏像は、生まれたばかりの釈迦の姿。両足でしっかり立ち、右手を上げて天を、左手を下げて地を指さす、「誕生仏」のお姿だったはずです。タイトルにある「灌仏」(かんぶつ)とは、仏の頭から聖水を注ぐということ。釈迦の誕生日である4月8日、誕生仏の頭から聖水をかけてお祝いする「灌仏」の儀式は、仏教の伝来とともに日本に定着しました。奈良の大仏で有名な東大寺には、奈良時代8世紀に造られた灌仏盤と誕生仏のセットが伝わっています。この行事は今なお4月8日、日本各地の寺院で行われており、仏像の頭に甘茶をかけてお祝いする人々の姿があります。
あらためてこの灌仏盤を見てみましょう。巧みな叩きのばしの技術によって、薄造りに仕上げられており、想像を裏切る軽さに驚かされます。器の丸みやすぼんだ口、細やかな宝相華の文様は、おだやかで美しい表現が好まれた12世紀の日本美術の特色をよく示しています。
釈迦【しゃか】の誕生日である4月8日には、生まれた時の姿を表すとされる「誕生釈迦像【たんじょうしゃかぞう】」に甘茶【あまちゃ】をかけて礼賛【らいさん】・供養する灌仏会【かんぶつえ】(花祭り)が行われ、現代に続いています。この時、釈迦像を安置し甘茶を受ける盤が灌仏盤です。側面全体を使って線刻で表された宝相華唐草文【ほうそうげからくさもん】が大変優美です。
収録されているデータベース
ColBase
ColBase: 国立文化財機構所蔵品統合検索システムは、国立文化財機構の4つの国立博物館(東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、九州国立博物館)と一つの研究所(奈良文化財研究所)の所蔵品を、横断的に検索できるサービスです。
最終更新日
2026/07/20