Description
マルケは、マティスなどとともにフォーヴィスムの代表的画家の一人に数えられているが、本質的には色彩の強烈さよりは、微妙なニュアンスの諧調にいっそう鋭敏であった。後期になると、その色彩は更に柔らかさを増していった。マティスの親友であった関係から、フォーヴの運動に参加はしたが、グループからは距離を保っていた彼は、その気質からして、コローやクールベの伝統に連なる写実主義者であった。マルケの才能は、情景を澄明な明晰さをもって表わすことにあった。港の風景は、彼が好んで描いたテーマの一つである。本作においてマルケは、穏やかな色調を用いて、温暖で陽光あふれる南仏の入り江を描き出している。トゥーロンは、フランス南部の地中海に臨む軍港都市で、マルセイユの東方約50kmほどのところに位置し、西から東に突き出す岬によって守られた湾に面している。セザンヌが制作をしたエクス・アン・プロヴァンスにもほど近い。16世紀にアンリ4世が港と城を整備し、海軍工廠を設置してより、軍港・造船工業都市として発達し、フランス革命では王党反革命派の拠点であった。マルケは1909年頃より、ヨーロッパや地中海沿岸各地を訪れるようになるが、生まれ故郷ボルドーの記憶がそうさせたのか、彼が足を運ぶ先には、必ず水や港のモティーフがあった。本作に描かれているのも、そのような港の風景である。1938年、多忙な日々を送っていたマルケと妻のマルセルは、この夏、友人からの招待を受け、トゥーロンの港町の近郊にあるカップ・ブランを訪れている。このときマルケはほぼ同じ場所からの風景を数点描いていることから、本作もこの時に描かれた1点と思われる。地中海の暑い、霧がかった夏の日の印象が、淡い色彩と単純化された構図によって見事に捉えられている。
Data source
Tokyo Fuji Art Museum Collection Database
This database showcases some 2,000 objects from our collection of some 30,000 pieces of artworks from various periods and cultures including Japanese, Eastern and Western works, ranging from paintings...
Last updated
January 9, 2026