本文に飛ぶ
元信/鳥巣和尚白楽天図 / 東京国立博物館

白居易

平安時代から日本でも愛読された唐代の代表的詩人。白楽天とも呼ばれる

772-846(大暦7-会昌6)

中国、唐代の代表的詩人。太原(たいげん、山西省)の人。姓は「白」、名は「居易」、字(あざな)は「楽天」で、白楽天と呼ばれることが多い。号は香山居士(こうざんこじ)。803年(貞元19)に任官し、806年(元和1)に『長恨歌(ちょうごんか)』(玄宗皇帝と楊貴妃の愛の生活をテーマとする)を作って詩人としての名声を高めた。その後、中央政府に入り、天子の秘書であり、政治の顧問でもある翰林学士となったが、その一方で社会の矛盾を批判して「新楽府(しんがふ)」などの一群の社会詩を作り、「諷諭詩(ふうゆし)」と名づけられた部類を立てた。しかし、母や幼い娘の死に遭って儒教的倫理観に疑いをもち、道教・仏教への関心を強めた。815年(元和10)の上奏文が原因で江州(こうしゅう)の司馬の地に左遷され、この失意のうちに作られたのが琵琶の音に合う詩としての『琵琶行(びわこう)』である。のち中央に復帰したが、晩年は洛陽に居を定め、842年(会昌2)に退官。846年(会昌6)に75歳で生涯を閉じた。墓は洛陽市竜門にある。

白居易自身は諷諭詩を最も評価していたが、晩年は閑雅快適の情を詠じるようになっていった。作風は難解さを避け、平易を基調とすることに特色があり、その名声は朝鮮、さらには日本にまで伝えられた。作品集は『白氏文集(はくしもんじゅう)』といわれ、清少納言が『枕草子』の「文(ふみ)は」の項で『文選(もんぜん)』とともに『白氏文集』に言及しているほか、『源氏物語』や『紫式部日記』、『徒然草』などでも『白氏文集』の引用、言及は数多く、我が国の古典文学に多大な影響を与えている。

関連するひと・もの・こと

本で知る

日本文学の中の白居易

もっと知りたい

白居易に関わる江戸時代以降の作品

板橋貫雄(いたばしつらお)による慶応2年(1866)の模写。板橋は住吉広貫(ひろつら)に絵を学び、同門には山名貫義(つらよし)、遠藤貫周(つらちか)などがいた。彼らは幕末に蜷川式胤(のりたね)と古美術模写を行っていたようで、本作は蜷川が東京国立博物館に寄贈。

模者不詳。

土佐光起(1617-1691)筆。画像は、白楽天の詩句「香炉峰の雪は簾をかかげて看る」を踏まえた中宮の「香炉峰の雪はいかならん」という問いに、清少納言が御簾(みす)を巻き上げて答えたという故事(『枕草子』299段)の場面。

白居易の詩一首を揮毫した色紙。筆者の畠山牛庵(ぎゅうあん、1625-1693)は、古筆了佐(こひつりょうさ、1582-1662)から古筆鑑定の術を学んだ直弟子の一人で、初代畠山牛庵(1589-1656)の子。畠山牛庵を名乗る3代中の2代目で、名を義高(よしたか)といい、君水随世(くんすいずいせ)、即翁(そくおう)などと号した。江戸本郷お弓町で鑑定の業を営み、古筆家と並んで権威を謳われた。極印は「牛庵」の瓢印を相伝したが、初代と区別するため「傳庵」の方印を併用している。この色紙の紙背の注記から、畠山牛庵の筆跡と知る。『和漢朗詠集』(巻上・冬夜)所収の白居易の詩一首を揮毫する。全面に金砂子を撒いたうえに、金泥で草花をあしらった華麗な料紙を使用。色紙帖作成にあたり、執筆を依頼されたものであろう。伝統的書法に習熟した筆致で、温和な上代様の書風を示す。「一盞の寒灯は雲外の夜、数盃の温酎は雪の中の春」

武家女性の打掛。江戸時代・18世紀の作品。藤の花房と亀甲文のような幾何学模様とを交互に配した「本辻」(ほんつじ)の打掛で、『和漢朗詠集』(上・藤)に載る白居易の歌「悵望慈恩三月尽(じおんにちょうぼうすさんげつのつくることを) 紫藤花落鳥関関(しとうはなおちてとりかんかん)」をモチーフとする。漢詩の一部がデザインされ、持ち主の教養をうかがわせる。

