解説
この作品は近年、兵庫県高砂市内の旧家で発見された襖(ふすま)四面に描かれた蕭白の大作。墨色を巧みに使い分けて、屈曲した枝を伸ばす松の老木と二羽の孔雀(くじゃく)とが主要モチーフとして描かれている。 蕭白の作品は、個性的としか言いようのない独特の作風が喧伝(けんでん)されることが多い。しかし、蕭白が同時代の他の画家たちの作品、あるいは過去の時代の絵画作品と無縁であったわけでは決してない。 この「松に孔雀図」において、狩野永徳らによって確立された大画面構成の桃山時代障壁画を蕭白が視野に入れていることは、主題や老松の描写から明らかである。 過去の古典的な作品から得たインスピレーションを、糧として、新たな芸術を創造した画家は数多いが、本図のように、蕭白においてもそうした事例を指摘することができる。 (毛利伊知郎 中日新聞 1992年11月6日掲載)