木芙蓉
源氏物語梗概書の中で、中世・近世を通じ最も流布したのが、『源氏小鏡』と汎称される一類である。作者については従来、耕雲(こううん、?~1429)とされてきたが、連歌用書としての性格や注記内容などから、14世紀中頃に二条良基(にじょうよしもと、1320~1388)またはその周辺で成立したとする説が有力である。現存する伝本数は極めて多く、様々な異名のものが存在する。その一つが「木芙蓉」と題される伝本群で、非青表紙本の源氏物語本文により梗概化され、古い形態を有する第一系統本(古本)*に分類される。
広島大学図書館蔵本(国文N2772)列帖装で、上(桐壺―少女)、下(玉鬘―夢浮橋)の2冊本。江戸時代初期写。奥書には「元久元年十一月初八日 正四位下行左近衛権少将判(自撰)」とある。
なお、広島大学図書館には『源氏小鏡』がもう2点所蔵されている。
源氏小鏡(国文N2793) doi:10.15027/da6498 、doi:10.15027/da6499
源氏小鏡(国文N1921) doi:10.15027/da6500
*第一系統本(古本)とは…伊井春樹による『源氏小鏡』諸本分類の一つ。この他、青表紙本によって改訂された第二系統本(改訂本)、第三系統本(増補本)、第四系統本(簡略本)、第五系統本(梗概中心本)、第六系統本(和歌中心本)がある。
【参考】
吉山裕樹・鬼塚厚子・山崎桂子・竹村信治『源氏物語木芙蓉(完)』「翻刻平安文学資料稿」第2期別巻1(1981年、広島平安文学研究会)
伊井春樹編『源氏物語注釈書・享受史事典』(2001年、東京堂出版):「源氏小鏡」