「寒流帯月澄如鏡」(寒流月を帯びて、澄めること鏡の如し)は、白居易の詩「江楼宴別」(七言律詩)の第五句に当たる。貝原益軒(かいばらえきけん、1630-1714)は、江戸時代前期の儒者・本草家・教育者。名は篤信(あつのぶ)、字は子誠。初め、柔斎(じゅうさい)・損軒(そんけん)と号し、益軒は晩年になってからの号。福岡藩黒田家の右筆役にあった父、寛斎(かんさい)の感化によって儒学に志した。19歳の時から出仕したが、翌年に藩主、黒田忠之の怒りにふれ、7年間の浪人生活に入る。再出仕してのち、江戸勤務中の父の手助けとして上府し、林鵞峰(はやしがほう、1618-1680)について学ぶ機会を得た。また、藩命による京都留学の間、松永尺五(せきご)・山崎闇斎(あんさい)・木下順庵(じゅんあん)らについて学んだ。帰藩してからは、藩主をはじめ家中一同へ儒学の講義を行った。

白居易の詩を記す。筆者の何く火+卓>(かしゃく、1661-1722)は鮮州長洲(中国江蘇省)の人。字は開千、のち<己+山>瞻(きせん)と改める。書は欧<衣+者>を学び、姜宸英(きょうしんえい)・汪士鋐(おうしこう)・陳奕禧(ちんばくき)と並び四大書家と称せられた。

中西耕石(1807-1884)筆。

葛飾北斎筆。江戸時代・19世紀の作品。

石野基顕(もとあき、1670-1741)は、江戸時代中期の公卿。持明院基時(じみょういんもととき、1635-1704)の二男。石野家を創設、その祖となる。正徳4年(1714)参議、享保3年(1718)5月に権中納言に任ぜられるが、同年12月に辞している。持明院書道の宗家に生まれた基顕は、書道・音楽(神楽)の名手としても知られる。これは、白居易の「琵琶行」(白居易が友人を見送った際、その舟中で琵琶を弾く女性に会い、その音色に感じ、彼女の身の上に同情、左遷の我が身のわびしさを重ね合わせて作った詩)の前半部分を、行書・草書を交えて整然と書写する。伝統的な書法をもって重厚かつ温和な筆致はかれの能書を証明する。基顕の伝存稀有なる遺墨。巻末に「ふちはらもとあきら(藤原基顕)戯書」と記すが、おそらく高貴の需めに応じて揮毫した手習手本であったと思われる。署名の姓名を仮名で書くところから、相手は女性であったか。

1883年(光緒9)の作品。筆者の任頤(じんい、字伯年)は紹興(中国浙江省)の人で、叔父の任熊(1823-1857)らとともに上海で活躍した「海上派(かいじょうは)」を代表する画家。「九老」とは白居易が香山(こうざん)で雅会を開いた故事。明末の画家、陳洪綬(ちんこうじゅ、1598-1652)に学び、洒脱な人物、明るく心地よい色彩に任頤の特徴がよく表れている。徐悲鴻(じょひこう、1895-1953)の旧蔵品。

月岡耕漁筆。明治31年(1898)の出版。

画題は白楽天。

国宝・重要文化財を探す

『長恨歌』に詠われた楊貴妃

見に行く

  • 国立国会図書館は、国会に属する唯一の国立の図書館です。国内外の資料・情報を広く収集・保存して、知識・文化の基盤となり、国会の活動を補佐するとともに、行政・司法及び国民に図書館サービスを提供しています。                                             

  • 日本と東洋の文化財を守り伝える中心拠点としての役割を担う我が国の総合的な博物館です。

  • 平安時代から江戸時代の京都文化を中心とした文化財を取り扱う地域に根ざした博物館です。

  • 「日本文化の形成をアジア史的観点から捉える」をコンセプトにした博物館です。

  • 独立行政法人国立公文書館は、国の行政機関などから移管を受けた歴史資料として重要な公文書等を保存管理しています。当館は、その保存実務から一般利用まで広く事業を行うことにより、歴史資料として重要な公文書等の適切な保存と利用を図ることを目的とした施設です。

