解説
ふっと物音などに気づいたような一瞬を見事にとらえた猿の姿の埴輪(はにわ)です。
現状では両腕と下半身が失われ、本来の詳しい形はわかりません。しかし、背中におおきくはがれた痕が残っていることから、もとは子猿を背負っていたとも考えられています。そうだとすれば、これは子猿を気にするように母猿が顔を傾け、まもり育てる姿を表わしているのかもしれません。
額の張り出しや小さな鼻に伸びた鼻下、あどけない口元、そして見開かれたアーモンド形の目が印象的です。その顔には、うっすらと赤い彩色(さいしき)が残り、単純化された素朴な形のなかにも、実にみごとに猿の特徴がとらえられています。猿をかたどった埴輪は他に例がなく、さまざまな形が作られた埴輪の多様性を考える上でもきわめて貴重な作品と言えます。
この埴輪が出土したと伝えられる沖洲大日塚古墳(おきすだいにちづかこふん)は、全長が約40mの帆立貝のような形をした古墳で、現在も雲母片岩(うんもへんがん)という石の板を組んだ横穴式石室(よこあなしきせきしつ)が残されています。
非常に珍しい、猿の埴輪です。子猿を背負っていた痕跡が背中にあります。本物の猿同様に顔が赤く塗られ、子猿に目配せをするように振り返る様子が表現されています。古墳時代の人々の動物への興味関心を知ることができる傑作です。
収録されているデータベース
ColBase
ColBase: 国立文化財機構所蔵品統合検索システムは、国立文化財機構の4つの国立博物館(東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、九州国立博物館)と一つの研究所(奈良文化財研究所)の所蔵品を、横断的に検索できるサービスです。
最終更新日
2026/08/10