解説
江戸で最も古い装剣金工である奈良派の名工利寿の傑作。激しい雨、荒れ狂う波を高肉彫で表し、洞窟を透彫にして、その前の岩上に虎を配している。利寿は安親、乗意とともに奈良三作と言われて高く評価され、とくに動的で迫力のある作風を得意とした。
雨雲が立ち込め、波が激しく打ちつける洞窟。そのなかに一頭の虎がいてじっと前を見据えたままうずくまっています。岩肌や雲、波はレリーフのように半立体に彫り出し、虎は裏からみても本物の虎ように立体的に彫り上げ、洞窟は鐔自体をくり抜いてあらわしています。厚みのある鉄の板を使ってモチーフに立体感を持たせ、大変重厚な印象を与えます。作者の奈良利寿は17世紀のおわりから18世紀のはじめに江戸、現在の東京で活躍し、数少ない鐔の作品では暗い色調の厚い鉄の板を素材として、モチーフをくり抜く技法を巧みに利用して立体感を生み出す表現を得意としました。この鐔のように、戦争のない平和な時代のなかでつくられた刀装具には、作者の個性が溢れ、金属工芸の技術が成熟していったのです。
収録されているデータベース
ColBase
ColBase: 国立文化財機構所蔵品統合検索システムは、国立文化財機構の4つの国立博物館(東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、九州国立博物館)と一つの研究所(奈良文化財研究所)の所蔵品を、横断的に検索できるサービスです。
最終更新日
2026/07/20