解説
これは、奈良時代のはんこです。四角い縁取りの中に、向かって左上から「御笠(みかさ)」と「団印(だんいん)」の4文字が縦2列に並んでいます。はんこなので、実際に押した時には文字が逆になります。それにしても、現在使われている漢字とは形が違うようです。この漢字は、篆書(てんしょ)と呼ばれる、中国の古い書体です。つまみの部分には、アルファベットの「T」のをさかさまにしたようなマークがあらわされています。このマークが前にくるように印を押せば、文字が正しい向きになるというわけです。素材は銅の合金で、それを鋳型(いがた)に流しこんで作られました。文字のある面は約4cm四方、高さが5cmほどと大ぶりのはんこですから、手に持てばずっしりとその重みを感じることでしょう。
御笠というのは当時の地名で、筑前国(ちくぜんのくに)、現在の福岡県にあった御笠郡(みかさぐん)を指すとされています。「団」とは奈良時代の法律である律令(りつりょう)で定めた軍事・警察組織の軍団の
ことです。つまり、御笠団は筑前の国に属していた軍団であり、この印は、御笠団が公式の文書などに使ったものと考えられます。そうであれば、この重厚感にも納得がいきますね。筑前国には、この御笠団を含め4つの軍団があったといわれています。東京国立博物館には、このうち、遠賀団(おんがだん)の印である「遠賀団印(おんがだんいん)」も所蔵されています。この二つは大きさもデザインもよく似ています。これらの団印は、文字資料としての価値はもちろん、当時の軍団の存在を裏付ける歴史資料としてもとても貴重です。
隋唐の影響を受け、奈良時代には文書に公印を押すことが始まります。当初は天皇御璽や中央の官省、諸国の印が使われ、のちに倉印や郡印、寺印などが作られました。この印には古代の軍団名として左に「御笠」、右に「団印」の2文字が縦方向に表されています。
収録されているデータベース
ColBase
ColBase: 国立文化財機構所蔵品統合検索システムは、国立文化財機構の4つの国立博物館(東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、九州国立博物館)と一つの研究所(奈良文化財研究所)の所蔵品を、横断的に検索できるサービスです。
最終更新日
2026/07/20