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緒方洪庵肖像 / 大阪大学適塾記念センター 所蔵

緒方洪庵

適塾を開いて多くの有能な人材を育成し、種痘の普及にも貢献した江戸時代の蘭学者

1810-1863(文化7-文久3)

江戸後期の医学者、蘭学者。備中国足守(びっちゅうのくにあしもり)(現在の岡山県岡山市)の生まれ。名は章、字は公裁。洪庵、適々斎また華陰と号した。文政10年(1827)17歳で大坂、次いで江戸に出て蘭医学を学び、天保7年(1836)長崎に行ってさらに蘭方の知識を深めた。天保9年大坂の瓦町で適塾(てきじゅく)(適々斎[てきてきさい]塾)を開き、多くの人材を育成した。適塾では医学よりはオランダ語の学習に注力し、西洋の事情や兵学を学ぶ俊英を全国から集めて、門下は2000~3000人に及んだといわれる。その中から福沢諭吉、橋本左内、村田蔵六(大村益次郎)、大鳥圭介らの人材が多く輩出した。『人身窮理小解』『視力乏弱病論』『和蘭詞解略説』などの訳書や、日本で最初の病理学書『病学通論』(3巻)をはじめ、『虎狼痢(ころり)治準』『扶氏(ふし)経験遺訓』などの医学書を著し、種痘の普及にも貢献。文久2年(1862)幕府に呼ばれて奥医師兼西洋医学所頭取となる。

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フランソワ・ハルマの蘭仏辞書を底本とした本格的な蘭日辞典。大阪大学適塾記念センター所蔵。長崎出島のオランダ商館長ドゥーフ(ズーフ)が中心となって編纂した。編纂開始は1812年(文化9)、完成はドゥーフ帰国後の天保4年(1833)。写本で流通したが、緒方洪庵の適塾でも塾生にさかんに利用され、その様子は福沢諭吉の『福翁自伝』に活写されている。掲載の画像は、適塾伝来の「ズーフハルマ」の一冊。当時の適塾塾生が使用した貴重な資料。

『福翁自伝』に描かれた、適塾の塾風。無頓着で不規則なものだったが、「学問勉強と云いふことになつては、当時世の中に緒方塾生の右に出る者はなからうと思われる」という。

ウェイランド Petrus Weiland 1754-1841 はオランダの説教者、文法研究家、辞書編纂者。1799年から編纂を開始した、Nederduitsch taalkundig woordenboek (『低ドイツ語(オランダ語)文法辞典』)を1811年に完成させた。緒方洪庵の適塾にもこの辞書があり、福沢諭吉の『福翁自伝』でも、「ウエーランドと云いう和蘭オランダの原書の字引が一部ある。それは六冊物で和蘭の註が入れてある。ヅーフで分わからなければウエーランドを見る。所が初学の間あいだはウエーランドを見ても分る気遣きづかいはない」と紹介されている。日本語の対訳がついていた「ヅーフ」辞書に対して、このウエイランドは解説もすべてオランダ語で初学者が使いこなすのは確かに難しい。

コレラの治療書。緒方洪庵訳述。安政5年(1858)8月に大坂でコレラが猛威をふるうなか、9月に限定100部で緊急出版された。オランダ軍医ポンぺが口授した内容を筆記し、さらにモスト、カンスタット、コンラジの蘭訳本を参照し、5~6日でまとめ、知人や門人の医者に無償配布した。当時はキニーネを治療薬とするポンペ説が流布していたが、洪庵自身の経験則も交えながら、症状や治療法が詳しく解説されている。

日本語で書かれた最初の病理学書。緒方洪庵訳述。嘉永2年(1849)刊。当初12巻の予定だったが、刊行されたのは、「生機論」「疾病総論第一」「疾病総論第二」の3巻のみ。表紙見返しに「嘉永二年己酉初夏新雕」「適適齋藏 青藜閣発兌」とある。

内科書。緒方洪庵訳。ドイツの医師、フーフェラントの『医学必携、臨床入門』(1833年)のオランダ語訳を、緒方洪庵が義弟・緒方郁蔵らの協力により重訳したもの。天保13年(1842)に翻訳に着手してから約20年、文久元年(1861)に全30巻の出版を終えた。

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  • 国史跡・重要文化財である適塾と、緒方洪庵およびその門人に関する歴史的遺産を継承し、適塾の運営・資料保存・調査研究を行うとともに、適塾に縁の深い大阪とオランダに関する学術研究を深めてゆくことを目的として設置されました。緒方洪庵、適塾関連資料のほか、多数の蘭学関係資料を所蔵しています。

  • 適塾の沿革、史跡・重要文化財、洪庵の業績、適塾の教育、適塾をめぐる人々、適塾とその周辺、年表、適塾関連行事、適塾記念会、適塾記念センターについて詳細に紹介。

  • クラウドファンディングサービスの「READYFOR」のサイトより。大阪大学の適塾関係のプロジェクトを紹介している。

  • 大阪大学適塾記念センターが所蔵・管理する「適塾関係資料」を収録した画像データベース。適塾を主宰した緒方洪庵、その家族、塾生らの活動を伝える資料や、蘭学・医学などに関するコレクションなど、多様な資料群を紹介する。

  • 緒方洪庵の生まれた岡山市によるサイト。

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参考文献

  1. 「緒方洪庵」の項
  2. 「緒方洪庵」の項
  3. 「緒方洪庵」の項
  4. 会田倉吉 著,吉川弘文館
  5. 歴史学研究会 編,岩波書店