解説
朱端(しゅたん)は海塩(浙江省)の人です。弘治14年(1501)に画院画家となり、山水画をよくし、後、正徳帝【せいとくてい】から「欽賜一樵図書」印を賜りました。粗放な筆墨法を特色とする画家で、本図は雪景山水の優品としても知られる代表作です。曼殊院旧蔵品。(130409_t081)
雪の積もった崖(がけ)が川面にせり出しています。その後ろには釣り人をのせた小舟が浮かびますが、その上にもうっすらと雪が積もり、釣り人は寒そうに身を縮めています。ほかに動くものもない、しんと静まり返った川、そこに釣り糸をたらす孤独な、しかし自由な人物の姿は、理想的な隠遁(いんとん)生活の象徴であると考えられ、自然の景観を描いた中国の山水画に、たびたび取り上げられてきました。
作者である朱端(しゅたん)は、16世紀前半に活躍した明時代の宮廷画家です。本図にみられる、雪山や樹木を画面の左下に集め、右上に広く空間を開ける大胆な構図は、13世紀、宋時代の宮廷画家が確立した山水画の様式に由来します。朱端はこのように古典的様式をよく学ぶ一方で、墨や筆の使い方においては、新しい時代の好みを取り入れています。例えば、雪が積もっているため白く浮き上がってみえる崖(がけ)や樹木の陰になった部分に、朱端はかなり濃い色の墨線を激しい調子で描き加えています。この墨線は、ごつごつした岩の表面や樹木の幹の質感を表すためのものですが、それに加えて、白と黒の明暗が荒々しく対比される、抽象的(ちゅうしょうてき)な美しさも計算されているようです。このような、激しく荒々しい墨や筆の使い方は、16世紀以降、中国山水画家の間で広く流行していきますが、朱端はその流れを決定づけた画家のひとりと位置付けられるでしょう。
収録されているデータベース
ColBase
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最終更新日
2026/07/20