寒山拾得図(禅機図断簡) The Eccentrics Hanshan and Shide (From a Scroll of Zen Paintings)かんざんじっとくず ぜんきずだんかん
解説
因陀羅【いんだら】は、本図の款記より、法名を壬梵因といい、開封【かいほう】の大光教禅寺に住し、大師号を授けられた高僧とわかります。本図は禅林とその周辺の人物にかかわる逸話を主題にした禅機図巻(ぜんきずかん)の断巻といわれます。浅野家旧蔵品。(植松氏執筆)(20180828_t08)
作者の因陀羅(いんだら)は、元時代14世紀に、中国・華北地方の開封(かいほう)にあった光教禅寺(こうきょうぜんじ)という寺院の住職を務めた禅宗の僧です。禅宗とは、座禅を通した体験を重視する仏教の宗派です。因陀羅は禅僧として、その名を高めましたが、禅宗の祖師たちを水墨で描く画家としても活動しました。この作品では、不可思議な笑みを浮かべながら、二人にしかわからない世界で語り合う、寒山(かんざん)と拾得(じっとく)の姿を描いています。寒山と拾得は、唐時代に天台山(てんだいさん)の国清寺(こくせいじ)に住みついたという僧侶で、ともに常識を超えたふるまいで有名でした。そのため、後に、禅の世界で聖者として崇拝されるようになります。
因陀羅の水墨人物画の特徴は、非常に個性的な線描にあります。一見無造作に、そっけなく引かれたような墨線ですが、じっと眺めていると、自信に満ちた無駄のない筆さばき、そして独特のリズムを感じとることができるでしょう。これは、いたずらな華やかさを求めない禅の精神にも通ずるものがあります。
絵の中に書かれた文字や文章を、賛(さん)といいます。この賛は楚石梵琦(そせきぼんき)が記しています。彼は元時代の有名な禅僧で、日本から留学してきた僧侶たちとも親交がありました。因陀羅の現存作品の大半が日本にあるのは、そうした日中の禅僧の交流を通じてもたらされたためでしょう。この作品は、もともとは、寒山拾得以外にも様々な禅の祖師を描いた長い巻物の一部であったと推測されています。それを日本で「茶の湯」の席に掛けるにふさわしいよう、短く切って掛幅装(かけふくそう)に改めた可能性があります。
収録されているデータベース
ColBase
ColBase: 国立文化財機構所蔵品統合検索システムは、国立文化財機構の4つの国立博物館(東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、九州国立博物館)と一つの研究所(奈良文化財研究所)の所蔵品を、横断的に検索できるサービスです。
最終更新日
2026/07/20