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洞山渡水図 The Zen Monk Dongshan Crossing a Stream

解説

馬遠(ばえん)は南宋中期を代表する画院画家で山水人物画をよくしました。本図は曹洞宗の祖師洞山良价(とうざんりょうかい)が行脚の途中、水を渡った際に自分の影を見て悟りを得た刹那を描いたもので、馬遠派の傑作の一つとされます。相阿弥(?~1525)の外題を伴います。


 洞山(とうざん)は禅宗の一派である曹洞宗(そうとうしゅう)の祖師、洞山良价(とうざんりょうかい)のこと。洞山は行脚(あんぎゃ)の途中で川を渡り、水面に映る自分の姿を見て、禅の真理を悟ったといいます。この「洞山渡水図」はその悟りの瞬間を描いたものです。上には、13世紀、南宋時代の皇后が記した賛(さん)があります。
 右手で杖を持ち、左手で衣をたくし上げる洞山は、わずかに笑みを浮かべて水面を見つめています。顔は皮膚の質感を伝えるように柔らかな墨線でかたどられ、目や鼻のまわりには繊細な陰影が施されます。切れ長で上瞼(うわまぶた)の線をやや濃く引いて表されるまなざしは、気品をたたえながらも、高い徳をもった僧侶の強い意志を感じさせます。背景は余白が多くあっさりとしていて、洞山の足元には緩やかな波の線、左側に川辺の草原、右上に藍色(あいいろ)にかすむ遠い山の影が見えます。落款(らっかん)はありませんが、このような精緻な人物描写と、余韻のある背景描写は、南宋時代を代表する宮廷画家であった馬遠(ばえん)、もしくはその工房によるものと考えられてきました。馬遠は、仏教絵画の制作を家業とする一族に生まれました。山水画の表現としては、厳選されたモチーフを画面の隅に集め、大きくとった余白に空間の奥行と情感の高まりを感じさせる構図を得意としました。
 この作品ともとはセットであった作品として、やはり禅宗の一派である雲門宗(うんもんしゅう)の祖師、雲門文偃(うんもんぶんえん)と、法眼宗(ほうげんしゅう)の祖師、法眼文益(ほうげんぶんえき)を描いた2幅が知られています。ともに現在は京都の天龍寺(てんりゅうじ)が所蔵しています。

メタデータ

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収録されているデータベース

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2026/07/20