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今様美人 / 国立国会図書館

水野年方と明治の浮世絵

浮世絵師にして日本画家の水野年方(1866 - 1908)。その画業の一部を紹介します。

浮世絵師にして日本画家の水野年方(1866 - 1908)。幕末・明治期の浮世絵の大家である月岡芳年に浮世絵を学び、明治後期には新聞の挿絵を多く手掛け、人気絵師として活躍しました。

その活動期間は長くありませんが、弟子には美人画の名手として知られる鏑木(かぶらき)清方や池田蕉園がおり、年方が近代日本画に与えた影響は小さくありません。

本展示では年方の画業の一部を、その師匠や弟子たちの作品とともに紹介します。

年方の師匠たち

水野年方は慶応2(1866)年、江戸・神田に左官屋の子として生まれました。

家業を継ぐべく父の仕事場に通い詰めていましたが、漆喰にコテで描いた花鳥画を見た父の仲間がその画才に驚き、絵の道を薦めたといいます。

13歳で明治を代表する浮世絵師である月岡芳年に入門し、浮世絵を学びました。

また、芳年の没後は花鳥画の名手として知られる日本画家、渡辺省亭にも絵を学びました。

ここでは、年方に影響を与えた絵師たちの作品をご覧ください。

月岡芳年・渡辺省亭の作品

明治41(1908)年に造営されたばかりの時の赤坂離宮(現・迎賓館)です。 渡辺省亭は「花鳥の間」の壁を飾る七宝焼きの下絵を描いています。

明治の浮世絵師たち―年方の生きた時代―

明治18(1885)年ごろの浮世絵師の人気番付です。

1位に年方の師匠の芳年が、12位に年方が登場しています。他にも2位「小林永濯(えいたく)」、3位「落合芳幾(よしいく)」、4位「豊原国周(くにちか)」、7位「尾形月耕」、11位に「楊洲周延(ちかのぶ)」、15位「小林清親(きよちか)」など、明治を代表する絵師の名が見えます。

また15位の「小林清親」は西洋画の手法と伝統的な日本の版画芸術を融合させた「光線画」を生み出したことで知られ、当館の電子展示会「NDLイメージバンク」でも特集しています。

ここでは、明治期に活躍した浮世絵師たちの作品をちょっとのぞいてみましょう。

明治の浮世絵師たち

年方の作品

年方は代表作『三十六佳撰』『今様美人』をはじめ、美人画・風俗画の秀作を残しています。

また、歴史画にも情熱をもっていたようで、弟子の鏑木清方によると、依頼ではなく自ら進んで描く場合は歴史をテーマにすることを好んだといいます。

ここでは、年方の作品のうち、美人画と歴史画を中心にご紹介します。

年方の美人画/風俗画

『三十六佳撰』はさまざまな時代の女性の風俗をテーマにした作品です。明治24~26(1891~1893)年にかけて制作されました。最も古いもので上代(奈良時代)、他にも鎌倉時代、室町時代、江戸時代の女性を描いています。 真面目な性格の年方らしく、当時の服装や髪型、背景の小物に至るまで、正確に描写するための時代考証を丁寧におこなったようです。

当館所蔵の『三十六佳撰』下絵です。完成版と見比べてみてください。

明治の女性の風俗を月ごとに描き分けた作品です。明治31~32(1898~1899)年にかけて制作されました。江戸時代までの風俗を描いた『三十六佳撰』との雰囲気の違いが感じ取れます。

年方の歴史画

歴史上の偉人の逸話を題材としたシリーズです。立身出世などの道徳を説くために描かれました。 明治18~23(1885~1890)年にかけて、当時の人気画家7人が集結して制作されました。シリーズ全体としては53点の存在が確認されていますが、そのうち年方の担当した点数は15点と、最多18点の小林清親に次いでいます。

年方の弟子たち

水野年方は教育面でも功績を残しました。彼の門下には近代日本画の大家である鏑木清方や、上村松園と並び称された女性画家の池田蕉園など、多くの弟子を指導しました。

弟子には美人画で優れた作品を残した者が多く、年方が近代日本画に与えた影響は小さくありません。

ここでは、年方の画家たちの作品をご覧ください。

このほか水野年方の作品は電子展示会「NDLイメージバンク」でもご覧いただけます。

ここに掲載されているもの以外にも魅力あふれる作品がたくさんありますので、ぜひご覧ください。

年方についてもっと知るための参考図書📖

タイトル人物/団体時間/時代場所所蔵機関データベース
金井確資 編, 八木恒三明35.2, 1902東京
川島正太郎 編, 真誠堂明35.12, 1902東京
鏑木清方 著, 双雅房1944.4, 1944東京
鏑木清方 著, 双雅房昭11, 1936東京
大野静方 著, 大東出版社1942.1, 1942東京