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伊勢物語の冷泉家流注釈書の一種。鎌倉時代から室町時代中期までの伊勢物語注釈は古注*と呼ばれ、冷泉家流注釈書はその古注の内容を伝える。古注は、伊勢物語にはもととなる事実(出来事)があると捉え、物語本文に書かれていない日時、場所、人名などを具体的に指摘するという特徴を持つ。その内容は、室町時代になると批判を受けるが、能や軍記物語、室町時代物語、浮世草子などの題材として広く受け継がれた。

広島大学図書館蔵本(国文N1907)伊勢物語初段から第67段までの零冊。分量的には伊勢物語のほぼ半分にあたるため、もと上下2冊であったものの上冊のみの部分かと見られるが、上冊の巻末数丁が失われた可能性も想定される。書写者、書写年、伝来は不明。


*古注とは…伊勢物語の注釈史における区分のひとつ。このほか、室町時代後期から江戸時代初期にかけての注釈「旧注」、それ以降の注釈「新注」がある。


【参考】

妹尾好信・辻野正人・森下要治校『定家流 伊勢物語 千金莫伝(広島大学蔵)』「翻刻平安文学資料稿」第3期第1巻(1995年、広島平安文学研究会)

山本登朗編『伊勢物語事典』(2025年、花鳥社):藤島綾「注釈史(平安時代~鎌倉時代)」