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室町時代の歌人の冷泉持為(1401~51)による古今和歌集講釈の聞書。*仮名序・*真名序はなく、春上から*墨滅歌までに注を施している。奥書によれば、宝徳2年(1450)秋、「花頂殿」という人物の競望に応じて持為が行った講釈の聞書を、文明9年(1477)に「宗雅」という人物(大内氏お抱えの山口の連歌師と推定される)が伝えたものである。持為の注としては不審な箇所も指摘されるが、総じて冷泉家流の注釈の特色が見て取れ、他書が本書の内容を持為説として引用すること等から、持為の注と認めてよいと考えられている。

広島大学図書館蔵本(ト872)写本4冊。書写奥書には、明応5年(1496)6月上旬、「紹慶」という人物の競望に応じて「愚老」(宗雅)が伝えたとある。各冊の外題は、「古今抄 春夏」「古今抄 秋冬賀離別羇旅物名」「古今抄 戀自一五迄」「古今抄 哀傷雑」と記される。


*仮名序(かなじょ)とは…歌集等の初めに付して由来・理念等を叙する和文体(仮名文)を基本とする序文。漢文体の「真名序」と対。本格的な仮名序は、紀貫之の古今集仮名序に始まる。また、古今集仮名序は歌学書としても重要である。

*真名序(まなじょ)とは…漢文で書かれた、歌集や歌会和歌の序。序は本来、正格の漢文で書かれるものであるが、古今集において、初めて仮名で書かれた「仮名序」が作られ、漢文の序は「真名序」として併置された。

*墨滅歌(ぼくめつか/すみけちうた)とは…撰集の編纂過程において切り出された歌について、これを丸々本文から削除してしまわずに、見せ消ち符号などを用いて他の歌と区別し、それが本来あった位置に書き留められた歌を指していう言葉。


【参考】

『冷泉持為注古今抄(広島大学蔵)上(下)』「翻刻平安文学資料稿」第3期第2・3巻(1996~1997年、広島平安文学研究会)

『和歌文学大辞典』(2014年、古典ライブラリー):中川博夫「仮名序」、三木雅博「真名序」、田中登「墨滅歌」