解説
うっそうとした山の中、岩の上で目を伏せ、静かにもの思いにふけっているのは、如意輪(にょいりん)観音です。如意輪観音は人々のあらゆる願いを叶えるといわれ、どのように人々を救おうかと考えている姿で表されます。
左手が触れている場所が金色に光っています。仏の教えを説く経典には、如意輪観音は光明山(こうみょうさん)、つまり光り輝く山に触れるということが記されていて、この作品では金色に光る岩に触れることでそれをあらわしています。
描いたのは、京都にある禅宗寺院・東福寺の周辺で14世紀に活躍した、良全(りょうぜん)です。画面右下に「良全筆」というサインがあります。良全について詳しいことはわかっていませんが、14世紀の作品で画家の名前が残っていることは珍しく、貴重です。
この作品は、墨を使ってモチーフを描く水墨画で、墨の濃淡を使い分けて奥行きのある空間をあらわしています。墨の黒が主に使われる中で、如意輪観音を際立たせているのが金色を用いた表現です。粉末状にした金を基にした金泥(きんでい)という絵具を使い、宝冠やアクセサリー、身に着けた衣のもよう、台座になっている蓮の葉脈などを繊細に表現しています。このような金泥の付け方は、伝統的な仏を描いた絵画などに良く見られます。
墨の濃淡の中で、金で彩られた部分がひときわ鮮やかな作品です。
良全は14世紀に京都・東福寺の周辺で活躍した画家。本作は重厚な雰囲気をもつ水墨仏画の名品として知られるもの。墨の濃淡を使い分けた背景や、鋭い筆法による樹や岩、着衣や宝冠などに施された繊細な金泥文様が見どころです。右下には良全の落款が金泥で記されています。
@とうふくじ@のうたん@せんさい@きんでい@らっかん
収録されているデータベース
ColBase
ColBase: 国立文化財機構所蔵品統合検索システムは、国立文化財機構の4つの国立博物館(東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、九州国立博物館)と一つの研究所(奈良文化財研究所)の所蔵品を、横断的に検索できるサービスです。
最終更新日
2026/09/21