江戸の動物模様の工芸品
館長あいさつ
こんにちは。この博物館では江戸時代、大変流行った工芸品の数々。その中で、裕福な人たちが持っていた中でも干支という江戸時代の文化の一つとも言えるものに関したものを紹介しています。作品の見どころ、年代などについても説明していきます。
展示の趣旨
昨今の世の中において、伝統的な芸術品、工芸品離れは、ますます加速していっております。また、担い手の不足なども問題となってきています。そこで、皆様に伝統的な工芸品について知っていただき、江戸時代への思いを馳せて頂ければなと思い、これを主題とした博物館をつくらせていただきました。
江戸時代の世紀ごとの移り変わり
段々裕福な町人たちなどにも工芸品が広まるようになってきた時代。また、蒔絵技術などが安定してきたと言われる。
工芸品資料
- Toggle (Netsuke) in the Shape of a Mouse with Beans
線刻銘「正香」,上田令吉氏寄贈,Gift of Mr. Ueda Reikichi,東京国立博物館,Tokyo National Museum
根付
館長からの一言
高さ2.1cmほどの大きさ。材料は木でできており、漆工という方法で作られた、いわゆる漆器です。作者である正香は、幕末から明治時代に人物や獣の根付類などで活躍した奇峰堂正一の代表的な弟子の一人として知られています。細かいところまで彫られている一作です。
- Buffalo-Shaped Incense Burner
東京国立博物館,Tokyo National Museum
香炉は仏や菩薩に香を捧げる供養具で、これは高野山安養院に伝わったとされ、伝法灌頂(でんぽうかんじょう)という密教の儀式で使用されたものという。
普通、このような密教の儀式で使われる香炉は、象の形をしていることが多いが、これは牛の形となっている、珍しい作品です。素材は銅製、鋳造で作られています。彫金と呼ばれるタガネという道具で模様をつける技法も使われています。
- Toggle (Netsuke) Shaped Like a Rabbit
線刻銘「懐玉齋刻」,郷誠之助氏寄贈,Gift of Mr. Gō Seinosuke,東京国立博物館,Tokyo National Museum
1813〜1892年まで生きた、懐玉斎正次、本名安永正次という大阪の根付師の作品です。象牙を削ることによってできており、また、最初の鼠の作品のように漆工という方法によって作られている、白く美しい作品です。
- Case (Inrō) with a Dragon with a Sacred Jewel
クインシー・A.ショー氏寄贈,Gift of Mr. Quincy A. Shaw,東京国立博物館,Tokyo National Museum
金薄肉高蒔絵や朱描という、漆や金粉、朱漆などを使って奥行きや立体感を出すための高度な技法を使っています。美しい金で彩られた、三段重ねの印籠作品。
- Snake-Shaped Toggle (Netsuke)
東京国立博物館,Tokyo National Museum
根付とは、印籠など小物入れを腰から下げるときに用いる留め具です。使用者の趣味をアピールする装身具の一つでもあり、人の目をひく素材やデザインにさまざまな趣向が凝らされました。十二支の中の動物は着用者の干支を表わすためか、根付によく見られる主題です。(2025年初もうで展)
読み方はへびもくちょうねつけ。高さが2.8cmと、今まで見てきた中では比較的高い方と考えられる。これもまた、漆工という方法で作られたいわゆる漆器である。鱗など細かいところまで書かれている一品。
- Case (Inrō) with Horses
底裏金蒔銘「英」,増井光子氏寄贈,Gift of Ms. Masui Mitsuko,東京国立博物館,Tokyo National Museum
<p>増井光子(ますいみつこ)(1937~ 2010)氏は、日本の女性獣医師の先駆者。上野動物園長、よこはま動物園ズーラシア園長等を歴任した。趣味で動物を象った小物類を収集し、印籠・根付の一部は当館へ寄贈された。印籠や根付は身近な事物や干支に取材することも多く、動物を主題にしたものが多い。<br />(H-4642~4661一括解説)(20121010_h021・022新収品)</p>
金色の部分は金薄肉高蒔絵という漆や金粉を使った技法で、虹色の部分は螺鈿という技法で作られています。漆工で作られた漆器の印籠であり、鮮やかな色とつるつるの表面が特徴の作品です。底裏金蒔銘は英と書かれているが誰かは不明。
- Case (Inrō) with Three Monkeys
紐通し朱漆銘「塩見政誠」,クインシー・A.ショー氏寄贈,Gift of Mr. Quincy A. Shaw,東京国立博物館,Tokyo National Museum
<p>印籠は江戸時代に装身具として発達を遂げ、小さく制限が多い器物で意匠に工夫を凝らし、緻密な蒔絵を施すことが考え抜かれた。これは三猿の起源になった「七猿歌」という平安時代の僧侶・良源【りょうげん】が日吉大社で詠んだ歌が対応する猿とともに緻密にあらわされている。<br />るび りょうげん<br /><br />(酒井元樹木氏執筆)<br /></p>
三猿という名前から分かるように、見ざる、言わざる、聞かざるの有名な彫刻が元となっています。1646〜1719年にかけて生きた、塩見政誠という庶民からなども高い評価を受けていた蒔絵師が作りました。金薄肉高蒔絵、研出蒔絵といった漆、金粉、炭粉などを使って文様を浮き上がらせる技法を使っています。
- Case (Inrō) with a Rooster and Hen
底裏金蒔銘「桃葉(花押)」,東京国立博物館,Tokyo National Museum
<p> 印籠は薬を入れて腰に提げる小さな容器。江戸時代中頃以降は実用品というより、装身具(アクセサリー)として用いられることが多かった。印籠には動物の文様がしばしば見られ、特に鶏は蒔絵・螺鈿・七宝など各種技法を用いた例が見い出される。<br /></p>
また、新たな技法により、表面は金や銀なども使われています。飯塚 桃葉という江戸中期から後期にかけての江戸の印籠蒔絵師の手によって作られており、蒔銘は花押で書かれている。これもまた、漆工という方法で作られた漆器の一種である。
- Toggle (Netsuke) in the Shape of a Sleeping Dog
線刻銘「忠利」,東京国立博物館,Tokyo National Museum
名前の通り、眠った犬の形を掘ったもので、毛並みや骨格などが正確に彫られています。作成者は正利という名が彫られており、また、漆工という方法で作られた漆器作品の一つです。
- Boar Fur and Leather Doran-Shaped Tobacco Pouch, with Netsuke
最後は、猪の皮によってできた、タバコ入れです。江戸東京博物館にある、水谷秀次郎氏が集めた、水谷嚢物コレクションの一つになっています。さらに、根付もついており、まるで猪の牙のような形をした根付となっています。
展示を見終わった方へ
昔からある、日本の伝統工芸品を見て、工芸品、美術品などに興味を持っていただけたでしょうか。ここに展示したものは、美術品の中でもごくわずか。全ての美術品の数を数えると、万、億までにもいくかもしれません。美術品とは、決まった用途、解説だけではなく、さまざまな使用法や、さまざまな意見などが分かれる、そういう特徴を持った物です。皆様が、僕の作品を見て、興味、関心を持っていただけたら幸いです。
ご精読、ありがとうございました。










