解説
総勢10名の職人たちを左右に番い、経師を判者として月と恋を題に和歌を詠み競わせた職人歌合絵の現存最古作。伏見宮貞成親王(ふしみのみやさだふさしんのう)(1372~1456)筆とされる奥書によれば、花園院(はなぞのいん)(1297~1348)周辺で制作されたという。もとは京都の門跡寺院曼殊院(まんしゅいん)に伝来した。
鎌倉時代の初め、建保2年(1214)の秋のころ、京都にある藤原氏ゆかりの寺、東北院の念仏会(ねんぶつえ)に集まった職人たちが、貴族にならって歌合をしたという設定の歌合絵です。
職人たちが左右に分かれて「月」と「恋」の歌を詠み、経師(表具や)が判者となって、歌の勝ち負けを決める歌合が描かれています。
左右それぞれが向き合って座るように描かれているのは、伝統的な歌合絵の形式にならっていますが、登場するのはみやびな貴族たちではなく、医師に陰陽師(おんみょうじ)、鍛冶やと大工、刀磨(とぎ)師と鋳物(いもの)師、巫女(みこ)と博打打ち、海人と行商人の計10人の職人たち。身ぐるみはがれた博打打ちの哀れな姿など、当時の風俗をリアルに写しています。
詠まれている歌の内容も、お笑いやパロディ満載。
絵と同様、当時の職人たちの風俗や心情を伝えています。たとえば、博打打ちの恋の歌
我こひ(恋)は かたおくれなる すぐろくの
われても人に あはんとぞおもふ
百人一首にもある崇徳院の有名な歌
「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の
われても末に 逢はむとぞ思ふ」のパロディでしょう。
それに対する年老いた巫女の歌は
君とわ(は)れ くち(口)をよせてぞ ねまほしき
皷(つづみ)もはらも うちたゝきつゝ
なんともはや、すさまじい世界ですね。
収録されているデータベース
ColBase
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最終更新日
2026/05/25