Description
ここには許由巣父という、中国古代の伝説上の人物が描かれている。許由は伝説の聖帝堯(ぎょう)が自分に帝位を譲ろうというのを聞いてその耳が汚れたと潁川(えいせん)で耳を洗い、巣父は、そんな汚れた川の水は飲ませられないといって牛を牽(ひ)いて帰った、といわれる高潔の士であった。この俗世に汚れない無欲のふたりは、のちの時代になっても理想の人物として、絵の題材としてもてはやされた。 しかしそれにしても、蕭白の手にかかると、ともにひどく俗っぽい人間に描かれる。破れた衣を着て、容貌(ようぼう)には野卑な笑いを浮かべる。どうみても高潔なひとのそれではない。牛といえば、巣父がいくら網を引っ張っても足を踏ん張り、自分の欲求を曲げようとはしない。ここには古典を洒落(しゃれ)のめす機知と滑稽(こっけい)、卑俗さが姿をのぞかせている。 裏面には、松の下で遊ぶ孔雀(くじゃく)が描かれており、もと兵庫県の旧家を飾っていたものであったが、昨夏当館の所蔵品となった。 (山口泰弘 中日新聞 1993年2月26日掲載)
Data source
Mie Prefectural Art Museum Collections
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Last updated
April 9, 2023