解説
蕭雲従【しょううんじゅう】は蕪湖(安徽省)の人。明末清初の個性派画家として知られ、呉派【ごは】の画風を基礎に奇想と幻想に充ちた画風を摂取して新意ある作品を描きだしました。本図は風俗画としても興味ある内容をもつもので、清新な色彩が見事です。清の乾隆帝【けんりゅうてい】内府旧蔵品。
蕭雲従(しょううんじゅう)は、中国南方の安徽(あんき)地方出身で、17世紀、明から清への王朝交代期を生きた画家です。高級官僚を志(こころざ)し、科挙試験に何度も挑戦しますが、結局合格しないままに、明が滅亡してしまいます。王朝交代の動乱により、蕭雲従は故郷からの避難をよぎなくされたといいます。そしてその後は、異民族の王朝である清には使えようとせず、在野の文人画家として活動しました。安徽地方は、当時、良質の版画制作地として知られていました。蕭雲従は、その版画の原図を描いた画家として有名です。日本の画家たちにも愛読された山水図集『太平山水図』(たいへいさんすいず)や、古代文学の挿絵集『離騒図』(りそうず)などが、版画の代表作です。
この「秋山行旅図巻」は、蕭雲従の肉筆による長大な画巻で、版画では確認できない、彼の繊細な筆さばきや色彩感覚がわかる貴重な作例です。画巻の前半部分は、隙間なく組み合わされた山々の間を進む旅人たちが描かれます。色づく木の葉から、季節は秋と推測されます。後半部分は、余白を多くとった水辺の景色が展開していきます。どこか実際の景観を思わせる寺院や五重塔も見えます。全体にあたたかみのある淡い彩色が施され、人びとや馬、牛、舟などはいずれも、わざとつたなく描写されているようで、なんともいえない、のどかさ、可愛らしさがあります。また、山々や道、水面、空は、合理的な奥行の感覚を無視してつなぎ合わされていき、見る人に、夢幻の中をただようような気分を味わわせてくれます。巻末には、蕭雲従が62歳の時に書いた文章があり、この作品は数十年前に描いて行方不明になっていたもので、年老いた今はとても真似できない力強さと細やかさがあると述べています。
「秋山行旅図巻」は、後に、清の第6代皇帝、乾隆帝(けんりゅうてい)のコレクションに入りました。画中には皇帝の題詩や所蔵印が多くみられます。清の宮廷であつらえられた、箱や包裂(つつみぎれ)、巻紐(まきひも)、玉(ぎょく)製の紐止めのツメなども、そのまま一緒に伝わっているという点でも貴重な作品です。
収録されているデータベース
ColBase
ColBase: 国立文化財機構所蔵品統合検索システムは、国立文化財機構の4つの国立博物館(東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、九州国立博物館)と一つの研究所(奈良文化財研究所)の所蔵品を、横断的に検索できるサービスです。
最終更新日
2026/07/20