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解説

 乱舞し絡[から]まる葡萄。画家の内面を映すかのように、筆さばきは強く激しい。水戸藩士の杏所は、藩主から夫人の養母への作画を求められ、自分は職業画家ではないと拒否、豪飲して描いた。左下に「沈酔[ちんすい]」(酔いつぶれ)の語がみえる。武士の覚悟が伝わる名作だ。


画面いっぱいに、葡萄の実や蔓(つる)、大きな葉が力強く描かれています。よく見るとモノクロではなく、墨と藍の2色が使われていて、それによって立体感や奥行きが感じられるようです。墨がにじんだ微妙なグラデーションの葉には葉脈が透けてみえます。ところどころかすれた線や、藍色のしぶきが飛んだように表された部分など、ダイナミックな勢いを感じさせます。作者はどんなふうに、この絵を描いたのでしょうか。
作者の立原杏所(たちはらきょうしょ)は水戸藩の武士でした。藩主・徳川斉昭(なりあき)から、宴席で人々の前で絵を描くことを求められましたが、自分は職業画家ではなく、あくまで武士であるといって、決死の覚悟で拒否をしました。そして大酒をあおり、翌日、藩主の前でまだ酔いののこった状態で、この絵を描いたといわれています。本来は緻密で正確な絵を描くことができる画家が、藩主との緊迫した関係のもと、この激しい作品をのこしたことに、武士の覚悟が感じられるようです。

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2026/07/20