解説
18世紀後期にはいると、舶来学術書は幕府ばかりでなく、民間でも入手されるようになり、その銅版図版の精緻で写実的な表現が注目されるようになります。平賀源内は、家財道具を売り払って『ヨンストン動物図譜』を購入し、さらに、その源内に刺激・薫陶をうけた絵師・司馬江漢が、日本初の銅版技術開発を目指すようになります。しかし、長崎出島に幽閉同然のオランダ人から懇切な指導を得ることも期待できないので、舶来洋書に記された説明だけを手がかりに、技術の「移転」というよりは「再現」に近い形で、日本人だけの手で銅版画の実用化が模索されました。なお、江漢と、彼に協力した大槻玄沢が参考とした舶来洋書は、フランス人ノエル・ショメール原著『日用家庭百科事典』のオランダ語増補版だったと推測されています。こうして、日本最初の腐食銅版画作品として生まれたのが「三囲景」です。 現在の東京の中心を流れる隅田川(墨田川)、その浅草橋よりも少し上流の上空に視座を置き、北方を眺望する景観です。現在の状況からは想像もできないような田園風景が広まっています。本図は実際の風景とは左右逆に描かれていますが、反射式のぞき眼鏡で覗いてみたときにはじめて本来の景観を鑑賞することができるという趣向です。 川舟を浮かべる隅田川を大きく配し、弓なりにはるかに続く隅田堤、一段低く左に三囲稲荷社の鳥居と参道を描きます。奥に見える鳥居は牛の御前と呼ばれた王子権現社。川をはさんで右は隅田川西岸で、真乳山からはじまり今戸橋、今戸瓦焼の窯から立ち昇る煙、さらに遠くには筑波山まで見渡しています。広い地域を見渡す構図は歌川豊春らの浮世絵版画の影響を強く受けていますが、随所に見られる点景人物は、江漢ならではのユーモアと親近感が感じられます。 【江戸の絵画】
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文化遺産オンライン
国や地方の有形・無形の文化遺産に関する情報を公開することなどを目的とした文化遺産のポータルサイト。文化庁と国立情報学研究所が、共同で運営しています。
最終更新日
2026/05/01