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河内家*の源光行(みなもとのみつゆき、1163~1244)・親行(ちかゆき、1190~1270か)の手になる『水原抄』から秘説を抜き出し、親行・義行(聖覚)(生没年未詳)・知行(行阿)(生没年未詳)と代々の考勘が加えられて成立した源氏物語注釈書。広本と略本が存在し、後者は耕雲(こううん、1350頃~1429年)が晩年に広本を抄出したものである。多数の有識者の言や多岐にわたる引用文献がみられ、今日では散逸した貴重な資料も多く含まれる。その特徴が顕著なのは広本であり、略本ではややそれが薄れている。しかし略本は、抄出されたことによる要点の明瞭さを備える一方で、現存広本にはみられない河内方の言辞や有識者の諸説を留めている。この点において、広本・略本の双方ともに中世源氏学を考究するうえで重要な位置を占める資料といえる。

広島大学図書館蔵本(国文2184N)写本2巻1冊。略本。奥書に「畊雲山人明魏」とあるが、これは略本系統に共通するものであり、広島大学蔵本独自のものではない。よって、書写年代・書写者ともに不明。略本の原本と目される蓬左文庫本とは、一面の行数や字配り、さらには墨朱の別まで一致しており、同本を忠実に模写した一本であると考えられる。


*河内家とは…源光行・親行の父子がともに河内守を勤めたことに由来する家名。2人は源氏物語の校注をすすめ、河内本本文を制定した。なかでも光行は平家物語の成立にも関与したとされるなど、河内学派の祖として後世に大きな影響を及ぼしている。


【参考】

新居和美・山口正代校『原中最秘抄(広島大学蔵)』「翻刻平安文学資料稿」第3期別巻6(2006年、広島平安文学研究会)

『和歌文学大辞典』(2014年、古典ライブラリー):岩坪健「光行」「親行」