解説
心にしみいるような淡墨の山水描写が魅力的です。南宋の禅僧である雲谷老師@うんこくろうし@は、李@り@という画家に本図を描かせて、自室に居ながらにして瀟湘(湖南省洞庭湖にそそぐ瀟水・湘水一帯)の名勝に遊ぶ気持ちを楽しんだといいます。清朝の乾隆帝愛蔵の四名巻の一つとして知られます。
中国・清朝最盛期の皇帝である乾隆帝(けんりゅうてい)が特に愛した、名品中の名品として知られる、山水図を描いた画巻です。巻末に記された跋文(ばつぶん)により、南宋時代、12世紀に、雲谷老師(うんこくろうし)と呼ばれる禅僧のために描かれたものとわかります。雲谷老師は旅を愛し、様々な場所をまわりましたが、景色の良いことで有名な湖南省(こなんしょう)の瀟湘(しょうしょう)を訪れることはかないませんでした。年を取って故郷に隠棲してから、そのことを悔やみ、李(り)という画家に瀟湘の景観を描いてもらったのがこの作品です。こうして、雲谷老師は自室にいながらにして、瀟湘の地を旅する気分を味わえるようになりました。このように、体は臥(ふ)せったままで、心を山水に遊ばせることを、臥遊【がゆう】といいます。
瀟湘は、「しょう」という二つの川が、洞庭湖(どうていこ)という湖に流れ込む地域一帯を指します。山々はなだらかで、木々が豊かに葉を茂らせ、湿潤な空気が立ち込める中、人々がのどかな生活を営んでいます。画家は、ごく淡い墨を繊細に重ねて、霞の中に反射するやわらかい光を見事にとらえ、非常に細かい筆線で、漁師の舟や水辺の葦、飛んでくる雁の群れなどを描きこみます。いつまで見ていても飽きることのない、そして一度見たらいつまでも心の中に大切に残しておきたいと思えるような、美しい風景です。
収録されているデータベース
ColBase
ColBase: 国立文化財機構所蔵品統合検索システムは、国立文化財機構の4つの国立博物館(東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、九州国立博物館)と一つの研究所(奈良文化財研究所)の所蔵品を、横断的に検索できるサービスです。
最終更新日
2026/07/20