解説
火炎宝珠をにらむ龍の姿は迫力に満ち、波濤(はとう)は躍動感に溢れています。薄い貝片を用いながら、龍の頭部と胴体、背びれや腹で発色が異なるように貝片を使い分け、精細に切り出された貝片を並べてモチーフを表わす手法は、元時代の螺鈿の特色です。まさに当代の螺鈿を代表する作品といえます。
黒漆(くろうるし)を塗った器(うつわ)の表面に、薄く切った貝殻を組み合わせて文様を表わす工芸技法を螺鈿(らでん)といいます。中国では、まるで白く輝く絵画のような文様を表わす螺鈿が盛んに作られました。
この作品は、元時代に作られた螺鈿の盆です。盆の形は、8つの尖った花びらをもつ花のようです。シャープな姿、形は、元時代の特徴といえます。そして盆の中央には、螺鈿によって、五本の爪をもつ龍が体を大胆にうねらせている姿が表わされています。龍の目の前には魔法の玉である火焔宝珠(かえんほうじゅ)が飛び、龍のまわりには雲が沸き立ち、波が逆巻いています。龍の鱗(うろこ)の一枚一枚、また躍動する波がしらを見れば、貝を緻密に加工する高度な技術が用いられていることがわかります。さらには、龍の鱗には青い貝を使い、ヒレには赤い貝を使うといったように、貝の色を選んでいるあたりにもデリケートな感性がうかがえます。中国螺鈿の名品として名高い作品です。
収録されているデータベース
ColBase
ColBase: 国立文化財機構所蔵品統合検索システムは、国立文化財機構の4つの国立博物館(東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、九州国立博物館)と一つの研究所(奈良文化財研究所)の所蔵品を、横断的に検索できるサービスです。
最終更新日
2026/07/20