解説
版画を描かず、肉筆画に専心した宮川長春の代表作として知られる画巻。武家屋敷で芸を披露する女舞(おんなまい)の一行を描いたもので、屋敷に向かって路上を進む場面に始まり、屏風の陰で身繕いをする場面で終わります。狩野派風の屏風や、精緻で可憐な彩色など見どころも多い作品です。
全体を三つの場面に分けて描いた絵巻です。作者の宮川長春は、江戸時代に活躍した浮世絵師ですが、版画は手がけず、肉筆の浮世絵を多く生み出しました。「風俗図巻」はその代表作です。
右から、梅の咲く春の景色の中、女舞の役者と思われる女性とお付きの女性、衣裳や小道具を運ぶ男性のグループが、羽織姿の侍に案内されて道を進んでいます。前方には、桶の箍(たが)をかける職人や魚屋をはじめ、子どもや女性、さまざまな通行人が描かれています。
中央の場面は、武家屋敷の奥座敷のようです。高貴な身分の奥方と女中たちが、御簾(みす)越しに芸能を鑑賞しています。男性は一人も描かれていません。御簾にもっとも近く、一人敷物に座っているのが主人の女性でしょう。きものは四つ葉の葵紋。将軍家の大奥を連想させますが、もしかしたら、まさにそういった場で現実に行われた興行を記念して、特別注文された絵なのかもしれません。大きなサイズから言っても、これは庶民が手にとるような絵巻ではなかったようです。
さらに左に目をうつすと、ようやく舞台が見えてきます。御簾の内側の鑑賞者たちに向け、傘踊りを披露する主役の役者。そのうしろに、楽器を手にする囃方(はやしかた)や、他の役者などがひかえています。墨で描かれた屏風をはさんだうしろには、出番を待って準備をする役者たちの楽屋風景が描かれています。
大きく描かれた人物のほとんどが女性で、とても華やかです。衣裳の柄、色合いなど、それぞれのファッションが細やかに描き分けられているのも見どころです。
収録されているデータベース
ColBase
ColBase: 国立文化財機構所蔵品統合検索システムは、国立文化財機構の4つの国立博物館(東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、九州国立博物館)と一つの研究所(奈良文化財研究所)の所蔵品を、横断的に検索できるサービスです。
最終更新日
2026/07/20