  • 東京富士美術館は、1983年11月3日に東京西郊の学園都市・八王子にオープンしました。「世界市民を育む美術館」をモットーに、世界31カ国・1地域の美術館や文化機関との友好関係を築きながら、各国の優れた芸術を紹介する海外文化交流特別展を企画・開催しています。収蔵品は日本・東洋・西洋の各国、各時代の絵画・版画・写真・彫刻・陶磁・漆工・武具・刀剣・メダルなど約3万点に及び、とりわけルネサンス、バロック、ロココ、ロマン主義、印象派、現代にいたる西洋絵画500年の流れを一望できる油彩画コレクションと、写真の誕生から現代までの写真史を概観できる写真コレクションは国内有数のコレクションとして知られています。

  • 慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo)は、慶應義塾が長い歴史の中で蓄積してきた、美術、考古、文学、歴史、医学など多様な領域に渡る文化財コレクションと、その背後にある教育・研究活動をつなぐ「ハブ」となるミュージアムです。デジタルとアナログが融け合う環境のなかで、文化財(オブジェクト)を基点としてさまざまなコミュニティが交流し、新たな発見や発想を生み出す場となることを目指しています。

  • 1998年に設立したアート・リサーチセンター(ARC)は、私たち人類が持つ文化を後世に伝達するために、芸術、芸能、技術、技能を中心とした有形・無形の人間文化の所産を、歴史的、社会的観点から研究・分析し、記録・整理・保存・発信することを目的としています。ARCが有する日本文化資源の膨大なデータベースの利用を国内外の共同研究者に開放するとともに、これまでに蓄積してきたデジタル・アーカイブ技術やデータベース管理技術を研究プロジェクト活動の基盤として提供し、情報アーカイブ・知識循環型共同研究を推進しています。こうした取組を通して、デジタル・ヒューマニティーズ分野の“世界水準の研究拠点形成”を目指しています。

  • 愛知県名古屋市の中心部、栄に1955年に開館した「愛知県文化会館美術館」を前身とする愛知県美術館は、都市型の複合的な文化施設である愛知芸術文化センターの中の美術館として、1992年に開館しました。20世紀の美術を中心に、考古から現代美術にわたる約8,000件のコレクションを有し、また幅広いジャンルの展覧会を多数実現しています。地域の中核的な美術館として、より創造的で多様性に富む社会の実現に寄与すべく、美術・文化の発振地となることを目指しています。

  • 東京都世田谷区上野毛に所在。コレクションとして、寛喜3年(1231)から貞永2年(1233)の「白氏文集 金沢文庫本」(重要文化財)を所蔵。HPからも、コレクション>大東急記念文庫>漢籍へと進むと、作品を見ることができます。

  • 中国陝西省にある玄宗皇帝と楊貴妃ゆかりの地。『長恨歌』でも詠われている(四川省中国旅行社日本市場の窓口であるサイト 「セイナン・スカイ(Seinansky)」より)。

  • 中華人民共和国河南省洛陽市竜門に所在する墓。竜門石窟風景区にある香山琵琶峰の地で、墓の近くに日本中国文化顕彰会が建立した記念碑があります(「人民中国」インターネット版より)。

ジャパンサーチの外で調べる

  • 中国語学習サイト「中国語スクリプト」より。白居易の生涯と代表的な漢詩について解説している。

  • 中国語学習サイト「中国語スクリプト」より。白居易の代表的な漢詩『長恨歌』について、原文・書き下し文・現代語訳などを詳しく解説している。

  • 中国語学習サイト「中国語スクリプト」より。漢詩『香炉峰下新卜山居』(香炉峰下[こうろほうか]新たに山居[さんきょ]を卜[ぼく]す)について、原文・書き下し文・現代語訳などを詳しく解説している。。

  • 京都大学図書館機構が運営するサイト「京都大学貴重資料デジタルアーカイブ」の「京都大学所蔵資料でたどる文学史年表」より。

  • 京都大学図書館機構が運営するサイト「京都大学貴重資料デジタルアーカイブ」の「京都大学所蔵資料でたどる文学史年表」より。

  • 愛媛大学公式HPの「最先端研究紹介 infinity」より。

  • 日本芸術文化振興会が運営するサイト「文化デジタルライブラリー」より。キーワード検索で「白楽天」と入力すると、能・狂言「白楽天」の演目情報・資料情報が表示される。

  • YouTube。日本語の書き下し文を朗読したもので、画面に原文と解説文が表示される。

参考文献

  1. 「白居易」の項
  2. 「白居易」の項
  3. 「白居易」の項
  4. 川合康三 著,岩波書店
  5. 白楽天 [著],川合康三 訳注,岩波書店
  6. 片山哲 著,岩波書店
  7. 歴史学研究会 編,岩波書店